2026年9月15日火曜日

土地と建物の所有者が違う場合、相続登記はどうする?

 


土地と建物の所有者が違う場合、相続登記はどうする?

「父が亡くなったので実家の相続登記をしようとしたら、土地と建物の名義が違っていた」

「土地は父名義なのに、建物は祖父名義のままだった」

「同じ自宅なのだから、まとめて相続登記できないの?」

相続登記の準備をしていると、このような問題が見つかることがあります。

一般の方にとっては、土地と建物をまとめて一つの「自宅」と考えるのが自然かもしれません。

しかし、不動産登記では、土地と建物は原則として別々の不動産として扱われます。

そのため、土地と建物の所有者が異なる場合には、それぞれの相続関係を確認する必要があります。

今回は、土地と建物の所有者が異なる場合の相続登記の進め方と、注意しておきたい点について説明します。

① 土地と建物の所有者が違うことはある?

あります。

例えば、次のようなケースです。

  • 土地は父名義、建物は祖父名義

  • 土地は父名義、建物は母名義

  • 土地は夫名義、建物は妻名義

  • 土地は親名義、建物は子ども名義

このように、土地と建物の所有者が異なることは珍しくありません。

例えば、父が所有していた土地の上に、祖父名義の建物が建っている場合です。

親族間で土地を使用することについて合意し、建物だけ別の人の名義になっていることもあります。

また、もともとは土地も建物も祖父が所有していたものの、土地だけ父への相続登記を済ませ、建物の名義変更を忘れていたという場合もあります。

土地と建物の名義が異なる理由は、過去の所有関係や相続の経緯によってさまざまです。

② 土地と建物は別々に登記されている

不動産登記では、土地と建物は別々の登記記録で管理されています。

例えば、自宅の土地について登記事項証明書を取得すると、土地の所有者や地番、地積などが記載されています。

一方、自宅の建物について登記事項証明書を取得すると、建物の所有者や家屋番号、構造、床面積などが記載されています。

そのため、土地の登記事項証明書を取得しただけでは、建物の所有者までは確認できません。

例えば、土地の所有者が父だったとしても、その土地上に建っている建物の所有者も父であるとは限らないのです。

相続登記をする際には、土地と建物の両方について登記事項証明書を確認することが大切です。

③ 土地が父名義、建物が祖父名義の場合

具体例を考えてみましょう。

父が亡くなり、長男が実家を相続することになったとします。

登記事項証明書を確認したところ、次のようになっていました。

土地の所有者:父

建物の所有者:祖父

祖父は父よりも前に亡くなっています。

この場合、土地と建物を長男の名義にするには、どのような手続きが必要でしょうか。

まず、土地については、父の相続人を確認します。

一方、建物については、祖父の相続人を確認しなければなりません。

つまり、土地は父の相続、建物は祖父の相続という、それぞれ異なる相続関係を調査する必要があるのです。

ただし、祖父が亡くなった後に父も亡くなっているため、建物については数次相続が発生している可能性があります。

④ 祖父名義の建物は、父の子どもだけで相続できる?

ここは注意したいところです。

例えば、祖父には次の2人の子どもがいたとします。

  • 父

  • 父の妹(叔母)

祖母は祖父より先に亡くなっていました。

祖父が亡くなった時点で、相続人は父と叔母の2人です。

しかし、祖父の建物について遺産分割協議をしないまま、父も亡くなってしまいました。

父には妻と長男がいます。

この場合、祖父の建物については、叔母だけでなく、亡くなった父の相続人である妻と長男も関係することになります。

なぜなら、祖父が亡くなった際に父が取得した相続上の権利が、父の死亡によって、その相続人に承継されるからです。

したがって、長男が実家に住んでいるからといって、当然に祖父名義の建物を長男だけで取得できるわけではありません。

建物については、祖父の相続人と、その後に亡くなった相続人の相続関係を確認する必要があります。

このようなケースは、数次相続の問題にもつながります。

⑤ 土地と建物を同じ人の名義にすることはできる?

