見守り契約とは?一人暮らしの高齢者が元気なうちに備える方法
「死後事務委任契約を作っておけば、亡くなった後は安心」
確かに、死後事務委任契約を準備しておくことで、葬儀や納骨、住居の整理など、死亡後の手続きをあらかじめ依頼しておくことができます。
しかし、もう一つ考えておきたいことがあります。
本人が亡くなったことを、受任者がどうやって知るのか。
死後事務委任契約を作っていても、受任者が本人の死亡を知らなければ、死後事務を始めることができません。
そこで、生前から定期的に連絡を取り、本人の生活状況や体調の変化を確認していく方法として利用されるのが、見守り契約です。
死後事務の実務でも、本人の死亡を把握するため、定期的な連絡方法を決めたり、見守り契約を利用したり、ケアマネジャーや高齢者施設などと連携することが考えられています。
今回は、見守り契約とはどのような契約なのか、どんな方に向いているのかをご紹介します。
見守り契約とは?
見守り契約とは、本人と定期的に連絡を取り、
「元気に生活しているか」
「生活状況に変化がないか」
「何か困っていることはないか」
などを確認するための契約です。
例えば、
・定期的に電話やメールで連絡する
・必要に応じて面談する
・生活状況や体調の変化を確認する
・将来の財産管理や任意後見が必要になっていないか確認する
・緊急時の連絡先を整理する
といった内容が考えられます。
ただし、「見守り契約」という名前の契約について、法律で一律に内容が決められているわけではありません。
誰が、どのくらいの頻度で、どのような方法で確認するのかを、本人と受任者との契約で決めておくことになります。
見守り契約は「まだ元気なうち」から利用できます
任意後見契約は、将来、本人の判断能力が低下したときに備える制度です。
一方、見守り契約は、
まだ本人が元気に生活している段階
から利用することができます。
例えば、
「今は一人で何でもできるけれど、将来が少し心配」
「子どもが遠方に住んでいる」
「親族に頻繁に連絡するのは気が引ける」
「何かあったときに相談できる人を決めておきたい」
という段階です。
本人が元気なうちから定期的に連絡を取っておけば、生活状況の変化にも気付きやすくなります。
なぜ「定期的な連絡」が大切なの?
高齢になると、昨日まで普通に生活していた方でも、
・入院した
・施設へ入所した
・転倒した
・認知機能が低下してきた
・一人で銀行や役所の手続きをするのが難しくなった
といった変化が起こることがあります。
本人から連絡がなければ、周囲がその変化に気付けない場合もあります。
そこで、例えば、
「毎月1回電話する」
「一定期間連絡が取れなければ確認する」
といったルールをあらかじめ決めておきます。
見守り契約の意味は、単に「電話をすること」ではありません。
本人の状況が変化したときに、次の支援へつなげるきっかけを作ることにもあります。
見守り契約だけで財産管理はできません
ここは重要です。
見守り契約を結んだからといって、受任者が当然に、
・本人の預金を引き出す
・本人の代わりに契約を締結する
・不動産を処分する
・施設入所契約を本人に代わって行う
ことができるわけではありません。
見守り契約は、基本的には本人の状況を確認するための契約です。
財産管理や具体的な法律行為を代理してもらう必要が出てきた場合には、別途、財産管理等委任契約などを検討することになります。
判断能力が低下したら任意後見へ
本人の身体が不自由になっただけで、判断能力は十分にある場合には、財産管理等委任契約などによって支援することが考えられます。
さらに認知症などによって判断能力が低下してきた場合には、あらかじめ締結していた任意後見契約を利用することを検討します。
そのため、将来に備える仕組みは、
というように、本人の状態に応じて役割が変わっていくことがあります。
見守り契約は、その一番最初の段階に位置する契約と考えると分かりやすいでしょう。
死後事務委任契約とのつながり
見守り契約は、死後事務委任契約との相性もいい契約です。
死後事務委任契約では、本人が死亡した後に、
・葬儀
・納骨
・病院や施設の精算
・住居の整理
・各種契約の解約
などを行います。
しかし、そのためにはまず、
本人が亡くなったことを受任者が知る必要があります。
生前から見守り契約によって定期的に連絡を取っていれば、本人の状況を把握しやすくなります。
また、本人が高齢者施設へ入所した場合には、本人の同意のもと、施設やケアマネジャーなどとの連絡体制を整えておくことも考えられます。死後事務の実務でも、こうした連携が検討されています。
見守り契約はどんな人に向いている?
例えば、次のような方が考えられます。
一人暮らしをしている方
身近に頼れる親族がいない方
子どもや親族が遠方に住んでいる方
親族にできるだけ負担をかけたくない方
将来、任意後見や死後事務を利用したいと考えている方
特に、「今は元気だから、まだ任意後見までは必要ない」という方でも、見守り契約であれば元気なうちから始めることができます。
見守り契約をしていれば孤独死を必ず防げる?
これは、そうとは限りません。
見守り契約は、本人の生活状況を継続的に確認する仕組みですが、24時間本人を監視する契約ではありません。
定期連絡の間に突然体調が悪化する可能性もあります。
そのため、
「見守り契約があれば絶対に何も起きない」
という制度ではありません。
大切なのは、定期的な連絡だけではなく、
・緊急連絡先
・親族
・ケアマネジャー
・高齢者施設
・医療機関
など、その方の状況に応じた連絡体制を考えておくことです。
元気なうちから関係を作っておくことにも意味があります
見守り契約には、もう一つ大きな意味があります。
任意後見や死後事務は、本人にとって非常に大切なことを任せる契約です。
いきなり、
「将来、自分のお金を管理してください」
「亡くなった後のことを全部お願いします」
と契約することに不安を感じる方もいるでしょう。
見守り契約によって、生前から定期的に連絡を取り、
どのような人なのか
きちんと連絡してくれるのか
安心して相談できるのか
を確認しながら関係を築いていくことにも意味があります。
将来の備えは一つの契約だけではありません
将来の生活を考えるとき、
「任意後見契約だけ作れば安心」
「死後事務委任契約だけ作れば安心」
とは限りません。
本人の状況によって、
元気なうち
→ 見守り契約
判断能力はあるが、財産管理などが難しくなったとき
→ 財産管理等委任契約
判断能力が低下したとき
→ 任意後見契約
亡くなった後
→ 死後事務委任契約
という形で、それぞれの契約を組み合わせることがあります。
大切なのは、最初からすべて契約することではなく、
「今、自分には何が必要なのか」
を考えながら準備していくことです。
