2026年10月30日金曜日

相続のこんなときどうする?~ケース別・相続手続きの進め方~第一弾⑪  母の再婚相手が亡くなった。連れ子も相続人になる?

 


母の再婚相手が亡くなった。連れ子も相続人になる?

「母が再婚した相手が亡くなった。母の子どもである自分にも相続権はあるの?」

「子どもの頃から一緒に暮らしていたのに、法律上は親子ではないの?」

「再婚した父には前の結婚で生まれた子どもがいる。その人たちだけが相続人になるの?」

親が再婚している場合、相続関係が複雑になることがあります。

例えば、母が離婚した後、別の男性と再婚した場合です。

母には前の結婚で生まれた子どもがおり、再婚相手にも前の結婚で生まれた子どもがいるという家庭もあります。

長年一緒に暮らしていた場合には、血のつながりがなくても、実際には親子と変わらない生活を送っていることもあるでしょう。

しかし、相続においては、家族として生活していたことと、法律上の親子関係があることは区別して考える必要があります。

特に重要になるのが「養子縁組」の有無です。

母の再婚相手と子どもの間に養子縁組が成立しているかどうかによって、相続人になるかどうかが変わることがあります。

また、母と再婚相手のどちらが先に亡くなったかによっても、相続関係が異なります。

今回は、母の再婚相手が亡くなった場合の連れ子の相続権、養子縁組の有無、前婚の子との相続関係、母が先に亡くなった場合と後から亡くなった場合の違いなどについて、具体的な事例をもとに説明します。


① 母の再婚相手が亡くなった

例えば、次のような家庭を考えてみましょう。

  • 母:75歳。芦屋市在住

  • 再婚相手の夫:81歳。今回亡くなった方

  • 母の長男:52歳。西宮市在住

  • 母の長女:48歳。神戸市在住

  • 再婚相手の長女:55歳。前の結婚で生まれた子

母は、約30年前に前の夫と離婚しました。

その後、現在の夫と再婚し、芦屋市内で暮らしていました。

母の長男と長女は、再婚当時すでに子どもでしたが、しばらくは母と再婚相手の夫と一緒に生活していました。

再婚相手の夫も、二人を自分の子どものように接してきました。

長男と長女は成人後、それぞれ独立しましたが、その後も再婚相手の夫と家族としての付き合いを続けていました。

一方、再婚相手の夫には、前の結婚で生まれた長女がいました。

その長女は、父親の再婚後も別の地域で暮らしていました。

ある日、再婚相手の夫が亡くなりました。

夫の名義では、芦屋市内の自宅不動産や預貯金が残されていました。

母の長男は、相続について次のように考えました。

「30年近く家族として付き合ってきたのだから、自分たちにも相続権があるんじゃないかな?」

しかし、母から意外なことを聞きました。

「そういえば、あなたたちは夫と養子縁組をしていなかったと思う」

長男は驚きました。

「養子縁組をしていないと、相続できないの?」

このような場合、誰が相続人になるのでしょうか。

② 母の再婚相手と、連れ子は法律上の親子になる?

まず、基本的なところから確認しましょう。

母が再婚した場合、その再婚相手と母の子どもとの間に、当然に法律上の親子関係が成立するわけではありません。

例えば、母が前の結婚で長男と長女をもうけ、その後、別の男性と再婚した場合です。

このとき、母と再婚相手の間には婚姻関係が成立します。

しかし、母の長男と長女が、当然に再婚相手の法律上の子どもになるわけではありません。

再婚相手の夫は、日常生活では長男と長女の父親のような存在であっても、法律上の親子関係とは別に考える必要があります。

民法第887条では、亡くなった方の子は相続人になると定められています。

ここでいう子には、実子だけでなく、法律上の養子も含まれます。

一方、単に配偶者の連れ子であるというだけでは、原則として相続人にはなりません。

母が再婚したという事実だけでは、母の子どもと再婚相手との間に、相続権のある親子関係が成立するわけではありません。

③ 長年一緒に暮らしていても、相続人になれない?

