相続人の住所が分からない!戸籍の附票で調べる方法と海外移住者への対応
「弟とは30年以上会っていない。どこに住んでいるのかも分からない」
「父の相続手続きを始めたいけれど、妹の連絡先が分からない」
「兄は昔アメリカへ移住したらしいけれど、その後どうしているのか分からない」
相続手続きを進めようとしたとき、このような問題が生じることがあります。
相続人全員の合意が必要な遺産分割協議では、連絡先の分からない相続人がいると、手続きが進まなくなることがあります。
しかし、住所が分からないからといって、すぐに行方不明と判断する必要はありません。
戸籍や戸籍の附票などを調べることで、現在の住所につながる情報を確認できる場合があります。
今回は、相続人の住所を調べる方法と、海外へ移住した相続人がいる場合の対応について整理します。
① 相続人の住所が分からなくても、戸籍から調べられる?
例えば、父が亡くなり、相続人が長男・次男・長女の3人だったとします。
長男と長女は連絡を取り合っていますが、次男とは20年以上交流がありません。
次男の電話番号も住所も分からず、手紙を送ることもできない状況です。
このような場合、まず確認したいのが戸籍関係の書類です。
相続手続きでは、誰が相続人になるのかを確認するために、原則として亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めます。
その戸籍をたどることで、次男が結婚して別の戸籍に移っていることや、転籍していることなどが分かる場合があります。
そして、現在の本籍地が確認できれば、そこから住所を調べる手掛かりが得られることがあります。
その際に利用する書類の一つが、「戸籍の附票」です。
② 戸籍の附票とは?
戸籍の附票とは、戸籍に記載されている方の住所の履歴などを記録したものです。
戸籍は、出生や婚姻、死亡などの身分関係を記録するものです。
一方、戸籍の附票には、住民登録に基づく住所の情報が記載されています。
例えば、
兵庫県神戸市
大阪府大阪市
東京都世田谷区
というように転居していた場合、その戸籍の附票に住所の履歴が記録されていることがあります。
この書類は、現在の住所を確認するための重要な資料になります。
ただし、戸籍の附票は、その戸籍が作られてからの住所履歴を記録するものです。
出生から現在までのすべての住所が、必ず1通の戸籍の附票に記載されているわけではありません。
婚姻や転籍などによって戸籍が変わっている場合には、以前の戸籍の附票も確認する必要があることがあります。
③ 戸籍の附票はどこで取得する?
戸籍の附票は、原則として本籍地の市区町村役場で取得します。
例えば、現在の本籍地が神戸市にある方については、神戸市で戸籍の附票を取得することになります。
なお、2024年3月1日から戸籍証明書の広域交付制度が始まっています。
この制度により、一定の戸籍証明書は本籍地以外の市区町村でも取得できるようになりました。
ただし、注意点があります。
戸籍の附票は、広域交付の対象ではありません。
そのため、戸籍謄本を取得できたからといって、同じ窓口で他の市区町村の戸籍の附票まで取得できるとは限りません。
本籍地の市区町村に対し、窓口や郵送などで請求することになります。
④ 兄弟姉妹の戸籍の附票を勝手に取得できる?
ここは注意が必要です。
「兄弟なのだから、当然に戸籍の附票を取得できるのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、兄弟姉妹という関係だけで、相手の戸籍や戸籍の附票を無条件に請求できるわけではありません。
原則として、本人やその配偶者、直系尊属・直系卑属などとは取扱いが異なります。
ただし、相続手続きなどで正当な理由がある場合には、第三者請求として取得が認められることがあります。
例えば、
「父が亡くなり、相続人である弟と遺産分割協議をする必要があるが、現在の住所が分からない」
という場合です。
このような請求では、
誰が亡くなったのか
請求者と対象者がどのような相続関係にあるのか
どのような相続手続きに必要なのか
なぜ住所を確認する必要があるのか
などを具体的に説明し、戸籍などの資料を提示する必要があります。
請求できるかどうかは、法令上の要件や提出資料に基づいて判断されます。
単に「兄弟の住所を知りたい」という理由だけでは、取得できない場合があります。
⑤ 戸籍の附票に住所が載っていない場合は?
戸籍の附票を取得しても、現在の住所まで確認できない場合があります。
例えば、次のようなケースです。
婚姻や転籍によって戸籍が変わっている
古い戸籍の附票が保存期間の関係ですでに廃棄されている
国外へ転出している
住所の異動が適切に届け出られていない
このような場合には、以前の戸籍の附票や住民票の除票など、取得可能な資料を確認していきます。
ただし、古い戸籍の附票が廃棄されている場合などには、すべての住所履歴をたどれるとは限りません。
また、戸籍の附票に住所が記載されていても、本人が実際にその場所に住んでいるかどうかは別の問題です。
書類から住所が分かった場合には、次に本人と連絡を取れるかを確認する必要があります。
⑥ 海外に移住している場合はどうなる?
