亡くなった人の借金はどうやって調べる?信用情報と相続財産の調査
「父が亡くなったけれど、借金がなかったのか分からない」
「通帳には借金の返済らしい記録がないけれど、それだけで安心していいの?」
「亡くなった人の借入れを調べる方法はある?」
ご家族が亡くなった場合、預貯金や不動産などの財産を調べることになります。
しかし、相続で確認しなければならないのは、プラスの財産だけではありません。
亡くなった方に借金があれば、その債務も原則として相続の対象になります。
特に、亡くなった方が一人暮らしだった場合や、家族が日頃の金銭管理を把握していなかった場合には、借入れの有無が分からないこともあります。
今回は、亡くなった方の借金を調べる方法と、信用情報機関の利用方法、相続放棄を考える場合の注意点について説明します。
① 相続では借金も引き継ぐの?
相続というと、預貯金や不動産などの財産を引き継ぐことをイメージするかもしれません。
しかし、相続では原則として、亡くなった方の権利だけでなく義務も承継します。
例えば、父が亡くなり、次のような財産が残されていたとします。
銀行預金:300万円
自宅の土地建物:1,500万円
銀行からの借入金:500万円
この場合、預貯金や不動産だけでなく、借入金も相続の問題になります。
また、借金の額がプラスの財産を上回っていることもあります。
そのような場合には、相続放棄や限定承認を検討することになります。
そのため、相続手続きを始める際には、プラスの財産とマイナスの財産の両方を調べることが大切です。
② 最初に通帳や郵便物を確認する
借金を調べる場合、まずは亡くなった方の身の回りに残されている資料を確認します。
例えば、次のようなものです。
銀行の通帳や取引明細
クレジットカード
ローンの契約書や返済予定表
金融機関からの郵便物
消費者金融会社からの通知
借入金の返済に関する領収書
督促状や催告書
裁判所から届いた書類
特に、銀行口座の取引履歴は重要な手掛かりになります。
例えば、毎月決まった日に同じ会社へ数万円が引き落とされていた場合です。
住宅ローンやカードローン、クレジットカードの利用代金などを支払っていた可能性があります。
一方、預金の引落しがあったからといって、それが必ず借金の返済とは限りません。
保険料や携帯電話料金、各種サービスの利用料金である可能性もあります。
そのため、取引先の名称や契約内容を確認する必要があります。
③ 通帳に返済記録がなければ、借金はない?
ここは注意したいところです。
通帳に借金の返済記録がなくても、借金がないとは限りません。
例えば、亡くなった方が複数の銀行口座を持っていた場合です。
家族が確認した通帳には返済記録がなくても、別の口座から返済していた可能性があります。
また、口座振替ではなく、振込みや現金で返済していた場合もあります。
さらに、最近借り入れたばかりで、まだ返済が始まっていないということも考えられます。
したがって、通帳の確認は借金調査の第一歩ですが、それだけで調査が完了するわけではありません。
④ 信用情報機関を利用して借入れを調べる
金融機関などからの借入れを調べる方法の一つに、信用情報の開示請求があります。
信用情報機関とは、ローンやクレジットカードなどの契約情報や返済状況などを登録・管理している機関です。
日本には、主に次の3つの信用情報機関があります。
1.CIC(株式会社シー・アイ・シー)
クレジットカード会社や信販会社などが多く加盟している信用情報機関です。
クレジットカードの分割払いやリボ払い、各種ローンなどの情報を確認できる場合があります。
2.JICC(株式会社日本信用情報機構)
消費者金融会社やクレジット会社などが加盟している信用情報機関です。
借入れの契約内容や返済状況などを確認できる場合があります。
3.全国銀行個人信用情報センター(KSC)
全国銀行協会が運営する信用情報機関です。
銀行などの金融機関に関係するローンや返済状況などの情報が登録されています。
これらの機関では、亡くなった方の信用情報について、一定の資格を持つ親族などから開示請求を受け付けています。
ただし、それぞれの機関に登録されている情報は同じではありません。
⑤ CICでは何を調べられる?
CICでは、クレジットカードやローンなどの契約情報を確認できる場合があります。
例えば、亡くなった父がクレジットカードを利用していた場合です。
カードの利用代金について、分割払いやリボ払いの残高があれば、信用情報に登録されている可能性があります。
また、携帯電話端末の分割払いなども、契約内容によっては信用情報に登録されます。
CICでは、亡くなった方の信用情報について、法定相続人からの開示請求を受け付けています。
死亡した方については、郵送による手続きとなります。
一般的には、
法定相続人用の開示申込書
申込人の本人確認書類
法定相続人であることを確認できる戸籍など
亡くなったことを確認できる書類
所定の開示手数料
などが必要です。
また、法定相続情報一覧図を利用できる場合もあります。
具体的な必要書類や手数料は、CICの公式案内で確認する必要があります。
⑥ JICCでは何を調べられる?
