2026年10月14日水曜日

遺産承継② 亡くなった人の銀行口座はどうなる?預貯金の相続手続きと払戻し方法

 


亡くなった人の銀行口座はどうなる?預貯金の相続手続きと払戻し方法

家族が亡くなった後、

「銀行口座が凍結されると聞いたけれど、預金はどうなるの?」

「葬儀費用を支払いたいけれど、亡くなった父の口座から引き出せる?」

「銀行の相続手続きには、どんな書類が必要なの?」

といった疑問を持つ方も多いと思います。


前回は、相続登記や預貯金の手続きなどをまとめて支援する「遺産承継業務」についてご紹介しました。


今回は、その中でも特にご相談が多いテーマの一つである、亡くなった方の銀行口座と預貯金の相続手続きについて説明します。


亡くなった人の銀行口座は凍結される?

銀行などの金融機関が口座名義人の死亡を把握すると、原則としてその口座の入出金などが制限されます。

これが一般に「口座凍結」と呼ばれるものです。

口座が凍結されると、通常のATMでの出金や振込などができなくなる場合があります。

また、口座振替による公共料金などの支払いにも影響する可能性があります。

そのため、亡くなった方の口座から引き落とされていた費用がある場合には、支払方法の変更が必要になることもあります。

死亡した瞬間に銀行口座が凍結されるの?

ここは誤解されやすいところです。

人が亡くなった瞬間に、すべての銀行口座が自動的に凍結されるわけではありません。

一般的には、金融機関が口座名義人の死亡を把握した段階で、取引が制限されます。

そのため、亡くなった直後には、まだ口座が利用できる状態になっている場合もあります。

しかし、利用できるからといって、相続人が自由に預金を引き出してよいというわけではありません。

亡くなった方の預金は相続財産となります。

相続人の一人が他の相続人に無断で引き出してしまうと、後の遺産分割などで問題になる可能性があります。

特に、通帳やキャッシュカードを預かっていた場合でも、死亡後の取扱いには注意が必要です。


銀行口座が凍結されたら預金はどうなる?

口座が凍結されたからといって、預金がなくなるわけではありません。

亡くなった方の預貯金は相続財産として扱われ、必要な相続手続きを経て、相続する方へ払い戻されることになります。

通常は、相続人の確認や遺言書の有無、遺産分割の内容などを確認したうえで、金融機関所定の手続きを進めます。

銀行によって必要書類や手続き方法が異なる場合があるため、まずは取引のあった金融機関へ確認することが大切です。


預貯金の相続手続きはどのように進める?

一般的には、次のような流れになります。

1.取引のある金融機関を確認する

まず、亡くなった方がどこの銀行に口座を持っていたのかを確認します。

通帳、キャッシュカード、郵便物などが手掛かりになります。

最近では通帳を発行しない口座やインターネット銀行もあるため、家族が取引先を把握していない場合もあります。

2.金融機関へ相続が発生したことを連絡する

取引のある金融機関へ連絡し、相続手続きについて案内を受けます。

必要となる書類や申請方法は、金融機関や相続の状況によって異なります。

3.戸籍などの必要書類を準備する

一般的な相続手続きでは、

  • 亡くなった方の戸籍・除籍・改製原戸籍

  • 相続人の戸籍

  • 相続人の印鑑証明書

  • 遺産分割協議書(必要な場合)

  • 遺言書(ある場合)

  • 金融機関所定の相続手続書類

などが必要になります。

ただし、遺言書の内容や相続関係によって必要書類は変わります。

すべてのケースで同じ書類が必要になるわけではありません。

4.金融機関に書類を提出する

必要書類をそろえたら、金融機関へ提出します。

金融機関での確認や審査が終わると、相続手続きに基づいて預貯金の払戻しなどが行われます。

手続きが完了するまでには一定の日数がかかることがあります。


遺言書がある場合とない場合では手続きが違います

預貯金の相続手続きでは、遺言書があるかどうかも重要です。

遺言書がある場合

例えば、

「A銀行の預金を長男に相続させる」

という遺言がある場合です。

この場合は、遺言の内容を確認し、その内容に応じた手続きを行うことになります。

遺言執行者が指定されている場合には、その権限や遺言内容に応じて遺言執行者が手続きを行うこともあります。


遺言書がない場合

相続人が複数いる場合には、相続人全員で預貯金をどのように分けるか協議することがあります。

その内容に応じて遺産分割協議書を作成したり、金融機関所定の書類に相続人全員が署名・押印したりして手続きを進めます。

そのため、銀行に預金が残っていることが分かっていても、相続人の確認や必要書類の準備に時間がかかることがあります。


遺産分割が終わる前でも預金を引き出せる?

ここは特に知っておきたいところです。

以前は、相続人が複数いる場合、遺産分割前の預貯金の払戻しについて制約がありました。

しかし、2019年7月1日から、「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」が設けられています。

この制度によって、一定の範囲であれば、相続人が単独で預貯金の払戻しを受けることができます。

例えば、葬儀費用や当面の生活費など、遺産分割が終わる前にお金が必要になる場合があります。

このような資金需要に対応するための制度です。


いくらまで引き出せるの?