では、相続人が海外へ移住している場合はどうでしょうか。
例えば、
「兄は30年前にアメリカへ移住した」
「最後に連絡があったのは20年前」
「現在の住所も電話番号も分からない」
というケースです。
このような場合、戸籍の附票などに国外転出に関する情報が記録されていることがあります。
例えば、国外へ転出した事実や転出時期などを確認できる場合があります。
ただし、戸籍の附票を取得すれば、海外での現在の住所まで必ず分かるわけではありません。
海外へ転出した後、日本の住民登録とは別に、現地で何度も転居している可能性もあります。
したがって、国外転出に関する記録は重要な手掛かりになりますが、それだけで現在の所在が判明するとは限りません。
⑦ 海外へ移住した相続人を調べる方法はある?
海外在住の日本人については、一定の条件を満たす場合、**外務省の「所在調査」**という制度を利用できることがあります。
外務省では、海外に在留している可能性が高く、長期間にわたり所在が確認されていない日本人について、親族からの依頼による所在調査を実施しています。
この制度には、主に次のような条件があります。
調査対象者が日本国籍を有していること
生存していると見込まれること
原則として配偶者や3親等内の親族からの依頼であること
長期間、おおむね半年以上所在が確認できないこと
調査対象となる国や地域を特定できること
事前に親族や知人などへの確認を行っていること
例えば、アメリカへ移住した兄弟と長年連絡が取れない場合などには、この制度の利用を検討できる可能性があります。
ただし、調査を依頼したからといって、必ず住所が分かるわけではありません。
また、外務省が連絡先を確認できた場合でも、個人情報保護の観点から、原則として本人の同意を得たうえで依頼者への情報提供が行われます。
本人の同意が得られず、連絡先が通知されない場合もあります。
なお、対象者が外国籍を取得して日本国籍を失っている場合には、この所在調査の対象外となります。
詳しくは、外務省の案内で確認できます。
⑧ 海外に住んでいても、遺産分割協議に参加できる?
海外に住んでいる相続人と連絡が取れれば、日本へ帰国してもらわなくても遺産分割協議を進められる場合があります。
相続人全員が一か所に集まる必要はありません。
ただし、海外在住の相続人については、遺産分割協議書に添付する書類などが国内在住者と異なる場合があります。
例えば、日本国籍の方が海外に居住し、日本国内に住民登録がない場合です。
この場合、日本の印鑑証明書を取得できないことがあります。
そこで利用されるのが、**日本大使館や総領事館などが発行する「署名証明(サイン証明)」**です。
署名証明は、日本の印鑑証明に代わるものとして、遺産分割協議書などに利用されることがあります。
また、海外での住所を証明するために「在留証明」が必要になる場合もあります。
ただし、署名証明を取得する際には、原則として本人が在外公館へ出向き、領事の面前で署名する必要があります。
国籍や居住国などによって利用できる証明方法は異なりますので、事前に手続先へ確認することが大切です。
⑨ 海外にいることが分かっていても、連絡が取れなければ?
例えば、
「アメリカにいることは分かっている」
「昔の住所に手紙を送ったが、宛先不明で返ってきた」
「親族にも聞いたが、現在の住所を知っている人がいない」
という場合です。
このようなときは、確認できる情報を整理し、可能な範囲で所在調査を行うことになります。
ただし、海外に住んでいるというだけで、その相続人を遺産分割協議から除外することはできません。
また、海外にいる相続人について、ほかの相続人が勝手に署名したり、同意したものとして扱ったりすることもできません。
所在調査を行っても居場所が分からず、遺産分割協議を進められない場合には、不在者財産管理人などの制度を検討することになります。
ただし、不在者財産管理人の選任には法律上の要件があり、家庭裁判所が事情を確認して判断します。
海外にいることと、法律上の不在者に当たることは、必ずしも同じではありません。
⑩ 住所調査を行った記録も残しておく
相続人と連絡が取れない場合には、調査した経緯を整理しておくことも大切です。
例えば、
戸籍や戸籍の附票を取得した日
住民票の除票などを確認した結果
親族に問い合わせた内容
最後に分かっている住所
手紙を発送した日
郵便物が返送された場合の事情
海外への転出が分かった場合の情報
などです。
特に、将来的に不在者財産管理人の選任を申し立てる場合には、所在不明となっている事情や、それまでに行った調査の内容が重要になります。
調査を行ったことが分かる資料を保存しておくと、その後の手続きを進める際にも役立ちます。
まとめ
相続人の住所が分からない場合でも、戸籍や戸籍の附票などから手掛かりを得られることがあります。
今回のポイントを整理すると、
まず戸籍で相続人と本籍地を確認する
戸籍の附票から住所履歴を調べられる場合がある
兄弟姉妹の附票は無条件に取得できるわけではなく、正当な請求理由が必要
戸籍の附票は、戸籍証明書の広域交付の対象外
海外へ転出した場合、日本の書類だけでは現在の住所が分からないことがある
海外在住の日本人については、条件により外務省の所在調査を利用できる場合がある
海外在住でも、連絡が取れれば遺産分割協議を進められる
日本国籍の海外在住者については、署名証明や在留証明が必要になる場合がある
所在が判明しない場合には、家庭裁判所の制度を検討することがある
ということになります。
相続人の住所が分からないと、相続手続きはそこで止まってしまうように感じるかもしれません。
しかし、国内に住んでいる場合と海外へ移住している場合、それぞれに調査の方法があります。
最初から行方不明と決めつけず、確認できる書類や情報を一つずつ調べていくことが大切です。
相続人調査や相続手続きについては、こちらのページでも紹介しています。