JICCでは、消費者金融会社やクレジット会社などに関係する信用情報を確認できます。
例えば、亡くなった方がカードローンや消費者金融の借入れを利用していた場合です。
その契約情報や返済状況などが登録されている可能性があります。
JICCでも、亡くなった方の信用情報を郵送で開示請求できます。
JICCの場合は、法定相続人に加えて、2親等以内の血族の方なども、所定の条件で開示請求できる取扱いになっています。
一般的には、本人確認書類、親族関係や死亡を確認できる戸籍など、開示申込書、手数料が必要です。
法定相続情報一覧図を利用できる場合もあります。
なお、JICCでは、所定の委任を受けた弁護士や司法書士が開示手続きを行う方法も案内されています。
ただし、必要な委任状や書類、開示結果の受取方法などは、依頼の内容によって異なります。
⑦ 全国銀行個人信用情報センターでは何を調べられる?
全国銀行個人信用情報センターは、全国銀行協会が運営する信用情報機関です。
銀行などからの借入れについて、契約内容や返済状況などを確認できる場合があります。
例えば、亡くなった方が銀行のカードローンを利用していた場合です。
その銀行が加盟会員として情報を登録していれば、開示結果に契約情報などが記載される可能性があります。
また、住宅ローンに関する情報が登録されている場合もあります。
亡くなった方の情報については、法定相続人または所定の法定代理人などから開示請求ができます。
必要書類には、本人確認書類、戸籍などの相続関係を確認できる書類、死亡を確認できる書類などがあります。
ただし、全国の銀行に存在する借金を、すべて網羅して調べられるという意味ではありません。
登録対象となるのは、同センターの会員から登録された信用情報です。
⑧ 3つの信用情報機関を調べれば借金は全部分かる?
ここが、今回の記事で特に重要なところです。
CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの3つを調べても、亡くなった方の借金がすべて分かるとは限りません。
信用情報機関には、それぞれ登録対象となる契約や加盟会員の範囲があります。
例えば、次のような債務は、信用情報に登録されていない可能性があります。
親族や知人から借りたお金
個人間の金銭貸借
一部の事業上の借入金
未払いの家賃
未払いの医療費
税金の滞納
その他の未払代金
また、信用情報は、登録元の会社から報告された情報に基づいて作成されています。
契約終了後など、一定期間が経過すると登録情報が削除されることもあります。
さらに、亡くなったことを把握した登録元の会社が、契約情報を削除している場合もあります。
したがって、信用情報に何も記載されていないことと、債務が存在しないことは同じではありません。
信用情報は、借金調査のための重要な資料ですが、それだけで調査を完了させないことが大切です。
⑨ 借金以外の未払い金にも注意
亡くなった方の債務は、金融機関からの借入金だけではありません。
例えば、次のようなものがあります。
医療費の未払金
介護施設の利用料
家賃や管理費
電気・ガス・水道料金
携帯電話料金
クレジットカードの未払代金
税金や社会保険料の未納分
ただし、これらはすべて同じように相続されるわけではなく、契約内容や法律上の取扱いによって違いがあります。
また、亡くなる前に発生した債務なのか、亡くなった後に契約の終了や財産の管理などに伴って発生した費用なのかも、整理しておく必要があります。
例えば、亡くなった方が借りていた住宅の家賃について、死亡前の未払分と、死亡後に契約が終了するまでの分とでは、確認すべき事情が異なります。
誰に対して、いつ、どのような理由で支払義務が発生したのかを確認することが大切です。
⑩ 連帯保証人になっていた場合は?
借金の調査では、亡くなった方がほかの人の連帯保証人になっていなかったかという点も問題になることがあります。
例えば、父が知人の事業資金について連帯保証人になっていた場合です。
父自身が借入れをしていなくても、保証契約に基づく債務が問題になる可能性があります。
通常の保証債務は、原則として相続の対象になります。
ただし、保証契約の種類や内容によって、相続される義務の範囲が異なる場合があります。
また、連帯保証人になっている事実が、必ずしも信用情報機関の開示結果に表示されるとは限りません。
そのため、契約書、金融機関からの通知、事業関係の資料などを確認する必要があります。
特に、亡くなった方が会社を経営していた場合や、親族の事業に関わっていた場合には、保証契約の有無にも注意したいところです。
⑪ 信用情報に借入れが載っていたら?
信用情報を開示した結果、借入れに関する情報が見つかった場合には、登録内容を確認します。
例えば、次のような事項です。
契約している金融機関や会社
契約の種類
借入れや契約の時期
返済状況
登録されている残高
延滞などの情報
ただし、信用情報に記載されている残高が、現在の正確な返済額と一致するとは限りません。
情報の登録時点や、その後の返済などによって金額が変動している可能性があるからです。
そのため、具体的な借入先が判明した場合には、必要に応じて契約内容や残債務の確認を行います。
また、借入れが完済されていても、一定期間は契約情報が信用情報機関に残っている場合があります。
信用情報に記載があることだけで、現在も返済義務が残っていると判断しないことが重要です。
⑫ 相続放棄を検討する場合は3か月の期限に注意
亡くなった方に借金がある可能性がある場合には、相続放棄を検討することがあります。
相続放棄は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。
例えば、父が亡くなり、自分が相続人になったことを知った場合です。
このとき、借金があるかどうか分からないからといって、何もしないまま長期間放置することは避けたいところです。
信用情報の開示には、一定の時間がかかります。
また、金融機関への照会や相続財産の調査にも時間がかかることがあります。
そのため、相続放棄を検討する可能性がある場合には、早い段階から調査を始めることが大切です。
⑬ 3か月以内に借金を調べきれない場合は?
