2026年10月2日金曜日

死後事務委任契約② 死後事務委任契約でできること・できないこと

 


死後事務委任契約でできること・できないこと|葬儀・解約・遺品整理はどこまで頼める?

前回は、「死後事務委任契約とは何か」についてご紹介しました。

死後事務委任契約は、自分が亡くなった後に必要となるさまざまな手続きを、生前にあらかじめ第三者へ依頼しておく契約です。

では実際に、

「どこまでお願いできるの?」

という点が気になるところだと思います。

葬儀や納骨、賃貸住宅の整理、携帯電話の解約など、幅広い事務を契約内容にすることができます。

一方で、相続財産の処分など、本来は遺言や相続手続きによって行うべきことまで自由にできるわけではありません。

今回は、死後事務委任契約で「できること」と「できないこと」を整理してみます。


死後事務委任契約は公正証書で作成します

死後事務委任契約は、法律上、公正証書でなければ成立しない契約ではありません。

しかし、実際に契約内容を実行するのは本人が亡くなった後です。その時には本人に契約内容や意思を確認することができません。

そのため、本人がどのような内容を希望し、誰に死後の事務を任せたのかを明確にしておくことが重要です。

弊所では、死後事務委任契約は原則として公正証書で作成します。

公証人が関与して契約内容を公正証書として残しておくことで、本人の意思や契約内容を明確にし、死亡後に受任者が実際の手続きを進める際にも契約の存在や内容を示しやすくなります。