今回の長男と長女は、子どもの頃から母の再婚相手と一緒に暮らしていました。

再婚相手の夫は、二人の学費や生活費などを負担してきたこともありました。

そのため、長男と長女は、再婚相手を実の父親と同じように感じていました。

しかし、相続人になるかどうかは、家族として過ごした年数だけで決まるわけではありません。

例えば、30年間同居していた場合であっても、養子縁組が成立していなければ、原則として法律上の子としての相続権はありません。

反対に、成人してから養子縁組を行い、その後は別々に暮らしていた場合でも、有効な養子縁組が成立していれば、原則として養親の相続人になります。

つまり、実際の生活関係と法律上の親子関係は、必ずしも一致しません。

もちろん、長年育ててもらったことや、家族としての関係が無意味になるわけではありません。

しかし、相続財産を取得できるかどうかは、法律上の権利関係によって判断する必要があります。

長年一緒に生活していたという事情だけで、連れ子に法定相続権が発生するわけではありません。

④ 同じ名字になっていれば、養子縁組したことになる?

ここも誤解されやすいところです。

例えば、母が再婚した際に、長男と長女も再婚相手の名字に変更していた場合です。

このような場合、家族全員が同じ名字になっていることから、当然に養子縁組が成立していると思われることがあります。

しかし、名字が同じであることと、養子縁組が成立していることは別の問題です。

子どもの名字を変更する方法と、再婚相手との間で養子縁組をする方法は、法律上異なります。

例えば、母の再婚後、子どもが母と同じ名字を使用するために、家庭裁判所の許可を得て子の氏の変更を行い、入籍届を提出する場合があります。

このような手続きを行っても、それだけで母の再婚相手との間に養親子関係が成立するわけではありません。

一方、養子縁組届を提出し、有効な養子縁組が成立していれば、法律上の親子関係が成立します。

そのため、同じ名字を使っていたから養子であると判断することはできません。

名字や戸籍が同じであるというだけでなく、実際に養子縁組が成立していたかを確認する必要があります。

⑤ 養子縁組をしていたかどうかは、どうやって確認する?

今回の長男と長女は、母の再婚相手と養子縁組をしていたかどうか、はっきり覚えていません。

特に、幼い頃に母が再婚していた場合には、養子縁組について本人が知らないこともあります。

このような場合には、戸籍を確認します。

養子縁組は、原則として市区町村役場への養子縁組届によって成立します。

そのため、戸籍には養子縁組に関する事項が記録されます。

ただし、現在の戸籍謄本だけでは、過去の身分関係をすべて確認できない場合があります。

例えば、婚姻や転籍、戸籍の改製などによって、現在の戸籍には過去の記載が引き継がれていない場合です。

そのため、必要に応じて、除籍謄本や改製原戸籍などを確認することになります。

確認したいのは、主に次のような事項です。

  • 再婚相手の夫が養親になっているか

  • 長男や長女が養子になっているか

  • 養子縁組をした日

  • その後に離縁していないか

  • 養子縁組に無効などの問題がないか

例えば、長男の戸籍に、母の再婚相手との養子縁組が記載されていれば、法律上の親子関係が成立していたことを確認できます。

連れ子の相続権を確認するうえでは、養子縁組の有無を戸籍で調べることが重要です。

⑥ 養子縁組をしていた場合、実子と同じように相続できる?

例えば、今回の長男と長女が、母の再婚相手と養子縁組をしていた場合です。

この場合、二人は法律上、再婚相手の夫の子になります。

そのため、再婚相手が亡くなれば、原則として相続人になります。

普通養子縁組によって養子になった子は、相続において、原則として実子と同じ立場になります。

例えば、再婚相手の夫に次の家族がいる場合です。

  • 妻である母

  • 前の結婚で生まれた長女

  • 養子になった母の長男

  • 養子になった母の長女

この場合、相続人は4人になります。

法定相続分は、原則として次のようになります。

  • 妻:2分の1

  • 前婚の長女:6分の1

  • 養子の長男:6分の1

  • 養子の長女:6分の1

つまり、前婚の実子だから相続分が多く、養子だから相続分が少なくなるというわけではありません。

有効な普通養子縁組が成立している場合、養子は原則として実子と同じ相続権を持ちます。

⑦ 養子縁組をすると、実の父親の相続権はなくなる?

