2026年10月8日木曜日

死後事務委任契約⑤ 死後事務委任契約の費用はどう準備する?預り金・葬儀費用・残金の扱い

 


死後事務委任契約の費用はどう準備する?預り金・葬儀費用・残金の扱い

死後事務委任契約を検討するとき、意外と大きなハードルになりやすいのが、「費用をどう準備するか」という問題です。

契約書を作る費用だけではありません。

実際に本人が亡くなった後には、

・葬儀
・火葬、納骨
・病院や施設の精算
・遺品整理
・賃貸住宅の明渡し
・公共料金などの精算

といった手続きに、実際のお金が必要になります。

そのため、

「死後事務をお願いしたいけれど、いくら準備しておけばいいのか分からない」

「まとまったお金を預ける必要があるなら、契約するのをためらってしまう」

と感じる方もいると思います。


死後事務委任契約では、「誰に何をお願いするか」だけでなく、「そのためのお金をどう準備するか」まで一緒に考えておくことが重要です。

今回は、死後事務に必要となる費用、預り金の考え方、費用が不足した場合や残った場合の扱いについてご紹介します。


死後事務には実際の費用がかかります

死後事務には、さまざまな実費が発生します。

例えば、

・葬儀会社へ支払う費用
・火葬、納骨にかかる費用
・遺品整理業者への費用
・賃貸住宅の明渡し費用
・未払いの病院代や施設利用料
・各種解約手続きに伴う費用

などで、かなりの費用がかかります。

死後事務委任契約を結んでいても、これらの費用を支払うためのお金がなければ、受任者が実際の手続きを進めることが難しくなります。

そのため、契約を作る段階で、どのくらいの費用が必要になりそうかを見積もっておくことが大切です。 

費用を準備する方法は主に2つあります

死後事務に必要な費用の準備方法としては、大きく分けて次の2つが考えられます。

1.生前に預り金として準備しておく

一つは、本人が生前に、死後事務に必要となる金銭を受任者に預けておく方法です。

例えば、

「葬儀、納骨、遺品整理などに使うためのお金として、あらかじめ一定額を預けておく」

という形です。

この方法であれば、本人が亡くなった後、受任者が契約に従って必要な費用を支払いやすくなります。

一方で、受任者が本人のお金を預かることになるため、預り金をどのように管理するのかを明確にしておくことが重要です。

預り金については、専用口座などを利用して、受任者自身の財産とは分けて管理することが考えられます。 

ほとんどの契約がこちらになります。


2.受任者が立て替えて、後から請求する

もう一つは、受任者がいったん死後事務に必要な費用を立て替え、後から相続人や相続財産清算人などへ請求する方法です。

ただし、この方法は受任者にとって大きなリスクがあります。

相続財産が十分になかったり、相続人から支払いを受けられなかったりすると、立て替えた費用を回収できない可能性があるためです。

また、葬儀や遺品整理などでは、数十万円単位の費用が必要になることもあり、受任者が自己資金で立て替えることを前提とするのは現実的でない場合があります。


そのため、死後事務委任契約では、受任者による立替えを前提にするのではなく、必要となる費用をあらかじめ見積もり、生前に預り金などの方法で資金を確保しておくことが重要です。


弊所では、受任者が死後事務費用を立て替えて後から請求することを前提とした契約は行っておらず、必要となる費用を事前に見積もったうえで、預り金を準備していただく方法を基本としています。


預り金はいくら準備すればいい?

