遺産分割協議はどうする?亡くなった相続人がいる場合の協議書の作り方
「祖父の土地について、相続人全員で話し合おうと思ったら、父がすでに亡くなっていた」
「亡くなった父の代わりに、誰が遺産分割協議書に署名するの?」
「祖父と父の相続について、協議書を2通作らないといけない?」
数次相続では、このような疑問が生じることがあります。
通常の相続であれば、亡くなった方の相続人全員で遺産分割協議を行います。
ところが、遺産分割が終わらないうちに相続人が亡くなった場合には、その方の相続人が協議に参加することになります。
今回は、数次相続における遺産分割協議の進め方と、遺産分割協議書の作成方法について整理します。
① 数次相続でも遺産分割協議はできる?
結論からいうと、数次相続が発生していても遺産分割協議はできます。
例えば、祖父が亡くなったときの相続人が、
祖母
父
叔父
の3人だったとします。
しかし、祖父の土地について話し合いをしないまま、父が亡くなってしまいました。
父には妻と子ども2人がいます。
この場合、祖父の相続について父が持っていた権利は、父の相続人に承継されます。
そのため、祖父の遺産分割協議は、原則として次の5人で行うことになります。
祖母
叔父
父の妻
父の長男
父の長女
最初の相続人だった父はすでに亡くなっていますが、その地位を引き継いだ相続人が協議に参加することで、遺産分割を進めることができます。
② 亡くなった父の代わりに、母だけが署名すればいい?
ここは間違えやすいところです。
父が亡くなった後、父の妻である母が家族を代表して手続きを進めていることがあります。
しかし、母が手続きを担当しているからといって、母だけが父の相続上の権利を引き継ぐわけではありません。
父に妻と子ども2人がいる場合、原則として3人とも父の相続人です。
したがって、祖父の遺産分割協議についても、父の妻だけでなく、父の子ども2人も参加する必要があります。
「家族の代表者が署名すれば、ほかの相続人は署名しなくてもよい」というわけではありません。
遺産分割協議は、原則として権利を有する相続人全員の合意によって成立します。
なお、未成年の相続人がいる場合には、親権者との利益相反によって特別代理人の選任が必要になることもあります。
③ 遺産分割協議書には、亡くなった父をどう記載する?
数次相続の遺産分割協議書では、最初の相続人が、その後に亡くなっていることを明確にする必要があります。
例えば、祖父が先に亡くなり、その相続人である父が後から亡くなった場合です。
協議書には、次のように記載する方法があります。
【記載例】
被相続人 山田太郎(祖父)
死亡年月日 平成30年○月○日
相続人兼被相続人 山田一郎(父)
死亡年月日 令和6年○月○日
ここで重要なのが、父についての**「相続人兼被相続人」**という肩書です。
父は、祖父の相続については相続人でした。
一方、その後に父自身も亡くなっているため、父の相続については被相続人となっています。
この両方の立場を明らかにするために、「相続人兼被相続人」と記載することがあります。
ただし、これは記載方法の一例であり、協議書の形式が法律で一つに決められているわけではありません。
④ 遺産分割協議書の署名欄はどうする?
先ほどの例で、祖父の土地を叔父が単独で取得することになったとします。
その場合、協議書には、祖父の遺産分割協議に参加する全員の合意を記載します。
例えば、署名欄の肩書は次のように整理できます。
【署名欄の記載例】
相続人(祖父の妻) 山田花子
相続人(祖父の次男) 山田次郎
相続人兼被相続人・山田一郎の相続人(妻) 山田和子
相続人兼被相続人・山田一郎の相続人(長男) 山田三郎
相続人兼被相続人・山田一郎の相続人(長女) 山田春子
※上記は関係を説明するための例です。実際の協議書では、当事者の地位が明確になるように肩書を調整し、住所・氏名などを記載します。
遺産分割協議書には、関係者全員が実印を押印し、それぞれの印鑑証明書を添付するのが一般的です。
大切なのは、誰がどの相続に関係して協議に参加しているのか、書面から分かるようにすることです。
⑤ 祖父と父の相続について、協議書は2通必要?
