相続登記はどう進める?申請の流れと注意点
「祖父名義の土地がそのままになっている」
「父も亡くなっていて、数次相続になっていることは分かった」
「では、実際に相続登記はどう進めればいいの?」
数次相続では、相続関係が複雑になるため、
まず何を確認するのか
どの書類をそろえるのか
登記は1回で済むのか
費用はどれくらいかかるのか
といった点が分かりにくくなりがちです。
今回は、数次相続の相続登記を進めるときの基本的な流れと、注意しておきたいポイントを整理します。
① まず確認するのは「今、誰名義なのか」
数次相続の相談では、最初に家族関係の話から始まりがちですが、登記手続きとしては、まず不動産が現在誰の名義になっているかを確認することが大切です。
例えば、実際には祖父が30年前に亡くなっていても、登記簿上の名義が祖父のままであれば、登記の出発点は祖父になります。
そのため、まずは不動産の登記事項証明書を取得し、
土地・建物の名義人
不動産の正確な表示
住所の記載
などを確認します。
固定資産税の納税通知書だけでは、登記の名義人や登記上の表示を正確に確認できないこともあります。
② 相続が何回発生しているかを整理する
登記名義人が分かったら、次に行うのは相続の回数と順番の整理です。
例えば、
祖父が死亡
祖父の相続登記をしない
父が死亡
叔父も死亡
という流れであれば、祖父の相続だけでなく、父や叔父の相続も関係してきます。
数次相続では、この死亡の順番がとても重要です。
なぜなら、誰が相続人になるのか、誰が遺産分割協議に参加するのか、どの登記が必要になるのかが、この順番によって変わるからです。
最初から登記申請書を作ろうとするよりも、まずは家系図のような形で
誰が
いつ亡くなり
誰が相続人になったのか
を整理する方が進めやすいです。
③ 戸籍と必要書類を集める
相続関係の整理ができたら、必要書類を集めます。
数次相続では、通常の相続登記よりも戸籍の量が多くなりやすいです。
一般的には、次のような書類が必要になります。
被相続人関係
登記名義人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
その後に亡くなった中間相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
現在の相続人関係
現在の相続人の戸籍謄本
住民票
印鑑証明書(遺産分割協議をする場合)
不動産関係
登記事項証明書
固定資産評価証明書
協議関係
遺産分割協議書
相続関係説明図(作成することが多い)
なお、過去に有効な遺産分割協議が成立していた場合には、その協議書も重要な資料になります。
④ 遺産分割が終わっているか、終わっていないかで進め方が変わる
数次相続の登記では、過去の遺産分割が終わっているかどうかが大きな分かれ道です。
1. まだ遺産分割が終わっていない場合
現在の関係者全員で、遺産分割協議を行うことになります。
2. すでに遺産分割が成立していた場合
例えば、祖父の相続について、祖母・父・叔父の間で「祖父の土地は父が取得する」とする遺産分割協議がすでに成立していた場合です。
この場合、祖父の遺産分割を現在の相続人全員で改めてやり直す必要は、原則としてありません。
必要になるのは、その協議内容を前提として、その後に亡くなった父の相続関係を整理することです。
つまり、数次相続では「死亡が何回発生したか」だけでなく、それぞれの相続で何が終わっていて、何が終わっていないのかを分けて考える必要があります。
⑤ 登記は1件で済む?それとも複数件必要?
ここはよく聞かれるところです。
数次相続では、
「祖父名義のままだから、祖父から最終的な取得者へ一気に登記できるのでは?」
と思われることがあります。
しかし、実際には必ず1件で済むわけではありません。
相続の経過、遺産分割の有無、誰がどの権利を取得したのかによって、必要な登記の組み方が変わります。
例えば、
中間の相続人に一度権利が帰属している場合
その後の相続で別の人が取得する場合
途中で有効な遺産分割協議が成立している場合
などでは、登記の構成を慎重に考える必要があります。
一方で、事情によっては、必要な相続関係を整理したうえで、1件の申請で処理できる場合もあります。
「数次相続だから必ず中間登記が必要」「必ず1件でできる」とは一概には言えません。
⑥ 相続登記の申請はどう行う?