土地と建物の所有者が異なっていても、最終的に同じ人の名義にすることは可能です。

例えば、先ほどのケースで、土地も建物も長男が取得することになった場合です。

ただし、そのためには必要な相続関係を確認し、取得者を決めなければなりません。

土地については、父の相続人による遺産分割協議などが必要になります。

建物については、祖父の相続に関係する方々による協議などが必要になることがあります。

相続関係が異なるため、土地と建物を取得する人が同じであっても、必要な協議の当事者が同じとは限りません。

また、遺言書がある場合には、その内容も確認する必要があります。

最終的に同じ人が取得することと、相続登記の前提となる手続きが同じであることは別です。

⑥ 遺産分割協議書は一つにまとめられる?

土地と建物で相続関係が異なる場合には、遺産分割協議書の作成方法にも注意が必要です。

例えば、父の相続人が妻と長男の2人で、祖父の建物については叔母も協議に関係する場合です。

このようなときには、土地と建物それぞれについて、誰が協議に参加する必要があるのかを整理します。

そして、財産の取得者を明確にした書面を作成します。

相続関係や合意内容によっては、一つの書面にまとめることも考えられますが、土地と建物で協議の当事者が異なる場合には、それぞれ別の協議書を作成する方が分かりやすいこともあります。

重要なのは、書面の数ではありません。

それぞれの不動産について、必要な人の合意がそろっているかどうかです。

⑦ 父名義の土地だけ先に相続登記できる?

土地と建物の所有者が異なる場合、相続登記を必ず同時にしなければならないのでしょうか。

例えば、土地については父の相続人全員で協議がまとまっているものの、祖父名義の建物については叔母との協議がまだ終わっていない場合です。

このようなとき、土地について必要な書類がそろっていれば、土地の相続登記を先に進めることは可能です。

土地と建物は別々の不動産として登記されているからです。

ただし、土地の相続登記が終わっても、建物の名義まで変わるわけではありません。

また、将来その不動産を売却する場合には、建物についても所有関係を整理しなければならないことがあります。

したがって、土地だけ先に登記する場合でも、建物の相続関係を放置しないことが大切です。

⑧ 土地の所有者が亡くなり、建物の所有者は生きている場合

今度は、土地が父名義、建物が長男名義だった場合を考えてみましょう。

父が亡くなりましたが、長男は存命です。

この場合、相続が発生したのは父名義の土地についてです。

建物は、もともと長男が所有しているため、父が亡くなったことだけを理由に建物の相続登記をする必要はありません。

ただし、父の土地を誰が相続するのかによって、今後の土地と建物の関係が変わることがあります。

例えば、土地を長女が相続した場合です。

この場合、土地は長女、建物は長男の所有となります。

そのため、長男が土地をどのような権利に基づいて使用しているのかを確認する必要があります。

親子間で無償で土地を借りていた場合と、地代を支払って土地を借りていた場合とでは、法律上の取扱いが異なることがあります。

⑨ 土地の使用関係にも注意が必要

土地と建物の所有者が異なる場合には、相続登記だけでなく、土地の使用関係も確認したいところです。

例えば、父の土地の上に長男が自宅を建てていた場合です。

長男が父の土地を無償で使用していたのであれば、使用貸借の関係になっている可能性があります。

一方、長男が父に地代を支払っていた場合には、賃貸借の関係が問題になることがあります。

また、土地に借地権などの登記がされている場合もあります。

こうした関係によって、土地や建物を相続した後の権利関係が変わることがあります。

ただし、親族間であるというだけで、必ず使用貸借になるわけではありません。

過去の契約内容や土地の使用状況などを確認する必要があります。

土地と建物の所有者が異なる場合には、名義だけでなく、土地を使用する権利についても確認しておくことが重要です。

⑩ 建物が未登記だった場合は?

土地の登記事項証明書は取得できたものの、建物の登記記録が見つからない場合もあります。

例えば、父名義の土地に古い住宅が建っているのに、建物について登記がされていなかった場合です。

このような建物を未登記建物といいます。

未登記建物であっても、所有権が存在しないわけではありません。

そのため、まずは誰が建物を所有していたのかを確認する必要があります。

例えば、固定資産税の課税明細書や名寄帳、建築関係の資料などを調べることが考えられます。

そのうえで、必要に応じて建物表題登記や所有権保存登記などを検討します。

なお、建物表題登記などの表示に関する登記と、所有権保存登記などの権利に関する登記では、手続きの内容が異なります。

建物表題登記などの申請代理は土地家屋調査士、所有権保存登記などの申請代理は司法書士の業務になります。

⑪ 相続登記にはどのような書類が必要?