例えば、母の長男と長女が、母の再婚相手と養子縁組していた場合です。

二人には、母の前の結婚相手である実父もいます。

この場合、再婚相手と養子縁組をしたことによって、実父との法律上の親子関係はなくなるのでしょうか。

一般的な普通養子縁組では、実親との法律上の親子関係は原則として継続します。

そのため、母の再婚相手と普通養子縁組をした場合でも、実父との親子関係が当然になくなるわけではありません。

例えば、長男が母の再婚相手と普通養子縁組をした場合です。

この場合、長男は原則として、

  • 実父

  • 実母

  • 養父である母の再婚相手

との法律上の親子関係を持つことになります。

そのため、それぞれの相続について、相続人になる可能性があります。

ただし、養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があり、特別養子縁組では実親との法律上の親子関係について異なる取扱いがあります。

今回のような再婚家庭では、一般的には普通養子縁組が問題になることが多いでしょう。

普通養子縁組をしたからといって、実の親から相続できなくなるわけではありません。

⑧ 養子縁組をしていなければ、誰が相続人になる?

それでは、今回の事例で、母の長男と長女が再婚相手と養子縁組していなかった場合を考えます。

家族関係は次のとおりです。

  • 妻である母

  • 母の長男

  • 母の長女

  • 再婚相手の前婚の長女

この場合、亡くなった再婚相手の相続人は、原則として妻である母と、前婚の長女になります。

母の長男と長女には、養子縁組が成立していないため、再婚相手の子としての法定相続権はありません。

したがって、法定相続分は原則として次のようになります。

  • 妻である母:2分の1

  • 前婚の長女:2分の1

母の長男と長女の法定相続分はありません。

例えば、再婚相手の遺産が預貯金2,000万円だけだった場合です。

法定相続分に従って分けるとすれば、母が1,000万円、前婚の長女が1,000万円を取得する計算になります。

ただし、実際の遺産分割では、相続人間の合意などにより、法定相続分とは異なる分け方をすることもできます。

母の子どもであっても、再婚相手との間に養子縁組がなければ、原則として再婚相手の相続人にはなりません。

⑨ 前の結婚で生まれた子どもにも相続権がある?

今回の再婚相手には、前の結婚で生まれた長女がいます。

この長女は、父親の再婚後も別の地域で暮らしていました。

父親と何十年も会っていなかった場合には、相続権がなくなるのでしょうか。

結論として、親が離婚や再婚をしたとしても、前の結婚で生まれた子どもとの法律上の親子関係が当然になくなるわけではありません。

そのため、前婚の子どもも、原則として相続人になります。

例えば、再婚相手の夫が前妻と離婚し、その後、母と再婚していた場合です。

前妻自身は、離婚によって夫の配偶者ではなくなっています。

そのため、前妻には元夫の相続権はありません。

一方、前妻との間に生まれた子どもは、父親との親子関係が続いています。

したがって、父親が亡くなれば、原則として相続人になります。

また、前婚の子どもと長年連絡を取っていなかった場合でも、それだけで相続権がなくなるわけではありません。

前妻には元夫の相続権はありませんが、前妻との間に生まれた子どもには、原則として相続権があります。

⑩ 再婚相手に実子や養子がいない場合は?

