名寄帳と固定資産評価証明書は何が違う?相続手続きでの使い分け
「父が亡くなったけれど、どの不動産を所有していたのか分からない」
「相続登記には固定資産評価証明書が必要と言われた」
「名寄帳と評価証明書は同じものではないの?」
不動産の相続手続きを進めると、「名寄帳」と「固定資産評価証明書」という書類を目にすることがあります。
どちらも市区町村で取得する固定資産税に関係する資料ですが、役割は異なります。
簡単にいうと、名寄帳は所有不動産を調べるための資料、固定資産評価証明書は不動産の評価額を証明するための書類です。
ただし、自治体によって名称や記載内容、取扱いが異なる場合もあります。
今回は、名寄帳と固定資産評価証明書の違いと、相続手続きでの使い分けについて説明します。
① 名寄帳とは?
名寄帳(なよせちょう)とは、固定資産課税台帳に登録されている土地や家屋について、所有者や納税義務者ごとに整理した資料です。
例えば、亡くなった父が芦屋市に自宅を所有していたとします。
相続人は自宅の土地と建物があることを知っていますが、それ以外の不動産については分かりません。
このような場合に、芦屋市の名寄帳を取得して確認する方法があります。
名寄帳には、一般的に次のような情報が記載されています。
土地の所在・地番
土地の地目・地積
建物の所在・家屋番号
建物の種類・床面積
固定資産税評価額
課税標準額など
記載される項目は自治体によって異なります。
名寄帳を確認することで、相続人が知らなかった土地や建物が見つかることもあります。
② 名寄帳を取得すると何が分かる?
例えば、相続人が父の自宅について調べていたところ、名寄帳に次のような不動産が記載されていたとします。
自宅の土地:〇〇町1番2
自宅の土地:〇〇町1番3
自宅の建物:家屋番号1番2
私道部分の土地:〇〇町2番5(共有持分)
相続人は、自宅の土地が1筆だけだと思っていたかもしれません。
しかし、実際には2筆に分かれており、さらに私道の共有持分も存在していたというケースです。
このように、名寄帳は相続登記の対象となる不動産の記載漏れを防ぐための手掛かりになります。
ただし、名寄帳は登記事項証明書とは異なります。
名寄帳に不動産が記載されていても、登記上の所有者や共有持分、抵当権などの権利関係については、別途登記事項証明書を確認する必要があります。
③ 固定資産評価証明書とは?
固定資産評価証明書とは、土地や建物の固定資産税評価額などを証明する書類です。
一般的には、次のような事項が記載されます。
所有者の住所・氏名
土地や建物の所在
地番・家屋番号
地目・地積
建物の種類・床面積
固定資産税評価額
例えば、父が所有していた土地について、評価額が1,500万円と記載されていたとします。
この1,500万円は、市区町村が固定資産税の課税のために評価した金額です。
実際にその土地を売却できる金額を示しているわけではありません。
また、相続税の計算で使用する財産評価額とも、必ずしも一致しません。
固定資産評価証明書は、対象となる土地や建物の公的な評価額を確認・証明するための書類です。
④ 名寄帳と評価証明書は何が違う?
両者の違いを、具体的な場面で考えてみましょう。
父がどの不動産を持っていたのか調べたい場合
この場合は、名寄帳を利用することが考えられます。
名寄帳は、一定の範囲内で、所有者や納税義務者ごとに土地・家屋を一覧できるためです。
父名義の土地の固定資産評価額を証明したい場合
この場合は、固定資産評価証明書を取得する方法があります。
評価証明書は、対象となる不動産の評価額を証明するための書類だからです。
つまり、
名寄帳:どのような不動産があるかを確認する
固定資産評価証明書:不動産の評価額を証明する
という違いがあります。
ただし、名寄帳にも評価額が記載されることがあり、相続登記に必要な評価額の確認には、自治体の名寄帳や固定資産税の課税明細書などを利用できる場合もあります。
必ず両方を取得しなければならないわけではありません。
⑤ 相続登記で評価額が必要になる理由
不動産の相続登記を申請する際には、原則として登録免許税という税金がかかります。
相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として不動産の価額に対して0.4%です。
例えば、相続登記をする土地と建物の固定資産評価額が、合計2,000万円だったとします。
計算は次のようになります。
2,000万円 × 0.4% = 8万円
この場合、登録免許税は8万円となります。
ただし、実際には課税価格の端数処理や最低税額などの取扱いがあり、土地によっては免税措置が適用される場合もあります。
登録免許税の計算で使用するのは、原則として固定資産税の「評価額」です。
固定資産税の「課税標準額」とは異なるため、数字を取り違えないようにする必要があります。
なお、固定資産税評価額が記載された課税明細書などを利用できる場合には、必ずしも評価証明書を取得する必要があるとは限りません。
⑥ 名寄帳だけですべての不動産が分かる?