ただし、公正証書を作成すれば死亡後のすべての手続きができるというわけではありません。

死亡届を提出できる人には法律上の制限がありますし、相続財産の処分など、本来遺言や相続手続きによって行うべき事項もあります。

そのため、死後事務委任契約では、「何を依頼するのか」「受任者にどこまで権限を与えるのか」を一つずつ整理して契約内容を決めておくことが大切です。


死後事務委任契約では幅広い事務を決められます

死後事務委任契約も契約ですので、強行法規や公序良俗に反しない範囲で、死亡後に必要となるさまざまな事務を契約内容として定めることができます。 

代表的なものを見てみましょう。

1.親族や関係者への連絡

本人が亡くなった際、

「この人には知らせてほしい」

という親族、友人、知人などをあらかじめ決めておくことができます。

誰に連絡するのか、連絡先はどこなのかを、生前に整理しておくことが重要です。

相続人がいる場合には、いずれ相続手続きとの関係でも連絡が必要になるため、推定相続人や親族との関係についても確認しておく必要があります。 

2.葬儀・火葬・納骨など

死後事務委任契約の代表的な内容が、葬儀や納骨に関する事務です。

例えば、

・葬儀会社への連絡
・葬儀の手配
・火葬に関する手続き
・納骨の手配
・寺院などへの連絡
・法要に関する手配

などが考えられます。

契約を作る際には、

葬儀の形式、規模、費用の上限、納骨方法などについても、できるだけ具体的に決めておくとよいでしょう。 

3.病院や高齢者施設の精算

亡くなった時に入院していたり、高齢者施設に入居していたりする場合には、

・入院費
・施設利用料
・その他の未払費用

などの精算が必要になることがあります。

こうした費用は相続債務になることがありますので、死後事務受任者が当然に自由に支払えるわけではありません。

そのため、死後事務委任契約の中で、どのような債務をどのように支払うのかをあらかじめ定めておくことが大切です。 

4.賃貸住宅の解約や遺品整理

一人暮らしの場合、亡くなった後の住居の整理も大きな問題になります。

賃貸住宅であれば、

・賃貸借契約に関する手続き
・室内の片付け
・遺品整理
・残置物の処理
・敷金などの精算

といった事務が必要になることがあります。

死後事務委任契約を作っておくことで、死亡後にこうした手続きを進めやすくなる場合があります。 

ただし注意したいのが、遺品の中に経済的価値のあるものが含まれている場合です。

価値のある時計、貴金属、美術品などは相続財産となる可能性があります。

本人が、

「これは○○さんに形見として渡してほしい」

と希望していても、財産的価値がある場合には、死後事務委任契約だけで処理するのではなく、遺言などとの組み合わせを検討する必要があります。 

5.電気・ガス・水道などの手続き

死亡後も、

・電気
・ガス
・水道

などの契約は残っています。

そのほか、

・携帯電話
・インターネット

などの通信契約もあります。

これらについても契約内容や支払方法を整理し、解約手続きを行うことが考えられます。 

ただし、事業者の利用規約によっては、死後事務受任者だけでは解約できない場合もあります。

その場合には相続人へ引き継ぐことになります。

6.SNS・メール・サブスクなどのデジタル関係

最近特に重要になっているのが、デジタル関係の死後事務です。

例えば、

・SNS
・メール
・ブログ
・クラウドサービス
・動画サービス
・サブスクリプションサービス

などがあります。

本人がどのサービスを利用しているのか分からなければ、死亡後に探すこと自体が難しくなります。

そのため、生前から利用サービスを一覧にしておくことも重要です。 

ただし、ここでも注意が必要です。

サービスごとに利用規約があり、代理人による解約やデータ削除が認められない場合があります。

また、本人のIDやパスワードを利用すれば何でもできるわけではなく、不正アクセス禁止法などにも注意する必要があります。 

7.ペットについての手配

一人暮らしでペットを飼っている方にとっては、

「自分が先に亡くなったら、この子をどうするのか」

も非常に重要な問題です。

死後事務委任契約では、

・誰に引き取ってもらうか
・引き取りまで誰が世話をするか
・飼育費用をどうするか
・引き取り予定者が引き取れなくなった場合にどうするか

などをあらかじめ検討しておくことができます。 

ただし、ペット自体に財産的価値がある場合や、引取先に財産を渡したい場合には、遺言や死因贈与など別の仕組みを検討する必要があります。


では、死後事務委任契約で「できないこと」は?

ここが特に重要です。

相続財産を自由に誰かへ渡すことはできません

例えば、

「亡くなったら預金300万円を友人に渡してください」

という内容は、単純な死後事務とは性質が違います。

誰に財産を相続させるのか、誰に遺贈するのかといった財産処分については、原則として遺言で定めるべき事項です。 

死後事務委任契約を使って、遺言制度を実質的に避けるような財産処分を行うことには注意が必要です。

持ち家を勝手に処分することもできません

本人所有の自宅は、死亡すると相続財産になります。

したがって、

「死亡したら死後事務受任者が自宅を売却する」

ということを、単純な死後事務として処理できるわけではありません。

持ち家の管理・処分は相続財産の問題となるため、相続人への承継や遺言などを含めて考える必要があります。 

死亡届は誰でも提出できるわけではありません

これも意外に重要です。

死後事務委任契約の受任者だからといって、当然に死亡届を提出できるわけではありません。

死亡届を提出できる人は戸籍法で定められており、同居の親族、その他の同居者、家主・地主・家屋や土地の管理人、親族、後見人・保佐人・補助人・任意後見人・任意後見受任者などが挙げられています。

したがって、単に死後事務を頼まれただけの親族でない第三者では、死亡届を提出できない場合があります。 

この点も、契約を作る段階で「誰が死亡届を提出する予定なのか」を確認しておく必要があります。


「死後事務委任契約を作れば全部解決」ではありません

死後事務委任契約は非常に便利な仕組みですが、

死後事務委任契約だけですべての問題を解決できるわけではありません。

例えば、

生前の財産管理
→ 財産管理契約

判断能力が低下した後
→ 任意後見契約

死亡後に財産を誰へ渡すか
→ 遺言

葬儀・納骨・住居整理など
→ 死後事務委任契約

というように、それぞれ役割があります。

その方の状況によって、これらを組み合わせることが大切です。 

大切なのは「何をしてほしいか」を具体的にしておくこと

死後事務委任契約では、

「死んだ後のことを全部お願いします」

というだけでは、実際に何をするのかが分かりません。

例えば、

誰に連絡するのか。
どんな葬儀にするのか。
どこに納骨するのか。
家の中の物をどうするのか。
携帯電話やSNSをどうするのか。
ペットをどうするのか。

一つひとつ具体的に確認して、契約内容に反映しておくことが重要です。

また、実際に死後事務を行うには費用も必要です。

契約だけ作っても、葬儀費用や遺品整理費用などを支払うお金がなければ事務を進められない可能性があります。

そのため、必要となる費用をどのように確保しておくかまで考えておく必要があります。


詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。

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