今回の事例を少し変えてみましょう。

母の再婚相手には、前婚の子どもも含め、実子がいませんでした。

また、母の長男と長女とも養子縁組をしていません。

この場合、再婚相手が亡くなると、誰が相続人になるのでしょうか。

子どもがいない場合には、次の順位の相続人を確認します。

まず、亡くなった方の父母などの直系尊属が相続人になる可能性があります。

例えば、再婚相手の母親がまだ存命だった場合です。

その場合、相続人は原則として、妻と再婚相手の母親になります。

法定相続分は、次のようになります。

  • 妻:3分の2

  • 再婚相手の母親:3分の1

一方、再婚相手の父母や祖父母などの直系尊属がすでに亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。

例えば、再婚相手に弟が一人いる場合です。

この場合の法定相続分は、原則として次のようになります。

  • 妻:4分の3

  • 再婚相手の弟:4分の1

なお、母の長男と長女は、養子縁組をしていなければ、この場合にも相続人になりません。

つまり、再婚相手に実子がいないからといって、配偶者の連れ子が代わりに相続人になるわけではありません。

再婚相手に子どもがいない場合には、直系尊属や兄弟姉妹の有無を確認する必要があります。

⑪ 母が再婚相手より先に亡くなっていた場合は?

例えば、母が5年前に亡くなり、その後、再婚相手の夫が亡くなった場合です。

このとき、母の長男と長女は、亡くなった母に代わって再婚相手の財産を相続できるのでしょうか。

結論として、養子縁組が成立していなければ、原則として相続できません。

なぜなら、母は再婚相手より先に亡くなっているため、再婚相手の相続が開始した時点では、その配偶者として相続人になることができないからです。

また、母の長男と長女は、母の相続人ではありますが、当然に再婚相手の相続人になるわけではありません。

ここで「代襲相続」という制度が思い浮かぶかもしれません。

代襲相続とは、例えば、亡くなった方の子どもが先に死亡していた場合に、その子どもの子である孫が代わりに相続する制度です。

しかし、配偶者については、このような代襲相続はありません。

そのため、母が再婚相手より先に亡くなっていた場合、母の長男と長女が、母に代わって再婚相手を相続することはできません。

ただし、長男や長女が再婚相手と養子縁組をしていた場合には、養子としての相続権があるため、結論が異なります。

母が再婚相手より先に亡くなっていた場合、連れ子は母に代わって再婚相手を相続することはできません。

⑫ 母が再婚相手より後に亡くなった場合は?

一方で、母が再婚相手より後に亡くなった場合には、相続関係が異なります。

例えば、再婚相手の夫が2024年に亡くなり、母が2026年に亡くなった場合です。

夫が亡くなった時点で、母は存命でした。

そのため、母は夫の相続人になります。

例えば、夫の相続人が妻である母と、前婚の長女の二人だった場合です。

母は、原則として夫の遺産について2分の1の相続分を持ちます。

その後、母が亡くなれば、母が取得した財産は、原則として母自身の相続財産になります。

そのため、母の長男と長女は、母からその財産を相続する可能性があります。

例えば、再婚相手の遺産について遺産分割が成立し、母が預貯金1,000万円を取得した場合です。

その後、母が亡くなったとき、その預貯金が残っていれば、母の長男と長女が相続することになります。

つまり、母の長男と長女は、再婚相手から直接相続するわけではありません。

いったん母が相続した財産を、その後、母から相続することになるのです。

母が再婚相手より後に亡くなった場合には、母を通じて再婚相手の財産を取得することがあります。

⑬ 母が遺産分割をする前に亡くなった場合は?