数次相続では、相続が2回発生しているため、必ず遺産分割協議書も2通必要だと思われることがあります。
しかし、必ずしもそうではありません。
相続関係や協議の内容によっては、1通の遺産分割協議書に必要な事項をまとめることもできます。
例えば、祖父の相続人だった父が亡くなった後、関係する相続人全員で祖父の土地について協議し、叔父が単独で取得することに合意した場合です。
このとき、協議書に祖父と父の死亡の経過や、父の相続人の立場などを明確に記載することで、祖父の遺産分割に関する合意を1通の書面にまとめることが考えられます。
一方、祖父の遺産と父自身の遺産の両方について分割する場合には、それぞれの相続関係や合意内容を整理する必要があります。
別々の協議書を作成した方が分かりやすい場合もあります。
「数次相続だから必ず1通でよい」「必ず2通必要」ということではありません。
⑥ 不動産の取得者はどう記載する?
遺産分割協議書では、誰がどの不動産を取得するのかを明確にする必要があります。
例えば、祖父名義の土地を叔父が単独で取得する場合です。
【協議内容の記載例】
被相続人山田太郎の相続財産である下記不動産について、相続人山田次郎が単独で取得する。
所在 ○○市○○町
地番 ○番○
地目 宅地
地積 ○○平方メートル
実際の協議書では、登記事項証明書に記載された不動産の表示を確認し、土地の所在・地番・地目・地積などを正確に記載します。
建物であれば、所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを確認します。
固定資産税の納税通知書に記載されている住所と、登記上の表示が異なることもあるため、注意したいところです。
⑦ 昔の遺産分割協議書が見つかった場合は?
例えば、祖父が亡くなった後、祖母・父・叔父の3人で遺産分割協議を行い、父が土地を取得することに決めていたとします。
しかし、父は相続登記をしないまま亡くなりました。
この場合、祖父の遺産分割協議が有効に成立していたのであれば、祖父の遺産分割を改めて行う必要は原則としてありません。
祖父の土地は、遺産分割によって父が取得したものとして扱われます。
その後、父が亡くなったことによる相続について、必要な手続きを進めることになります。
昔の遺産分割協議書が残っている場合には、内容を確認せずに新しい協議書を作成するのではなく、まずその書類が利用できるかを確認することが大切です。
⑧ 全員の合意が得られない場合は?
数次相続では、相続人が増えていることがあります。
例えば、
長年連絡を取っていない親族がいる
遠方に住んでいる相続人がいる
不動産の取得について意見が分かれている
一部の相続人と連絡が取れない
といった場合です。
遺産分割協議は、原則として関係する相続人全員の合意が必要です。
そのため、一部の相続人を除外したまま、ほかの相続人だけで有効な遺産分割協議を成立させることはできません。
話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停などを検討することになります。
また、相続人の中に判断能力が十分でない方や未成年者がいる場合には、成年後見人や特別代理人などの関与が必要になることがあります。
⑨ 遺産分割協議が終わったら登記はどうなる?
数次相続でも、遺産分割協議によって不動産を取得する人が決まれば、その内容に基づいて相続登記を進めます。
ただし、注意したいことがあります。
数次相続だからといって、登記名義人から最終的に取得する人へ、必ず1件で直接登記できるわけではありません。
相続の順番、途中で亡くなった方の相続人の人数、遺産分割協議の内容などによって、必要な登記が変わるためです。
例えば、祖父の相続について叔父が単独取得する場合と、祖父の土地を取得した父が亡くなり、その子が取得する場合とでは、登記の検討内容が異なります。
協議書の内容が登記申請に利用できるかどうかも、事前に確認しておく必要があります。
また、2024年4月1日から相続登記が義務化されており、遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に協議内容を踏まえた登記を申請する義務が生じる場合があります。
古い相続が重なっている場合にも、期限に注意が必要です。
まとめ
数次相続では、最初の相続人が亡くなっていても、その方の相続人が権利を承継することで、遺産分割協議を進めることができます。
今回のポイントを整理すると、
数次相続でも遺産分割協議はできる
亡くなった相続人の配偶者や子どもが協議に参加する場合がある
協議書では「相続人兼被相続人」などの肩書を使って相続関係を明確にする
相続関係や協議内容によっては、1通の協議書にまとめることもできる
不動産の表示と取得者を正確に記載する
過去に有効な遺産分割協議が成立している場合には、改めて協議する必要は原則としてない
協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の手続きが必要になることがある
協議書の内容によって、相続登記の申請方法も変わる
ということになります。
数次相続の遺産分割協議書では、単に「誰が不動産を取得するか」を記載するだけでは十分とは限りません。
誰がいつ亡くなり、誰がその権利を引き継いだのか。
相続関係を正しく整理し、協議に参加する人の立場を明らかにしておくことが大切です。
数次相続や古い相続登記の手続きについては、こちらのページでも紹介しています。
▶ 数次相続・古い相続登記について詳しく見る(松岡司法書士事務所)
参考資料