必要となる金額は、その方がどのような死後事務を希望するかによって大きく変わります。

例えば、

葬儀を行うのか、直葬にするのか

お墓へ納骨するのか、別の方法を希望するのか

賃貸住宅に住んでいるのか

遺品がどのくらいあるのか

によって、必要となる費用は異なります。

そのため、

「死後事務だから一律○○万円」

と決めるのではなく、一つひとつの事務について費用を想定し、必要額を積み上げていくことが大切です。

預り金についても、死後事務ごとに必要となる費用を見積もっておくことが考えられます。 

病院代や施設利用料も考えておく

死亡時に病院へ入院していたり、高齢者施設へ入居していたりする場合には、未払いの費用が残っていることがあります。

これらは相続債務になることがあります。

そのため、死後事務委任契約を作る際には、

「未払いの病院代や施設利用料を、どの資金からどのように支払うのか」

についても考えておく必要があります。

受任者が無制限に立て替えることを前提にするのではなく、支払方法を契約の中で明確にしておくことが大切です。 

受任者への報酬も決めておきます

死後事務では、葬儀費用や遺品整理費用などの「実費」だけではなく、受任者へ支払う報酬についても決めておく必要があります。

報酬の定め方としては、

・事務ごとに報酬を定める
・着手金と報酬を分ける
・手数料方式
・時間に応じた方式

などが考えられます。 

大切なのは、

「どの仕事について、いくら支払うのか」

を契約時に明確にしておくことです。

本人が亡くなった後になってから報酬額を決めることはできません。

そのため、実費と受任者報酬を分けて考え、契約書に明確に定めておくことが重要です。

預り金が足りなくなったら?

十分に見積もったつもりでも、実際の死後事務では予定外の費用が発生することがあります。

例えば、

・遺品整理の量が想定より多かった
・賃貸住宅の原状回復費用が発生した
・未払いの施設利用料があった

といったケースです。

預り金が不足した場合には、相続人や相続財産清算人への請求などを検討することになります。 

そのため、契約を作る際には、

「預り金が不足した場合にどうするのか」

まで定めておくことが重要です。

逆に、預り金が余ったらどうなる?

では、預けていたお金が余った場合はどうなるのでしょうか。

死後事務をすべて終えた結果、預り金に残額が出ることがあります。

この残額は、当然に死後事務受任者のものになるわけではありません。

原則として、相続人などへ返還することを検討する必要があります。 

そのため、

「死亡後の事務が終わった後、残ったお金を誰に渡すのか」

についてもあらかじめ考えておく必要があります。


相続人がいない場合はさらに注意が必要です

身寄りがなく、相続人がいない場合には、残った預り金や財産を誰へ引き渡すのかという問題もあります。

相続人が不存在の場合には、相続財産清算人を選任して引き継ぐなど、別の手続きが必要になることがあります。 

そのため、身寄りがない方の死後事務では、

死後事務委任契約だけではなく、遺言も一緒に作成する

ことが重要になる場合があります。


遺言執行者と死後事務受任者を連携させことも重要

死後事務委任契約と遺言を両方作成する場合には、

遺言執行者と死後事務受任者の連携も重要になります。

死後事務が終わった後に残った財産を、誰へ引き継ぐのか。

死後事務に必要な費用を、どのように確保するのか。

こうした点まで含めて、

遺言と死後事務委任契約を一体的に考える

ことで、本人が亡くなった後の手続きをよりスムーズに進めやすくなります。 


預り金は分別して管理することが大切です

受任者が死後事務のためのお金を預かる場合には、そのお金が誰のものなのか分からなくならないようにしておく必要があります。

そのため、

受任者自身のお金と混ぜず、分別して管理する

ことが重要です。

どの費用にいくら使ったのかを記録し、死後事務終了後には処理状況を報告し、残金があれば返還するという流れをあらかじめ考えておく必要があります。 


死後事務は「契約」と「お金」の両方を準備する

死後事務委任契約で大切なのは、

「何をしてほしいか」

だけではありません。

実際にその事務を行うためには、

「その費用をどう準備するか」

も同じくらい重要です。

葬儀、納骨、住居の整理、遺品整理など、死亡後にはさまざまな費用が発生します。

そのため、

必要な事務を決める
↓
必要な費用を見積もる
↓
費用の準備方法を決める
↓
不足や残額が出た場合の処理を決める

というところまで、生前に整理しておくことが大切です。


なお、死後事務委任契約は、本人が亡くなった後に実行される契約です。
そのため、契約内容や本人の意思を明確にしておくという意味でも、当事務所では原則として公正証書で作成しています。



詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。