2026年9月30日水曜日

成年後見⑤ 任意後見 2026年改正で任意後見はどう変わる?監督人・補助との関係を解説

 


2026年改正で任意後見はどう変わる?監督人・補助との関係を解説

これまで、成年後見人の仕事や、後見・保佐・補助の違い、2026年の成年後見制度改正についてご紹介してきました。

今回の制度改正では、任意後見制度についても重要な見直しが行われます。

任意後見というと、

「元気なうちに、自分で将来の後見人を決めておく制度」

というイメージを持たれている方も多いと思います。

今回の改正では、

・任意後見の開始方法
・任意後見監督人の扱い
・法定の補助制度との関係
・本人の意向の尊重

などが変わります。

ただし、2026年9月現在、改正後の制度はまだ施行されていません。

今回は、現在の任意後見制度と、改正後に何が変わるのかを分けて説明します。


そもそも任意後見とは?

任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、

「将来、自分の判断能力が低下したとき、この人に財産管理や生活に必要な手続きをしてもらいたい」

という内容をあらかじめ契約しておく制度です。

契約は公正証書で作成します。

例えば、

・預貯金の管理
・施設入所に関する契約
・介護サービスの契約
・不動産に関する手続
・各種支払い

などについて、将来任意後見人に代理してもらうことを決めておくことができます。

法定後見と大きく違うのは、本人が元気なうちに、自分で任意後見受任者や代理してもらう内容を決めておけることです。

現在は「任意後見監督人の選任」でスタートします

2026年9月現在の制度では、任意後見契約を公正証書で作っただけでは、任意後見はまだ始まりません。

本人の判断能力が不十分になった後、

家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点

で任意後見契約の効力が生じます。

つまり現在は、

任意後見契約を締結
↓
本人の判断能力が低下
↓
家庭裁判所へ申立て
↓
任意後見監督人が選任される
↓
任意後見開始

という流れです。


改正後は「任意後見開始の審判」が設けられます

改正後は、この仕組みが変わります。

新しい制度では、家庭裁判所が行う

「任意後見開始の審判」

によって任意後見が開始する仕組みになります。

改正後の任意後見契約法では、任意後見契約について、任意後見開始の審判がされた時から効力を生ずる契約と定められています。 

つまり、

現在
監督人の選任=任意後見の開始

から、

改正後
家庭裁判所による任意後見開始の審判=任意後見の開始

へ変わります。

任意後見監督人が必ず付くとは限らなくなります

今回の改正で特に大きいのが、この点です。

現在は、任意後見を開始するためには任意後見監督人の選任が必要です。

任意後見監督人は、任意後見人がきちんと仕事をしているかを監督し、家庭裁判所へ報告する役割を持っています。

改正後も原則として、家庭裁判所は任意後見開始の審判をするときに任意後見監督人を選任します。

ただし、

家庭裁判所が「明らかに任意後見監督人による監督の必要がない」と認める場合には、任意後見監督人を選任しないことができる

という例外が設けられます。 

したがって、

「改正後は監督人がいらなくなる」

という意味ではありません。

あくまで原則は監督人を選任し、明らかに監督の必要がない場合に限って選任しないことができるという制度です。


なぜ監督人を付けない仕組みが設けられるの?

現在の制度では、任意後見を利用すると必ず任意後見監督人が選任されます。

しかし、事案によっては、

「本人が選んだ任意後見人がいて、さらに監督人を必ず付ける必要があるのか」

という問題も指摘されてきました。

国会審議でも、監督人による監督の負担が重すぎる場合があるとの指摘を踏まえて、監督の必要が明らかにない場合には監督人を付けないことを可能にすると説明されています。 

任意後見を利用する方の事情に応じて、より柔軟に制度を使えるようにする改正といえます。


監督人がいない場合、家庭裁判所の監督はどうなる?

任意後見監督人を選任しない場合でも、

任意後見人が完全に誰の監督も受けなくなるわけではありません。

改正制度では、家庭裁判所による任意後見人の事務の監督に関する仕組みも整備されています。

したがって、

「監督人がいない=任意後見人が自由に本人の財産を扱える」

という制度ではありません。

あくまで本人の財産と生活を守る制度であることに変わりはありません。


「補助」が始まっても任意後見が自動的に終わらなくなります

もう一つ大きな変更があります。

現在の制度では、任意後見監督人が選任された後に本人が法定後見の開始の審判を受けると、原則として任意後見契約は終了します。 

今回の改正では、この規定が削除されます。

つまり改正後は、必要な場合には、

任意後見と法定の補助制度を併存させる

ことが可能になります。 


任意後見と補助を一緒に使うとは?