土地と建物の所有者が異なる場合には、それぞれの相続関係に応じた書類を準備します。

一般的には、次のような書類が必要になることがあります。

  • 土地・建物それぞれの登記事項証明書

  • 亡くなった所有者の出生から死亡までの戸籍謄本等

  • 相続人の戸籍謄本

  • 亡くなった所有者の住民票の除票や戸籍の附票

  • 不動産を取得する相続人の住民票等

  • 遺産分割協議書

  • 相続人の印鑑証明書

  • 固定資産評価額を確認できる資料

例えば、土地が父名義、建物が祖父名義で、両方とも亡くなっている場合です。

このときには、父の相続だけでなく、祖父の相続関係も確認する必要があります。

また、祖父が亡くなった後に父も亡くなっている場合には、それぞれの死亡の順序も重要になります。

相続人の一人が亡くなっている場合には、その方の相続人を確認するための追加の戸籍などが必要になることがあります。

⑫ 固定資産税の納税通知書だけでは所有者を判断できない?

固定資産税の納税通知書や課税明細書は、不動産の調査で役立つ資料です。

しかし、納税通知書が届いている人と、登記上の所有者が同じとは限りません。

例えば、建物が祖父名義のままになっているものの、父が長年固定資産税を支払っていた場合です。

このとき、父が税金を払っていたという理由だけで、建物の所有権が父へ移転しているとは限りません。

また、相続人代表者に納税通知書が送付されている場合もあります。

そのため、固定資産税の資料だけで所有者を判断するのではなく、登記事項証明書や過去の相続関係などを確認することが大切です。

固定資産税を支払っている人と、法律上の所有者は区別して考える必要があります。

⑬ 将来、実家を売却するときにも問題になる?

土地と建物の所有者が異なる場合には、将来の売却時にも問題になることがあります。

例えば、土地は長男名義になっているものの、建物が亡くなった祖父名義のままだった場合です。

長男が土地と建物をまとめて売却したいと考えても、当然に建物まで売却できるわけではありません。

建物については、実際に誰が所有しているのかを確認し、必要な相続登記などを行う必要があります。

また、土地と建物の所有者が別々の人である場合には、売却の際にそれぞれの所有者が関係することがあります。

そのため、将来、売却や建替えなどを考えている場合には、土地と建物の所有関係を早めに整理しておくことが大切です。

⑭ 相続登記の義務化にも注意

2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。

相続によって不動産を取得したことを知った場合には、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。

また、2024年4月1日より前に発生した相続についても義務化の対象です。

以前から不動産の取得を知っていた場合には、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります。

土地と建物で所有者が異なる場合には、それぞれについて相続登記の義務や期限を確認する必要があります。

例えば、土地については父の相続登記が必要で、建物については以前に亡くなった祖父の相続登記が必要になっている場合です。

土地の相続登記が終わったからといって、建物についての相続登記の義務まで果たしたことにはなりません。


まとめ

土地と建物は、不動産登記では原則として別々の不動産として扱われます。

そのため、所有者が異なる場合には、それぞれについて相続関係を確認し、必要な登記手続きを進めることになります。

今回のポイントを整理すると、

  • 土地と建物の所有者が異なることはある

  • 土地と建物は、原則として別々の登記記録で管理されている

  • 土地が父名義、建物が祖父名義の場合には、それぞれの相続関係を確認する

  • 祖父が亡くなった後に父も亡くなっている場合には、数次相続が問題になることがある

  • 土地と建物を最終的に同じ人の名義にすることは可能

  • ただし、必要な遺産分割協議の当事者は異なる場合がある

  • 土地だけ先に相続登記することも可能

  • 土地と建物の所有者が異なる場合には、土地の使用関係にも注意する

  • 建物が未登記の場合には、別の登記手続きが必要になることがある

  • 固定資産税を支払っている人が、必ずしも所有者とは限らない

  • 将来の売却や建替えを考える場合にも、所有関係を整理しておくことが大切

ということになります。

相続登記をするときには、自宅の土地だけでなく、建物についても登記事項証明書を確認する必要があります。

特に、何世代にもわたって同じ家に住んでいる場合には、土地と建物の名義が異なっていることもあります。

土地と建物の所有者が異なる場合には、どちらの不動産について、誰の相続が発生しているのかを整理することが重要です。

そのうえで、必要な相続人を確認し、それぞれの所有関係に応じた相続登記を進めることになります。