相続人が海外に住んでいたら?日本の不動産の名義変更はどうする?
父親が亡くなり、実家の相続登記をすることになった。
相続人は母親と子ども2人。
実家は母親が相続することで話がまとまりそう。
ところが、一つ問題が……。
「そういえば、弟はアメリカに住んでいるんだけど、どうするの?」
「遺産分割協議のために日本へ帰ってきてもらわないといけない?」
「海外に住んでいるから、印鑑証明書も取れないんじゃない?」
そんな疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
実は、相続人の中に海外在住の方がいる場合、通常の相続登記とは少し違う書類が必要になることがあります。
でも、ご安心ください。
相続人が海外に住んでいても、日本に帰国せずに相続登記の手続きを進めることは可能です。
今回は、海外在住の相続人がいる場合の遺産分割協議や相続登記について、分かりやすくご紹介します。
海外に住んでいても相続人になる?
まず、ここは心配ありません。
日本国外に住んでいるという理由だけで、相続人ではなくなることはありません。
例えば、父親が亡くなり、相続人が母親と長男・次男だった場合。
次男がアメリカに住んでいても、相続人であることに変わりはありません。
遺言書などがなく、遺産分割協議によって不動産を誰が相続するか決める場合には、原則として相続人全員の合意が必要です。
海外に住んでいるという理由で、その相続人を遺産分割協議から除くことはできません。
では、海外に住んでいる相続人は、どのように協議に参加すればいいのでしょうか?
遺産分割協議のために日本へ帰国する必要はある?
必ずしも帰国する必要はありません。
遺産分割協議は、相続人全員が同じ場所に集まらなければできないというものではありません。
例えば、日本にいる家族と海外に住んでいる相続人が、電話やオンライン通話などで話し合うこともできます。
そして、全員が遺産分割の内容に合意したら、遺産分割協議書を作成します。
海外在住の相続人には、その協議書を送付し、必要な署名証明などを取得してもらう方法があります。
ただし、海外在住の方の場合には、日本に住んでいる相続人とは違う書類が必要になることがあります。
海外に住んでいると印鑑証明書が取れない?
ここが今回の大切なポイントです。
通常、遺産分割協議書を使って相続登記をする場合には、相続人の印鑑証明書が必要になります。
ところが、海外へ転出し、日本の住民登録を抹消している方は、通常、日本の市区町村で印鑑証明書を取得することができません。
「それじゃあ、遺産分割協議書を作れないの?」
と思われるかもしれません。
でも、方法があります。
日本の印鑑証明書の代わりに「署名証明書(サイン証明書)」を利用する方法です。
署名証明書(サイン証明書)って何?
署名証明書とは、書類に記載された署名が本人によるものであることを証明する書類です。
海外在住の日本人の場合、現地の日本大使館や総領事館などで取得できます。
例えば、アメリカに住んでいる弟が、日本から送られてきた遺産分割協議書に署名する場合です。
日本の在外公館で、領事の面前で署名することにより、その署名が本人によるものであることの証明を受けられます。
署名証明には、主に次の2種類があります。
① 遺産分割協議書などと一緒に綴じる形式
領事の面前で遺産分割協議書に署名し、その書類と署名証明書を綴り合わせる方式です。
② 署名そのものを証明する形式
署名証明書を単独で発行してもらう方式です。
どちらの形式が必要なのかは、提出する書類や手続きの内容によって異なります。
大切なのは、遺産分割協議書に先に署名してしまわず、必要な証明の形式を確認しておくことです。
また、在外公館が遠方にあるなどの事情によっては、現地の公証人による署名証明を利用できる場合もあります。
「在留証明書」が必要になる場合も
もう一つ、海外在住の相続人に関係する書類があります。
それが「在留証明書」です。
在留証明書とは、海外に住んでいる日本人について、現地の住所などを日本の在外公館が証明する書類です。
日本に住んでいる方なら、通常は住民票を取得できます。
しかし、海外に住んでいて日本に住民登録がない場合には、日本の住民票を取得できません。
そこで、住所を証明する書類として在留証明書を利用することがあります。
例えば、アメリカ在住の長男が日本の土地を相続し、自分の名義に変更する場合です。
この場合、長男の海外住所を証明するために、在留証明書などが必要になります。
ただし、海外在住の相続人がいるからといって、全員について必ず在留証明書が必要になるわけではありません。
誰が不動産を取得するのか、どのような登記をするのかによって、必要書類は異なります。
海外在住者が不動産を相続する場合には、もう一つ注意点が!