家庭裁判所の判断を経ずに金融機関の窓口で払戻しを受ける場合、上限額は次の計算式で求めます。

相続開始時の預貯金額 × 3分の1 × 払戻しを求める相続人の法定相続分

ただし、同一の金融機関につき150万円が上限です。

例えば、

亡くなった方のA銀行の普通預金残高が600万円で、払戻しを希望する相続人の法定相続分が2分の1だった場合、

600万円 × 1/3 × 1/2

= 100万円

となります。

この例では、他の相続人の同意を得なくても、所定の手続きを経て100万円まで払戻しを受けることができます。

なお、この計算は口座ごとの預貯金額を基準に行い、同じ金融機関に複数の口座がある場合でも、その金融機関全体で150万円という上限があります。

150万円を超える払戻しはできないの?

遺産分割前の払戻しには、もう一つ家庭裁判所を利用する方法があります。

遺産分割の審判や調停が申し立てられている場合に、一定の要件を満たせば、家庭裁判所が預貯金債権の仮分割の仮処分を認めることがあります。

この方法は、金融機関の窓口で行う150万円を上限とする制度とは異なります。

ただし、家庭裁判所への申立てが必要であり、必ず希望する金額の払戻しが認められるわけではありません。

また、遺産分割前に払い戻された預貯金は、最終的な遺産分割との関係でも考慮する必要があります。

単に自由に使えるお金が増えるという制度ではありません。


複数の銀行に口座がある場合は?

亡くなった方が、

A銀行

B銀行

C信用金庫

ゆうちょ銀行

など、複数の金融機関に口座を持っていることもあります。

その場合、原則としてそれぞれの金融機関で相続手続きを行う必要があります。

金融機関によって書類や手続き方法が違うため、何度も確認したり、書類を提出したりすることになります。

特に相続人が遠方に住んでいる場合や、平日に銀行へ行くことが難しい場合には、負担が大きくなりやすいところです。


法定相続情報一覧図を利用すると便利な場合があります

複数の金融機関で手続きをする場合には、法定相続情報証明制度が役立つことがあります。

これは、戸籍などを基に法定相続人の関係を一覧図にし、法務局で認証を受ける制度です。

認証された法定相続情報一覧図の写しを利用することで、金融機関に戸籍一式を何度も提出する負担を軽減できる場合があります。

ただし、法定相続情報一覧図があれば、すべての必要書類が不要になるわけではありません。

また、被相続人や相続人が外国籍で、必要な戸除籍謄抄本を提出できない場合など、制度を利用できないケースもあります。

利用できるかどうかは、相続関係や金融機関の取扱いを確認する必要があります。


司法書士に預貯金の相続手続きを依頼できる?

司法書士には、相続登記だけでなく、預貯金の相続手続きについても相談できます。

例えば、

「父が亡くなったけれど、銀行が何行もある」

「戸籍をどこまで集めればいいのか分からない」

「相続人全員の書類をそろえるのが大変」

「不動産の相続登記も一緒にお願いしたい」

という場合です。

相続人からの委任に基づき、紛争性のない範囲で、戸籍収集や預貯金の相続手続きなどを支援できる場合があります。

もちろん、相続人間で遺産の分け方について争いがある場合に、司法書士が一方の相続人を代理して遺産分割交渉を行うことはできません。

そのような場合には、弁護士への相談が必要になることがあります。


相続登記と預貯金の手続きをまとめて依頼する方法もあります

亡くなった方に不動産と預貯金の両方がある場合には、

不動産の相続登記

と

預貯金の相続手続き

をまとめて依頼することも考えられます。

相続人の確認や戸籍の収集など、共通する準備もあります。

相続手続き全体を整理したうえで進めることができるため、相続人自身が複数の窓口で一から手続きを進める負担を軽減できる場合があります。

こうした業務が、前回ご紹介した「遺産承継業務」です。


預貯金の相続手続きをお考えの方へ

松岡司法書士事務所では、預貯金の相続手続きや遺産承継業務、相続登記などのご相談を承っています。

「亡くなった親の銀行口座を解約したい」

「複数の銀行の手続きをまとめてお願いしたい」

「戸籍の収集から任せたい」

「相続登記と預貯金の手続きを一緒に進めたい」

といった段階からでもご相談いただけます。

ご相談内容を確認し、必要となる手続きや書類についてご案内します。

相続手続きは、必ずしもすべてをご自身で進める必要はありません。

銀行の相続手続きにお困りの場合には、司法書士への相談もご検討ください。

松岡司法書士事務所

芦屋市・西宮市・神戸市を中心に対応

相続登記・遺産承継業務・預貯金の相続手続きなどのご相談を承っています。

初回相談は無料です。

ご自宅などへの出張相談にも対応しています。メールからのお問い合わせも受け付けています。

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