2026年10月23日金曜日

登記のこんなときどうする?⑯ 親から子どもへ家の名義を変えたいときは?

 


親から子どもへ家の名義を変えたいときは?

高齢になった父親から、こんな話をされた。

「この家も、そろそろお前の名義にしておこうか」

実家には今も父親が住んでいるけれど、将来の相続のことを考えて、元気なうちに子どもの名義に変更しておきたいとのこと。

「親子なんだから、名前を書き換えるだけでいいんじゃない?」

「お金のやり取りがなければ、税金もかからないよね?」

ところが、実際にはそう簡単ではありません。

親から子どもへ不動産の名義を変更することはできますが、その方法によって税金や必要な手続きが大きく変わります。

今回は、親が生きている間に家や土地を子どもの名義に変更する方法について、分かりやすくご紹介します。


親子でも、自由に名義変更できるわけではない?

不動産の所有者を変更するには、法律上の原因が必要です。

例えば、父親名義の自宅を長男の名義にする場合。

単に「将来は長男に渡す予定だから」という理由だけで、登記簿の名前を書き換えることはできません。

実際に父親から長男へ所有権を移す必要があります。

親が生きている間に名義変更する場合、代表的な方法には次の2つがあります。

  • 贈与:親から子どもへ無償で不動産を譲る

  • 売買:子どもが親から不動産を買い取る

一方、親が亡くなった後に不動産を取得する場合は、相続による名義変更を検討することになります。

① 生前贈与で子どもの名義にする

親から子どもへ無償で不動産を譲ることを「生前贈与」といいます。

例えば、父親が所有している実家を、長男に贈与する場合です。

父親と長男が贈与について合意し、贈与による所有権移転登記を行うことで、長男の名義に変更できます。

ただし、ここで注意したいのが税金です。

親子間の贈与であっても、原則として贈与税の対象になります。

「家族だから税金はかからない」というわけではありません。

不動産の評価額によっては、贈与税が高額になることもあります。

贈与税には年間110万円の基礎控除があります

贈与税には、一般的な課税方法として「暦年課税」という仕組みがあります。

これは、1年間に贈与によって取得した財産の価額を合計し、基礎控除額110万円を差し引いて贈与税を計算する方法です。

例えば、1年間に受け取った贈与財産の価額が合計110万円以下であれば、通常、この方法による贈与税はかかりません。

しかし、不動産の場合はどうでしょうか?

親から子どもへ家や土地を丸ごと贈与する場合、その評価額が110万円を超えることも少なくありません。

そのため、贈与税が発生する可能性があります。

「現金をもらうわけではないから贈与税はかからない」という考え方は間違いです。

不動産そのものにも財産としての価値があるため、贈与税の対象になります。


「相続時精算課税制度」という方法も

親から子どもへの贈与では、「相続時精算課税制度」という仕組みを検討できる場合もあります。

これは、一定の年齢などの要件を満たす親子間の贈与について選択できる制度です。

2024年1月からは、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が設けられています。

また、一定の要件を満たす場合には、累計2,500万円の特別控除も利用できます。

ただし、2,500万円までは単純に税金が一切かからない、という意味ではありません。

この制度では、原則として贈与した親が亡くなったときに、対象となる贈与財産を相続税の計算に反映する仕組みがあります。

また、一度選択すると、原則として同じ親からの贈与について暦年課税に戻すことはできません。

そのため、制度を利用するかどうかは、将来の相続も考えて慎重に判断することが大切です。

▶ 相続時精算課税制度について|国税庁

② 売買によって子どもの名義にする

もう一つの方法が、親から子どもへの売買です。

例えば、父親が所有する自宅を、長男がお金を支払って買い取る場合です。

この場合、売買契約を締結し、売買による所有権移転登記を行います。

ただし、親子間の売買でも注意が必要です。

特に、売買代金を極端に安く設定することには気をつけなければなりません。

例えば、本来は高い価値がある不動産を、親子だからという理由で非常に安い価格で売却した場合です。

税務上、時価との差額について贈与があったものとみなされ、贈与税が問題になることがあります。

また、売却した親の側にも譲渡所得税が発生する場合があります。

「売買という形にすれば贈与税はかからない」と簡単には判断できないのです。


名義変更には贈与税以外にも費用がかかる?

実は、不動産の名義変更では、贈与税や譲渡所得税だけでなく、ほかの税金にも注意が必要です。

例えば、次のようなものがあります。

  • 登録免許税:所有権移転登記を申請する際にかかる税金

  • 不動産取得税:不動産を取得した際に課税されることがある都道府県税

  • 贈与税:無償で不動産を譲り受けた場合に問題となる税金

  • 譲渡所得税:売買によって不動産を譲り渡した場合に問題となる税金

贈与による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の2%です。

一方、相続による所有権移転登記は、原則として0.4%です。

このように、生前贈与と相続では、登記にかかる税金も異なります。

また、贈与税の評価額と登録免許税の計算に使う評価額は、必ずしも同じではありません。

名義変更をする前に、税金を含めた費用全体を確認しておくことが大切です。


住宅ローンが残っている場合は?