ここは、特に注意したいところです。
名寄帳を取得したからといって、亡くなった方の所有不動産が全国すべて分かるわけではありません。
例えば、亡くなった父が次の不動産を所有していた場合です。
芦屋市の自宅
西宮市の駐車場
岡山県の山林
芦屋市の名寄帳を取得しても、西宮市や岡山県の不動産まで一覧に記載されるわけではありません。
名寄帳は、それぞれの自治体が管理する固定資産に関する資料だからです。
したがって、ほかの市区町村にも不動産を所有していた可能性がある場合には、その自治体についても確認する必要があります。
また、名寄帳の作成単位が自治体によって異なる場合があることにも注意が必要です。
⑦ 固定資産税がかかっていない土地も記載される?
ここも重要です。
固定資産税がかかっていない土地でも、相続の対象になることがあります。
例えば、次のような土地です。
公衆用道路として非課税となっている土地
固定資産税の免税点未満の土地
共有名義になっている私道部分
このような不動産は、納税通知書の課税明細書に記載されていない場合があります。
また、非課税不動産が名寄帳に記載されるかどうかについても、自治体によって取扱いが異なります。
例えば、名寄帳に非課税の土地・家屋を記載しない自治体があります。
一方、神戸市では、固定資産税が非課税となっている公衆用道路などについても、所定の固定資産課税明細書(名寄せ帳)を申請するよう案内しています。
そのため、名寄帳に記載されていないからといって、不動産が存在しないと断定することはできません。
特に、自宅の前面道路や共有私道などについては、登記事項証明書や公図なども確認しておきたいところです。
⑧ 共有名義の土地も確認しておきたい
例えば、父が兄弟と共同で土地を所有していた場合です。
土地の登記名義が、
父:持分2分の1
父の兄:持分2分の1
となっていたとします。
この場合、父が亡くなったときに相続の対象となるのは、原則として父の持分2分の1です。
しかし、名寄帳では、共有名義の不動産が単独所有の不動産とは別の区分で管理されている場合があります。
また、共有者の代表者に納税通知書が送付されている場合には、亡くなった方の手元に固定資産税の通知書が残っていないこともあります。
そのため、名寄帳を請求するときには、共有名義の不動産も確認できるかを尋ねておくとよいでしょう。
そして、共有持分については、登記事項証明書で正確に確認する必要があります。
⑨ 未登記の建物が見つかることもある?
不動産の相続調査では、登記されていない建物が見つかることもあります。
例えば、父が自宅の敷地内に物置や離れを建てていた場合です。
建物として固定資産税の課税対象になっていれば、未登記であっても固定資産課税台帳や名寄帳に記載されていることがあります。
一方、法務局の登記記録には、その建物の登記が存在しない場合があります。
このようなケースでは、通常の相続による所有権移転登記とは別に、建物の表題登記などを検討する必要が生じることがあります。
ただし、すべての物置や簡易な工作物が、不動産登記の対象となる建物に当たるわけではありません。
構造や土地への定着性、用途などによって判断する必要があります。
名寄帳に記載がある建物と、登記記録に存在する建物が一致しているかという点も、確認しておきたいところです。
⑩ 名寄帳や評価証明書は誰が取得できる?
名寄帳や固定資産評価証明書は、登記事項証明書のように、原則として誰でも取得できるというものではありません。
個人の固定資産に関する情報が記載されているためです。
一般的には、次のような方が請求できる場合があります。
不動産の所有者本人
所有者が亡くなっている場合の相続人
正当な権限を持つ代理人
相続人が請求する場合には、通常、亡くなった方との相続関係を確認できる戸籍などが必要になります。
また、本人確認書類や委任状などを求められる場合もあります。
ただし、必要書類や請求できる人の範囲、手数料などは自治体によって異なります。
例えば、芦屋市や西宮市でも固定資産関係の証明書などを取得できますが、発行窓口や手数料、必要書類はそれぞれの案内を確認する必要があります。
⑪ 何年度の評価証明書を取得すればいい?