ここで、もう少し複雑な場合を考えてみましょう。

再婚相手の夫が2024年に亡くなりました。

相続人は、妻である母と、夫の前婚の長女です。

しかし、遺産分割協議が終わらないまま、母が2026年に亡くなりました。

このような場合には、どうなるのでしょうか。

まず、夫が亡くなった時点で、母には夫の相続についての権利が発生しています。

その後、母が亡くなった場合には、その権利が母の相続人へ承継されることになります。

今回、母の相続人が長男と長女の二人であれば、二人が母の立場を承継して、夫の遺産分割に関係することがあります。

例えば、夫の相続人が、

  • 妻である母

  • 夫の前婚の長女

だった場合です。

そして、母が亡くなった後は、母の相続人である長男と長女が、母の有していた相続上の権利を承継することになります。

そのため、夫の遺産分割協議について、

  • 夫の前婚の長女

  • 母の長男

  • 母の長女

が関係することがあります。

このように、最初の相続の遺産分割が終わらないうちに、相続人の一人が亡くなり、さらに相続が開始することを「数次相続」といいます。

ただし、この場合も母の長男と長女は、再婚相手の直接の相続人になるわけではありません。

あくまで、母が取得していた権利を、母の相続によって承継するという関係です。

母が再婚相手の遺産分割を終える前に亡くなった場合には、数次相続として相続関係を整理する必要があります。

⑭ 母が住んでいた家は、誰のものになる?

今回の再婚相手の夫は、芦屋市内に自宅を所有していました。

その自宅には、妻である母が現在も住んでいます。

一方、相続人には夫の前婚の長女がいます。

母の長男と長女は、母が今後も自宅に住み続けられるのか心配になりました。

ここで重要なのは、自宅の名義です。

例えば、自宅が再婚相手の夫の単独名義だった場合です。

この場合、自宅は原則として夫の相続財産になります。

そして、夫の相続人が妻である母と前婚の長女であれば、二人の間で自宅を誰が取得するのかなどについて検討する必要があります。

母が長年住んでいたからといって、当然に自宅の所有権をすべて取得できるわけではありません。

一方で、夫の前婚の長女が相続人だからといって、母が直ちに自宅から退去しなければならないわけでもありません。

民法には、一定の条件を満たす場合に、亡くなった方の配偶者が自宅に住み続けることができる「配偶者居住権」や「配偶者短期居住権」という制度があります。

ただし、これらの権利が認められるかどうかは、相続開始時の居住状況や建物の権利関係などによって異なります。

また、配偶者居住権と配偶者短期居住権は、成立要件や存続期間などが異なります。

そのため、母が今後も自宅に住み続けたい場合には、遺産分割の内容や配偶者居住権などについて確認する必要があります。

再婚相手名義の自宅に妻が住んでいる場合には、相続分だけでなく、配偶者が住み続けられる権利についても検討することが大切です。

⑮ 遺言書があれば、養子縁組していない連れ子も財産を受け取れる?

例えば、再婚相手の夫が生前に、次のような遺言書を残していた場合です。

「私の預貯金のうち500万円を、妻の長男に遺贈する」

この場合、妻の長男は再婚相手と養子縁組をしていなくても、財産を受け取ることができるのでしょうか。

結論として、有効な遺言によって遺贈を受けることは可能です。

遺贈とは、遺言によって財産を取得させることをいいます。

遺贈を受ける方を「受遺者」といいます。

受遺者は、必ずしも法定相続人である必要はありません。

そのため、養子縁組をしていない連れ子であっても、遺言によって財産を取得することができます。

ただし、遺贈によって財産を取得することと、法律上の相続人になることは別の問題です。

また、遺言の内容によっては、配偶者や実子などの遺留分が問題になる場合があります。

例えば、再婚相手がすべての財産を連れ子に遺贈するという遺言を残していた場合です。

このような場合、妻や実子などの遺留分を侵害していれば、遺留分侵害額請求が問題になる可能性があります。

そのため、連れ子へ財産を残す遺言を作成する場合には、ほかの相続人との関係にも配慮する必要があります。

養子縁組をしていない連れ子でも、遺言によって財産を取得できる場合があります。

⑯ 相続人ではない連れ子にも、遺留分はある?

例えば、母の再婚相手が亡くなり、遺言書によって財産の大部分を前婚の長女へ相続させることになっていた場合です。

母の長男は、再婚相手と30年以上家族として付き合ってきました。

長男は「自分にも少しは財産を受け取る権利があるのではないか」と考えました。

しかし、養子縁組をしていない場合には、原則として法定相続人ではありません。

そのため、通常、遺留分もありません。

遺留分とは、一定の相続人に保障される、最低限の相続財産に関する権利です。

民法では、遺留分を有する者の範囲が定められています。

例えば、配偶者や子どもなどには、原則として遺留分が認められます。

一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。

そして、養子縁組をしていない連れ子は、通常、そもそも法定相続人ではないため、遺留分を請求することもできません。

ただし、母自身は配偶者として相続人であり、遺留分を持つ場合があります。

そのため、母の権利と、母の長男や長女の権利を混同しないようにする必要があります。

養子縁組をしていない連れ子は、長年家族として生活していても、原則として遺留分を持ちません。

⑰ 相続税にも違いがある?