親名義の自宅に住宅ローンが残っている場合も注意が必要です。

例えば、父親が住宅ローンを返済中の家を、長男へ贈与したい場合です。

このようなケースでは、金融機関との融資契約を確認する必要があります。

住宅ローンが残っている不動産を、金融機関に無断で名義変更すると、契約違反となり、ローンの一括返済を求められるおそれがあります。

また、不動産を子どもの名義に変更しても、住宅ローンの返済義務が自動的に子どもへ移るわけではありません。

そのため、住宅ローンが残っている場合には、事前に金融機関へ相談し、必要な承諾を得ることが重要です。


親が認知症になっていても贈与できる?

ここも確認しておきたい点です。

例えば、高齢の父親が認知症と診断されている場合です。

親子だからといって、子どもの判断だけで父親名義の家を贈与することはできません。

贈与は、財産を渡す側と受け取る側の合意によって成立する契約です。

そのため、父親本人に贈与の内容や結果を理解して判断する能力があるかどうかが重要になります。

認知症という診断名だけで一律に判断されるわけではありませんが、意思能力がない状態で行った法律行為は無効になります。

また、成年後見人が選任されている場合にも、本人の財産を子どもへ自由に贈与できるわけではありません。

親の判断能力に不安がある場合には、慎重な対応が必要です。


生前贈与をすると、将来の相続で問題になることも?

親が子どもの一人にだけ不動産を贈与した場合、将来の相続に影響することがあります。

例えば、子どもが長男と次男の2人だったとします。

父親が元気なうちに、自宅を長男へ贈与しました。

その後、父親が亡くなった場合、次男から、

「兄だけ生前に家をもらっているのは不公平では?」

という話が出るかもしれません。

生前贈与の内容によっては、「特別受益」や「遺留分」といった問題が関係することがあります。

もちろん、すべての生前贈与が相続争いにつながるわけではありません。

ただし、名義変更をするときには、ほかの相続人のことや将来の相続も考えておきたいところです。

それなら、相続まで待ったほうがいい?

「生前贈与だと税金がかかるなら、相続まで待ったほうがいいのかな?」

そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、相続による取得のほうが税負担を抑えられるケースもあります。

また、相続税には一定の要件を満たす場合に利用できる特例もあります。

一方で、生前に所有権を移しておくことに意味がある場合もあります。

例えば、親子双方が納得したうえで、子どもへ確実に不動産を移転しておきたい場合などです。

どちらの方法が適しているかは、家族構成や財産の状況、税金、親本人の希望などによって異なります。

「早く名義を変えたほうが得」とも、「相続まで待てば必ず得」とも一概にはいえません。

まずはそれぞれの方法を比較することが大切です。


親から子どもへの名義変更に必要な書類は?

贈与による所有権移転登記の場合、一般的には次のような書類が必要になります。

  • 親の登記識別情報または登記済証(権利証)

  • 親の印鑑証明書

  • 子どもの住所を証明する書類

  • 贈与契約書など、登記原因を証明する書類

  • 固定資産評価額を確認できる書類

  • 登記申請書

実際に必要な書類は、登記の内容や不動産の状況によって異なります。

また、登記簿に記載された親の住所や氏名が現在と異なる場合には、住所変更登記や氏名変更登記が必要になることもあります。

登記に必要な書類を確認し、準備を整えてから手続きを進めましょう。


まずは何を確認すればいい?

親から子どもへ家や土地の名義変更を考えている場合は、次の点を確認してみましょう。

① 現在の登記名義を確認する

本当に親一人の名義なのか、共有名義ではないかを確認します。

② 親と子どもの意思を確認する

贈与なのか、売買なのか、双方がどのように考えているかを整理します。

③ 住宅ローンが残っていないか確認する

借入れがある場合には、金融機関との契約も確認します。

④ 税金を確認する

贈与税、登録免許税、不動産取得税などの負担を確認します。

⑤ 将来の相続も考える

ほかの相続人との関係や、相続による取得との違いについても検討します。

最初から名義変更をすると決めず、まずは必要な情報を整理することが大切です。


まとめ 親子間の名義変更は、税金と将来の相続にも注意!

親から子どもへ、家や土地の名義を変更することはできます。

ただし、親子だからといって、簡単に登記簿の名前を書き換えられるわけではありません。

生前贈与や売買など、実際の法律関係に応じた所有権移転登記が必要になります。

また、贈与税や登録免許税など、税金についても十分な確認が必要です。

「元気なうちに子どもへ家を譲りたい」

「実家を長男の名義に変更しておきたい」

「親子間の贈与には税金がどのくらいかかる?」

「生前贈与と相続のどちらがよいのか分からない」

そんな場合は、まず現在の登記内容と、どのような方法で不動産を移すのかを確認してみましょう。

大切なのは、単に名義を変更することではなく、家族の状況に合った方法を選ぶことです。


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