2024年4月1日から、海外に住所がある方が新たに不動産の所有権の登記名義人となる場合には、国内連絡先に関する情報を登記する制度が始まっています。
例えば、アメリカに住んでいる長男が、日本の実家を相続して自分の名義にする場合です。
この場合、日本国内の連絡先となる人の氏名や住所などを、登記申請の際に届け出る必要があります。
なお、日本国内に連絡先となる人がいない場合には、その旨を登記することもできます。
海外に住んでいる方が不動産の所有者になる場合は、住所の証明だけでなく、国内連絡先についても確認が必要なのです。
海外で外国籍を取得していたら?
ここも注意しておきたいところです。
例えば、日本で生まれ育った方が海外に移住し、その後、外国籍を取得している場合です。
外国籍だからという理由だけで、日本の不動産を相続できなくなるわけではありません。
ただし、現在の国籍や住所、相続関係などによって、必要となる証明書類が異なる場合があります。
外国籍の方については、現地の公証人が作成した書類や、住所を証明する現地の公的書類などが必要になることもあります。
外国語で作成された書類については、日本語の訳文が必要になる場合もあります。
そのため、海外在住の日本人なのか、外国籍の方なのかによって、事前に確認する内容が変わってきます。
相続登記の期限は海外在住者にも適用される?
はい。適用されます。
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
日本国内の不動産を相続した場合には、相続人が海外に住んでいても原則として義務化の対象になります。
相続によって不動産を取得したことを知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、2024年4月1日より前から相続による取得を知っていた不動産については、原則として2027年3月31日までが期限となります。
「海外に住んでいるから、日本の相続登記の義務は関係ない」
というわけではありません。
海外在住の方がいる場合には、署名証明書の取得や国際郵便での書類のやり取りに時間がかかることもあります。
早めに準備しておくことが大切です。
海外在住の相続人がいる場合、まず何をする?
相続人の中に海外在住の方がいる場合には、次の点を確認してみましょう。
相続人が誰なのか、戸籍などで確認する
海外在住の相続人の現在の住所や国籍を確認する
遺言書が残されていないか確認する
誰が不動産を相続するのか話し合う
署名証明書や在留証明書などが必要か確認する
必要な書類を準備し、相続登記を進める
特に、海外在住の相続人に書類を送る場合は、どの書類に、どのような方法で署名してもらう必要があるのかを先に確認しておくことが大切です。
書類を送った後になって証明の形式が違っていたことが分かると、再度手続きをお願いしなければならない場合もあります。
まとめ 相続人が海外に住んでいても、相続登記はできます!
相続人の一人が海外に住んでいる。
日本の印鑑証明書が取得できない。
遺産分割協議のために帰国してもらうことも難しい。
そんな場合でも、相続登記を進める方法はあります。
海外在住の日本人であれば、日本の印鑑証明書に代わる署名証明書や、住所を証明する在留証明書などを利用できる場合があります。
また、必要な手続きを整えれば、日本へ帰国せずに相続登記を進めることも可能です。
「兄弟が海外に住んでいる」
「遺産分割協議書に署名してもらいたい」
「相続人が海外在住で、どんな書類が必要か分からない」
そんな場合は、まず相続関係と必要書類を確認するところから始めましょう。
海外在住だからといって、相続手続きをあきらめる必要はありません。