相続税についても、養子縁組の有無によって取扱いが異なる場合があります。

例えば、再婚相手が遺言によって、養子縁組していない連れ子へ財産を遺贈した場合です。

この場合、連れ子は財産を取得することができますが、相続税の計算では注意が必要です。

相続税には、一定の人が財産を取得した場合に、相続税額を2割加算する制度があります。

原則として、亡くなった方の配偶者や一親等の血族などに該当しない方が財産を取得した場合には、相続税額の2割加算が問題になります。

そのため、養子縁組していない連れ子が遺贈によって財産を取得した場合には、相続税額の2割加算の対象になることがあります。

一方、普通養子縁組によって養子になっている方は、原則として一親等の法定血族に該当します。

そのため、一般的には相続税額の2割加算の対象にはなりません。

ただし、養子の立場や親族関係によっては例外があります。

また、相続税の基礎控除額の計算などについても、養子の人数に関する税法上の取扱いがあります。

そのため、養子縁組や遺贈によって財産を取得する場合には、民法上の相続関係だけでなく、相続税の問題についても確認する必要があります。

養子として相続する場合と、養子縁組していない連れ子が遺贈を受ける場合とでは、相続税の取扱いが異なることがあります。

⑱ 今回のケースでは、どのように進めればよい?

それでは、最初の事例に戻ってみましょう。

母は75歳で、再婚相手の夫と芦屋市内で暮らしていました。

夫が81歳で亡くなりました。

母には前の結婚で生まれた長男と長女がいます。

一方、亡くなった夫には、前婚の長女がいます。

長男と長女は、母の再婚相手と養子縁組をしていたかどうか分かりません。

このような場合には、次のような順番で進めることが考えられます。

1.亡くなった再婚相手の戸籍を確認する

まず、亡くなった夫の戸籍を確認します。

通常、相続人を確定するためには、出生から死亡までの戸籍関係を調べる必要があります。

前婚の子どもや養子などがいないかを確認します。

2.母の長男と長女が養子になっていたか確認する

母の長男と長女について、養子縁組が成立していたかを確認します。

必要に応じて、現在の戸籍だけでなく、過去の戸籍も確認します。

3.法律上の相続人を確定する

養子縁組がなければ、今回の事例では原則として妻である母と、夫の前婚の長女が相続人になります。

一方、長男と長女が養子になっていれば、その二人も相続人になります。

4.遺言書の有無を確認する

再婚相手が遺言書を残していないか確認します。

養子縁組していない連れ子であっても、遺言によって財産を取得できる場合があります。

5.相続財産を調査する

自宅不動産、預貯金、その他の財産を確認します。

また、借金などの債務が残っていないかも確認する必要があります。

6.母が今後も自宅に住み続けられるか確認する

自宅が再婚相手名義だった場合には、相続人間で所有権の取得者などを検討します。

必要に応じて、配偶者居住権などについても確認します。

7.相続人間で遺産分割を検討する

相続人が母と前婚の長女であれば、原則としてその二人が遺産分割協議の当事者になります。

母の長男と長女は、養子縁組していなければ、当然に遺産分割協議の当事者になるわけではありません。

ただし、母から適切な委任を受けて、連絡や書類の整理などを手伝うことは考えられます。

8.不動産の相続登記を行う

自宅不動産を相続人が取得する場合には、必要な相続登記を行います。

相続登記は、2024年4月1日から義務化されています。

原則として、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。

9.母が亡くなった場合の相続も考える

母が今後亡くなった場合には、母が取得した財産が、母自身の相続財産になります。

そのため、母の長男と長女は、母から財産を相続する可能性があります。