固定資産税評価額は、年度によって変わることがあります。
そのため、評価証明書を取得する際には、何年度のものが必要なのかを確認しておきたいところです。
固定資産税は、原則として毎年1月1日を賦課期日として課税されます。
また、相続登記の登録免許税を計算するときには、原則として登記申請時の年度に対応する固定資産評価額を使用します。
例えば、2026年10月に相続登記を申請する場合には、通常、2026年度の評価額を確認します。
亡くなった日が2024年であっても、2024年度の評価額をそのまま使用するとは限りません。
つまり、亡くなった年度と、相続登記を申請する年度は区別する必要があります。
また、相続税の申告で不動産を評価する場合には、相続登記の登録免許税とは異なる評価方法が用いられることがあります。
⑫ 所有不動産記録証明制度との違いは?
2026年2月2日から、法務局で「所有不動産記録証明制度」が始まりました。
これは、不動産の所有者やその相続人などが請求することにより、登記記録上、特定の人が所有者として記録されている不動産を一覧的に確認できる制度です。
名寄帳との主な違いは、調査対象となる範囲です。
名寄帳は基本的に自治体ごとに管理されている固定資産の資料ですが、所有不動産記録証明制度では、一定の検索条件に基づいて全国の登記記録から不動産を調べることができます。
例えば、父が芦屋市だけでなく、ほかの都道府県にも土地を持っていた可能性がある場合には、利用を検討できます。
ただし、この制度にも注意点があります。
登記記録上の所有者の氏名や住所などが、請求時に指定した検索条件と一致しない場合には、対象となる不動産が抽出されないことがあります。
また、所有権の登記がされていない建物などは、検索結果に含まれない場合があります。
そのため、所有不動産記録証明書だけですべての財産調査が完了するわけではありません。
名寄帳や登記事項証明書、固定資産税の課税明細書などを組み合わせて確認することが大切です。
⑬ 相続登記では、どの順番で確認するとよい?
亡くなった方の不動産を調べる場合には、次のような流れが考えられます。
1.固定資産税の納税通知書を確認する
まず、自宅などに残されている納税通知書や課税明細書を確認します。
2.名寄帳を取得する
不動産が所在する市区町村で、名寄帳などを確認します。
必要に応じて、非課税不動産や共有名義の不動産についても調べます。
3.登記事項証明書を取得する
判明した不動産について、登記上の所有者や共有持分、抵当権などを確認します。
4.固定資産評価額を確認する
相続登記の登録免許税を計算するため、必要な年度の固定資産評価額を確認します。
5.ほかの地域の不動産も調べる
ほかの市区町村にも不動産がある可能性がある場合には、所有不動産記録証明制度などの利用も検討します。
このように、不動産の調査と、相続登記のための評価額の確認を分けて考えると、必要な資料を整理しやすくなります。
まとめ
名寄帳と固定資産評価証明書は、どちらも固定資産税に関係する資料ですが、使用する目的が異なります。
今回のポイントを整理すると、
名寄帳は、所有不動産を一覧的に確認するための資料
固定資産評価証明書は、不動産の評価額を証明する書類
相続登記では、登録免許税の計算に固定資産評価額を使用する
課税明細書や名寄帳などで評価額を確認できる場合もある
名寄帳だけでは、全国の不動産をすべて確認できるわけではない
非課税不動産の記載については、自治体によって取扱いが異なる
共有名義の土地や未登記建物にも注意する
相続人が請求する場合には、戸籍などの相続関係を証明する書類が必要になることがある
2026年2月から所有不動産記録証明制度が始まっている
ということになります。
不動産の相続手続きでは、まず亡くなった方がどの不動産を所有していたのかを把握する必要があります。
その際には名寄帳などを利用し、判明した不動産について登記事項証明書を取得して権利関係を確認します。
そして、相続登記のために必要な固定資産評価額を確認します。
名寄帳は不動産を探すための資料、評価証明書は評価額を証明するための書類。
この違いを理解しておくと、不動産の相続調査や相続登記を進めやすくなります。
