自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶ?違い・費用・メリットを解説
「遺言書を作っておこうと思うけれど、自分で書けばいいの?」
「公証役場で公正証書遺言にした方が安心?」
遺言を作ろうとすると、まず迷うのが自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶかだと思います。
どちらも法律で認められた遺言の方式ですが、作り方、費用、保管方法、亡くなった後の手続きなどに違いがあります。
今回は、2026年9月現在の制度を前提に、それぞれの特徴を分かりやすく説明します。
自筆証書遺言とは?
自筆証書遺言は、基本的に遺言者本人が自分で書いて作成する遺言書です。
2026年9月現在のルールでは、
・遺言書の本文
・作成した日付
・遺言者の氏名
を本人が自書し、押印する必要があります。
一方、財産目録については、必ずしも手書きする必要はありません。
パソコンで作成した財産目録や、不動産の登記事項証明書、預貯金通帳のコピーなどを添付する方法も認められています。
ただし、自書ではない財産目録については、現在の制度では各ページに署名・押印が必要です。
2026年に遺言制度の改正法が成立しています
ここは少し注意が必要です。
2026年6月に遺言制度を見直す改正法が成立し、自筆証書遺言について押印を任意とする改正などが予定されています。
ただし、2026年9月現在、この部分はまだ施行されていません。
※押印の任意化などについては、2026年6月24日の公布から1年以内の政令で定める日に施行されることになっています。
したがって、今、自筆証書遺言を作成する場合には、まだ押印が必要です。
今後の遺言制度改正については、別の記事で詳しく取り上げる予定です。
自筆証書遺言のメリット
一番大きなメリットは、比較的手軽に作成できることです。
公証役場へ行かなくても、自宅で作成することができます。
自宅で保管するのであれば、公証人へ支払う作成手数料もありません。
また、
「財産の分け方を変更したい」
「新しく財産を取得したので内容を見直したい」
という場合にも、新しい遺言書を作成すること自体は比較的容易です。
自筆証書遺言の注意点
一方、自分で作成するからこその注意点があります。
遺言は法律で方式が決められているため、方式に不備があると、せっかく作った遺言が後になって問題になる可能性があります。
例えば、
・日付の記載に問題がある
・自書が必要な部分をパソコンで作成している
・訂正方法が法律上の方式に合っていない
・財産の記載が不明確
・誰に何を取得させるのか分かりにくい
といったケースです。
また、自宅で保管している場合には、
紛失、破棄、改ざん、そもそも遺言書を発見してもらえない
といった問題も考えられます。
さらに、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、原則として家庭裁判所での検認が必要です。
前回の記事で、遺言書を見つけた場合の開封や検認について詳しく説明しています。
自筆証書遺言を見つけたらどうする?開封・検認・相続手続きの流れ
公正証書遺言とは?
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。
遺言者が希望する内容を公証人へ伝え、公証人がその内容を公正証書として作成します。
公正証書遺言を作成する際には、原則として証人2名の立会いが必要です。
公正証書遺言のメリット
大きなメリットは、公証人が作成に関与するため、方式の不備によって遺言が使えなくなるリスクを抑えられることです。
また、公正証書の記録は公証人側で保管されるため、自宅で保管する遺言書のように、
・紛失する
・誰かに捨てられる
・書き換えられる
といった心配も基本的にはありません。
そして、亡くなった後の家庭裁判所による検認が不要です。
そのため、相続開始後、不動産の相続登記や預貯金などの手続きへ比較的スムーズに進みやすいというメリットがあります。
自分で長い文章を書く必要もありません
自筆証書遺言では、現在の制度上、本文などを遺言者本人が自書する必要があります。
一方、公正証書遺言では、公証人が遺言内容を公正証書として作成します。
そのため、
「手が震えて長い文章を書くのが難しい」
「高齢になり、自分で全文を書くのが負担になった」
という場合でも、公正証書遺言を利用できる可能性があります。
公正証書遺言の手数料は2025年10月に改正されています
公正証書遺言を作成する場合には、公証人手数料が必要です。
この手数料は、2025年10月1日に改正されています。
2026年9月現在の主な手数料は次のとおりです。
| 遺言の目的となる財産の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 49,000円 |
ただし、
「財産が3,000万円だから26,000円」
と単純に計算するわけではありません。
公正証書遺言の手数料は「もらう人ごと」に計算します
ここは少し分かりにくいところです。
公正証書遺言では、遺言によって財産を取得する相続人や受遺者ごとに、その人が取得する財産の価額に応じて手数料を計算し、それぞれを合計します。