例えば、

本人が元気なうちに、

「預貯金管理や施設契約などはAさんに任せる」

という任意後見契約を作っていたとします。

しかし判断能力が低下した後、

悪質商法などから本人を守るために、一定の契約について取消権による保護も必要

という状況になることがあります。

任意後見人は、契約で定められた代理権を行使する制度ですが、法定後見のような当然の取消権を持つ制度ではありません。

そこで改正後は、本人の利益のため特に必要な場合には補助制度も利用し、

任意後見による代理+補助制度による保護

という組み合わせが可能になります。

国会審議でも、任意後見だけでは対応できない取消しによる保護が必要なケースなどで、補助を併用することが想定されています。 


ただし、自由に両方を使えるわけではありません

任意後見契約が登記されている場合、家庭裁判所が補助開始の審判をすることができるのは、

本人の利益のため特に必要がある場合です。

つまり、

「念のため補助も付けておこう」

というだけで当然に併用する制度ではありません。

任意後見契約の内容だけでは本人を十分に保護できないなど、補助制度を利用する必要性がある場合に家庭裁判所が判断します。改正後の条文にも、この「本人の利益のため特に必要があるとき」という要件が置かれています。 


本人の「意向」を確認することがより明確になります

今回の改正では、本人の意思を尊重する仕組みもより具体的になります。

現在も任意後見人には、本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況に配慮する義務があります。

改正後はさらに、

本人に必要な情報を提供する
↓
本人の話を聞く
↓
適切な方法で本人の意向を把握する
↓
その意向を尊重して事務を行う

ということが法律上、より具体的に規定されます。 

「判断能力が低下したから任意後見人が全部決める」

という制度ではなく、

本人がどうしたいのかを可能な限り確認して支援する

という考え方が、より明確になります。


任意後見人を本人が選べるという基本は変わりません

今回の改正後も、

本人が元気なうちに、自分が信頼する人を任意後見受任者として選ぶ

という任意後見制度の基本的な考え方は変わりません。

また、任意後見契約は引き続き公正証書で作成します。改正後の条文でも、公正証書によって契約しなければならないとされています。 

そのため、

「自分が判断できなくなった後、誰に財産や生活に関する手続きを任せたいか」

を自分自身で決めておける点は、今後も任意後見の大きな特徴です。


改正前に作った任意後見契約はどうなる?

すでに任意後見契約を作っている方も気になるところだと思います。

今回の改正では、原則として、施行日前に締結された任意後見契約についても新しい規定が適用される経過措置が設けられています。 

ただし、具体的な適用関係については契約の状況や、施行前に任意後見が開始しているかなどによって確認が必要になる場合があります。

既に任意後見契約を締結している方については、施行時期が近づいた段階で契約内容を確認しておくとよいでしょう。


新しい制度はいつから始まる?

任意後見制度の改正を含む法律は、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されています。

成年後見・任意後見制度に関する主要な改正は、

公布の日から2年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日

に施行されます。 

したがって、2026年9月現在はまだ施行前です。

今、任意後見制度を利用する場合には現在の制度が適用されます。


改正を待って任意後見契約を作った方がいい?

これもケースによります。

新しい制度が始まるからといって、

「今は任意後見契約を作らず、施行まで待った方がいい」

とは一概にいえません。

任意後見契約は、本人に契約内容を理解して判断できる能力があるうちに作成する必要があります。

将来のことを考えているうちに判断能力が低下してしまえば、任意後見契約そのものを締結できなくなることもあります。

現在でも任意後見制度は利用できますので、

「誰に任せたいか」
「何を任せたいか」
「将来自宅をどうするか」
「施設へ入った場合の財産管理をどうするか」

などを、元気なうちに考えておくことには意味があります。

成年後見制度の改正と合わせて考えることが大切です

今回の改正では、

法定後見制度
→ 後見・保佐を廃止し、補助制度を中心とした仕組みへ

任意後見制度
→ 任意後見開始の審判、監督人の柔軟化、補助との併存など

という形で、両方の制度が見直されます。 

共通しているのは、

本人に必要な支援を、必要な範囲で行う

という方向へ制度が変わっていることです。

芦屋市で任意後見をお考えの方へ

松岡司法書士事務所では、芦屋市を中心に、西宮市・神戸市東灘区などで任意後見に関するご相談を承っています。

「将来、認知症になったときの財産管理が心配」

「施設への入所や自宅の管理を誰かに任せておきたい」

「任意後見契約では何を決められるのか知りたい」

「今回の制度改正で、自分の任意後見契約がどう変わるのか知りたい」

という段階からでもご相談いただけます。

任意後見は、判断能力が低下した後に考える制度ではなく、元気なうちに将来の支援方法を自分で決めておく制度です。

将来の生活や財産管理について不安がある場合には、まず何を準備しておきたいのかを整理するところから始めることができます。

初回相談は無料です。

ご自宅・病院・施設などへの出張相談にも対応しています。

電話でいきなり相談するのが苦手という方は、メールからでもお気軽にお問い合わせください。


詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。

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