また、夫の遺産分割が終わらないうちに母が亡くなった場合には、数次相続の問題が生じることがあります。

今回のケースでは、まず母の長男と長女が再婚相手と養子縁組していたかどうかが最も重要です。

養子縁組がなければ、母の長男と長女は原則として再婚相手の法定相続人にはなりません。

その場合、相続人は妻である母と、前婚の長女になります。

一方、養子縁組が成立していれば、母の長男と長女も再婚相手の子として相続人になります。

このように、再婚家庭の相続では、単に家族構成を確認するだけでなく、法律上の親子関係を戸籍で確認することが重要です。

まとめ

母が再婚していた場合、その再婚相手が亡くなったときに、母の子どもも相続人になるのかは、養子縁組の有無などによって異なります。

長年一緒に暮らしていたからといって、当然に再婚相手の相続人になるわけではありません。

今回のポイントを整理すると、

  • 母が再婚しただけでは、連れ子と再婚相手との間に法律上の親子関係は成立しない

  • 連れ子が再婚相手の相続人になるには、原則として養子縁組が必要になる

  • 長年一緒に暮らしていても、養子縁組がなければ原則として相続人にならない

  • 同じ名字になっていても、養子縁組が成立しているとは限らない

  • 養子縁組の有無は、戸籍で確認する必要がある

  • 普通養子縁組が成立していれば、養子は原則として実子と同じ相続権を持つ

  • 普通養子縁組をしても、実親との法律上の親子関係は原則として続く

  • 再婚相手の前婚の子どもも、原則として相続人になる

  • 前妻自身は、離婚した元夫の相続人にはならない

  • 再婚相手に子どもがいない場合には、直系尊属や兄弟姉妹が相続人になる可能性がある

  • 母が再婚相手より先に亡くなっていた場合、連れ子は母に代わって相続することはできない

  • 母が再婚相手より後に亡くなった場合には、母を通じて財産を取得することがある

  • 母が遺産分割前に亡くなった場合には、数次相続の問題が生じることがある

  • 再婚相手名義の自宅に母が住んでいる場合には、配偶者居住権などが問題になることがある

  • 養子縁組していない連れ子でも、遺言によって財産を取得できる場合がある

  • 養子縁組していない連れ子には、原則として遺留分がない

  • 養子として相続する場合と遺贈を受ける場合では、相続税の取扱いが異なることがある

  • 不動産を相続した場合には、相続登記の義務にも注意する

ということになります。

再婚家庭では、血のつながりがなくても、長年親子として生活していることがあります。

そのため、家族の誰かが亡くなったとき、「当然、自分も相続人になる」と考えることもあるかもしれません。

しかし、相続においては、家族としての生活関係と法律上の親子関係を区別する必要があります。

特に、母の再婚相手と連れ子との間に養子縁組があるかどうかは、相続人を確定するうえで重要な事項です。

また、母と再婚相手のどちらが先に亡くなったのかによっても、相続関係が変わる場合があります。

例えば、母が先に亡くなっていれば、連れ子が母に代わって再婚相手を相続することはできません。

一方、再婚相手が先に亡くなり、その後に母が亡くなった場合には、母を通じて財産を取得することがあります。

そのため、再婚家庭の相続では、誰が家族として暮らしていたのかだけでなく、戸籍上の親子関係、養子縁組の有無、死亡した順番、遺言書の有無などを確認することが重要です。

母の再婚相手が亡くなった場合には、連れ子も当然に相続人になると考えず、まず養子縁組の有無を確認し、法律上の相続人を正確に把握することが大切です。


参考資料

民法|e-Gov法令検索

法務省|養子縁組について知ろう

国税庁|相続人の範囲と法定相続分

裁判所|子の氏の変更許可

東久留米市|入籍届

国税庁|相続税額の2割加算

法務省|相続登記の申請義務化について

法務省|相続登記の申請義務化に関するQ&A