例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の基本手数料は49,000円です。
一方、
・妻に6,000万円
・長男に4,000万円
を相続させる場合には、
妻分 49,000円
長男分 33,000円
となり、基本手数料は合計82,000円となります。
財産総額が1億円以下なら「遺言加算」もあります
さらに、1通の遺言公正証書における目的価額の合計が1億円以下の場合には、
13,000円の「遺言加算」
が加算されます。
先ほどの、
妻に6,000万円
長男に4,000万円
という例なら、
基本手数料82,000円
+遺言加算13,000円
で、
95,000円
となります。
このほか、書面や電子データの交付、原本を紙に出力する場合の枚数などによって別途手数料が発生する場合があります。
したがって、実際の公証人手数料は、遺言内容を確認したうえで計算する必要があります。
公正証書遺言には証人2名が必要です
公正証書遺言では、証人2名の立会いが必要です。
ただし、誰でも証人になれるわけではありません。
例えば、
・未成年者
・推定相続人
・遺贈を受ける人
・推定相続人や受遺者の配偶者や直系血族など
は証人になることができません。
適当な証人がいない場合には、公証役場から紹介を受けることもできます。
司法書士などに遺言作成を依頼する場合には、証人の手配にも対応できる場合があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言を比較すると
大まかに整理すると、次のようになります。
| 自筆証書遺言(自宅保管) | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作成方法 | 本人が原則として自書 | 公証人が作成 |
| 証人 | 不要 | 2名必要 |
| 作成手数料 | 原則不要 | 財産額等に応じて必要 |
| 保管 | 自分で保管 | 公証人側で保管 |
| 紛失・破棄のリスク | あり | 低い |
| 方式不備のリスク | 自分で確認が必要 | 公証人が関与 |
| 死亡後の検認 | 原則必要 | 不要 |
※自筆証書遺言でも法務局の遺言書保管制度を利用した場合には、家庭裁判所の検認は不要です。
公正証書の作成手続きもデジタル化されています
2025年10月1日から、公正証書の作成に関する手続きがデジタル化されています。
一定の場合には、ウェブ会議を利用して公証人の面前で行う手続きに代えることが可能になっています。
ただし、公正証書遺言では、本人確認や遺言者の真意、意思能力などの確認が非常に重要です。
そのため、
「希望すれば誰でも自宅からオンラインだけで公正証書遺言を作れる」
という意味ではありません。
実際にウェブ会議を利用できるかどうかは、公証人が個別に判断します。
結局、どちらを選べばいい?
一概に、
「自筆証書遺言の方がいい」
「必ず公正証書遺言にすべき」
とは言えません。
例えば、
比較的シンプルな内容で、費用を抑えて自分で作成したい
という場合には、自筆証書遺言も選択肢になります。
一方、
・財産が多い
・不動産が複数ある
・相続人が多い
・相続人以外の方へ財産を遺したい
・家族関係が複雑
・遺言内容をめぐる争いが心配
・亡くなった後の手続きをできるだけスムーズにしたい
といった場合には、公正証書遺言を検討する意味が大きくなります。
大切なのは、
「遺言書を作った」ということではなく、亡くなった後に、その内容をきちんと実現できる遺言にしておくこと
だと思います。
「自筆だけど法務局に預ける」という方法もあります
実は、自筆証書遺言には、
自分で作成した遺言書を法務局に保管してもらう
という方法もあります。
これが自筆証書遺言書保管制度です。
法務局で保管された自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認が不要です。
また、遺言書を法務局で保管するため、自宅保管の場合に問題となる紛失や改ざんなどを防ぐことができます。
この制度については、別の記事で詳しく説明します。
芦屋市で遺言書の作成をお考えの方へ
松岡司法書士事務所では、芦屋市を中心に、西宮市・神戸市東灘区などで遺言書作成のご相談を承っています。
「自筆証書遺言で十分なのか分からない」
「公正証書遺言にすると、実際にいくらくらいかかる?」
「不動産を誰に相続させるか決めておきたい」
「家族にできるだけ手続きを残したくない」
といった段階からでもご相談いただけます。
ご家族の構成や財産内容、ご希望を確認したうえで、遺言内容や作成方法を整理していきます。
初回相談は無料です。
ご自宅などへの出張相談にも対応しています。
電話でいきなり相談するのが苦手という方は、メールからでもお気軽にお問い合わせください。
詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。
松岡司法書士事務所
芦屋市を中心に、西宮市・神戸市東灘区などに対応
遺言・公正証書遺言・相続登記・成年後見・死後事務などのご相談を承っています。