必要書類がそろい、登記の方針が決まったら、法務局へ相続登記を申請します。
申請方法は、主に次のとおりです。
書面申請
オンライン申請
一般の方にとっては、書面で申請する方が分かりやすいことも多いかもしれません。
申請書には、
登記の目的
原因
相続人
不動産の表示
添付情報
などを記載します。
数次相続では、相続関係が複雑なぶん、申請書よりも、むしろその前提となる戸籍や協議書の整理の方が重要になることも多いです。
⑦ 登録免許税はいくら?
相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として
固定資産税評価額 × 1000分の4
です。
例えば、不動産の固定資産税評価額が1,000万円であれば、
1,000万円 × 0.4% = 4万円
となります。
数次相続だからといって、特別な税率になるわけではありません。
ただし、登記を複数件に分けて申請する場合には、登録免許税の計算や評価額の考え方を個別に確認する必要があることがあります。
また、法令により一定の免税措置が適用される場合もあります。
⑧ 相続登記の義務化との関係は?
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
相続により不動産を取得したことを知った相続人は、原則として、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
また、遺産分割が成立した場合には、その成立日から3年以内に、その内容に応じた登記をする必要があります。
数次相続では、相続関係の整理に時間がかかることがありますが、それでも義務化の対象になることがあります。
古い相続についても、2024年4月1日より前に発生していたもので相続登記が未了であれば、原則として2027年3月31日までに対応が必要となる場合があります。
すぐに遺産分割がまとまらない場合には、相続人申告登記の利用も検討されます。
⑨ 数次相続の登記でつまずきやすいポイント
数次相続の登記では、次のような点でつまずくことがあります。
1. 相続人を一人でも漏らしてしまう
戸籍の確認が不十分だと、必要な相続人を見落とすことがあります。
2. 昔の遺産分割協議書の有無を確認していない
すでに協議が成立していたのに、それを前提にしないまま新しい協議を進めてしまうことがあります。
3. 不動産の表示が不正確
協議書や申請書に記載する不動産の表示は、登記簿どおりに正確である必要があります。
4. 相続放棄を見落とす
戸籍だけでは分からないため、家庭裁判所での相続放棄の有無も確認が必要なことがあります。
5. 話し合いがまとまらない
数次相続では相続人が増えやすく、意見の調整が難しくなることがあります。
⑩ 数次相続では「整理してから申請」が大切
数次相続の登記では、急いで申請書を作るよりも、まず相続関係を整理することが大切です。
現在の名義人は誰か
相続は何回発生しているか
誰が現在の関係者か
過去に遺産分割は成立していたか
相続放棄はないか
最終的に誰が不動産を取得するのか
これらを確認してから申請に進むことで、途中でやり直しになるリスクを減らすことができます。
数次相続では、手続きが長く感じられるかもしれませんが、一つずつ順番に確認していけば整理できます。
まとめ
数次相続の相続登記では、相続関係を整理し、必要書類をそろえたうえで、事情に応じた形で登記申請を行うことになります。
今回のポイントを整理すると、
まずは登記事項証明書で現在の名義人を確認する
誰がいつ亡くなったかを整理する
登記名義人や中間相続人の戸籍を集める
過去の遺産分割協議の有無で進め方が変わる
数次相続の登記が必ず1件で済むとは限らない
登録免許税は原則として固定資産税評価額の1000分の4
相続登記義務化の期限にも注意が必要
申請の前に相続関係を整理することが大切
ということになります。
数次相続は、相続が重なっているぶん、通常の相続登記よりも整理する事項が多くなります。
ただ、古い名義の不動産でも、手続きできないわけではありません。
登記名義人から順番に相続関係をたどっていけば、必要な手続きは見えてきます。
数次相続や古い相続登記については、こちらのページでもご案内しています。
▶ 数次相続・古い相続登記について詳しく見る(松岡司法書士事務所)