相続財産を調査しても、借金の有無や金額がはっきりしない場合があります。
例えば、信用情報機関へ開示請求をしたものの、まだ回答が届いていない場合です。
また、借入先は判明したものの、残債務の確認に時間がかかる場合もあるでしょう。
このような場合には、家庭裁判所へ相続の承認または放棄の期間の伸長を申し立てる方法があります。
家庭裁判所が認めれば、相続を承認するか放棄するかを判断する期間を延ばすことができます。
ただし、自動的に延長されるわけではありません。
また、原則として熟慮期間内に申立てを行う必要があります。
そのため、期限が迫っている場合には、調査の結果を待ち続けるのではなく、期間伸長の申立ても検討することが大切です。
⑭ 後から借金が見つかったら相続放棄できる?
例えば、父が亡くなってから半年後に、突然、金融機関から借金の請求書が届いた場合です。
このとき、
「すでに3か月を過ぎているから、絶対に相続放棄できない」
というわけではありません。
裁判所の案内では、相続財産が全くないと信じ、かつ、そのように信じたことに相当な理由がある場合などには、相続財産の存在を認識した時から3か月以内に相続放棄の申述が受理されることもあると説明されています。
ただし、後から借金が見つかった場合には、必ずその時点から3か月が始まるという意味ではありません。
亡くなった当時の財産状況、相続人が何を知っていたか、どのような調査を行ったかなど、具体的な事情によって判断が異なります。
そのため、後から多額の債務が判明した場合には、早急に対応を検討する必要があります。
⑮ 相続放棄を考えている場合は財産の取扱いにも注意
借金の調査をしている間に、亡くなった方の預貯金を引き出したり、不動産を売却したりすることを考える場合もあるでしょう。
しかし、相続放棄を検討している段階では、相続財産の取扱いに注意が必要です。
民法では、相続財産の処分などによって、単純承認をしたものとみなされる場合が定められています。
例えば、亡くなった方の預貯金を自分の生活費などに使用した場合には、法定単純承認が問題になる可能性があります。
また、借金があるかもしれないからといって、すべての支払いを勝手に行うことも慎重に考える必要があります。
行為の内容や目的などによって法律上の評価が異なるためです。
相続放棄を検討している間は、財産調査を優先し、相続財産の処分に当たるような行為を安易に行わないことが大切です。
⑯ 借金を調べるときの進め方
亡くなった方の借金を調べる場合には、次のような順番で進めると整理しやすくなります。
1.亡くなった方の資料を確認する
通帳、郵便物、契約書、クレジットカード、返済予定表などを確認します。
2.銀行口座の取引履歴を確認する
定期的な引落しや借入先と思われる取引がないか調べます。
3.信用情報機関への開示を検討する
必要に応じてCIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターの信用情報を調べます。
4.判明した借入先へ確認する
借入先が分かった場合には、残債務や契約内容などを確認します。
5.信用情報に載らない債務も調べる
医療費、家賃、税金、個人間の借入れ、保証債務なども確認します。
6.プラスの財産とマイナスの財産を整理する
預貯金や不動産などの財産と、債務の状況を整理します。
7.相続放棄の期限を確認する
必要に応じて、相続放棄や期間伸長の申立てを検討します。
借金の調査は、一つの方法だけで完結するとは限りません。
複数の資料や照会結果を組み合わせて確認することが大切です。
まとめ
亡くなった方の借金は、通帳や郵便物などの確認に加え、信用情報機関への開示請求によって調べられる場合があります。
今回のポイントを整理すると、
相続では原則として借金も承継される
通帳や郵便物、契約書などを確認することが第一歩
CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センターで信用情報を調べられる場合がある
亡くなった方の信用情報は、一定の資格を持つ親族などが開示請求できる
信用情報に登録されていない借金や未払金もある
信用情報に何も記載されていなくても、債務がないとは断定できない
保証債務にも注意する必要がある
信用情報に記載された残高が、現在の正確な債務額とは限らない
相続放棄を検討する場合には、原則3か月の熟慮期間に注意する
調査が終わらない場合には、家庭裁判所への期間伸長の申立てを検討する
ということになります。
亡くなった方の借金が分からない場合、何から調べればよいのか迷うこともあるでしょう。
しかし、通帳や郵便物などを確認し、必要に応じて信用情報機関を利用することで、借入先や契約の手掛かりを得られることがあります。
一方で、すべての債務が信用情報に登録されているわけではありません。
信用情報の開示は借金調査の一つの方法であり、債務が存在しないことを証明する制度ではありません。
相続するか放棄するかを判断するためにも、期限に注意しながら、プラスの財産とマイナスの財産を確認することが大切です。
参考資料
