2026年9月22日火曜日

遺言③ 自筆証書遺言書保管制度とは?検認不要・通知制度・費用を解説

 


自筆証書遺言書保管制度とは?検認不要・通知制度・費用を解説

前回の記事では、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについてご紹介しました。

自筆証書遺言には、

「自分で作成した遺言書を、法務局で保管してもらう」

という方法もあります。

これが自筆証書遺言書保管制度です。

自宅で保管する自筆証書遺言には、紛失したり、相続人に発見されなかったり、書き換えられたりする心配があります。

法務局の保管制度を利用すると、遺言書の原本と画像データが法務局で保管され、さらに遺言者が亡くなった後の家庭裁判所による検認も不要になります。

今回は、この制度のメリット、費用、申請方法、亡くなった後の通知について説明します。


自筆証書遺言書保管制度とは?

自筆証書遺言書保管制度は、自分で作成した自筆証書遺言を、法務局の遺言書保管所で保管してもらう制度です。

制度自体は2020年から始まっています。

自筆証書遺言の手軽さを残しながら、

・遺言書の紛失
・相続人による破棄や隠匿
・改ざん
・遺言書が発見されない

といった自宅保管の弱点を補う制度といえます。

最大のメリットは「検認が不要」

自宅などで保管していた一般的な自筆証書遺言は、遺言者が亡くなった後、原則として家庭裁判所で検認を受ける必要があります。

一方、法務局で保管されている自筆証書遺言については、

家庭裁判所の検認が必要ありません。

そのため、相続開始後に遺言書情報証明書を取得すれば、その後の相続登記などの手続きへ進むことができます。

前々回の記事でご紹介した「遺言書を見つけたら、まず検認」という手続きが不要になるわけです。

※ここに「自筆証書遺言を見つけたら?」の記事へのリンク

法務局で保管するので紛失や改ざんを防げます

自宅で遺言書を保管すると、

「どこにしまったか分からなくなった」

「家族が遺言書の存在を知らなかった」

ということもあります。

法務局の制度を利用すると、遺言書の原本が遺言書保管所で保管され、画像データとしても管理されます。

そのため、遺言書そのものを紛失したり、誰かに捨てられたり、書き換えられたりするリスクを大きく減らすことができます。

法務局が遺言書の形式を確認してくれる

保管申請の際には、法務局職員が自筆証書遺言について、法律で定められた方式に沿って作られているかを外形的に確認します。

例えば、

・必要な部分が自書されているか
・日付が記載されているか
・氏名が記載されているか
・現在の制度上必要な押印があるか

といった点です。

これは自分だけで遺言書を保管する場合にはないメリットです。

ただし「内容が有効」と保証してくれる制度ではありません

ここは非常に重要です。

法務局に遺言書を預けたからといって、

「この遺言内容は法律上すべて有効です」

と法務局が保証してくれるわけではありません。

法務局が行うのは、遺言書の方式についての外形的な確認です。

例えば、

・遺言内容が曖昧になっている
・財産の特定が十分でない
・遺留分などの問題がある
・本人の意思能力について後から争いになる

といった内容面まで法務局が審査してくれるわけではありません。法務局も、遺言内容の有効・無効までは判断しないと案内しています。

そのため、

「法務局に預ければ、内容についても絶対安心」

という制度ではない点には注意が必要です。

保管にかかる費用はいくら?

現在、遺言書の保管申請に必要な手数料は、

遺言書1通につき3,900円です。

公正証書遺言のように、財産額に応じて作成手数料が変わる仕組みではありません。

この3,900円で法務局に原本を保管してもらい、検認も不要になるため、費用面では利用しやすい制度だと思います。

なお、手数料は収入印紙で納付します。


誰かに代理で預けてもらえる?

できません。

遺言書の保管申請ができるのは、


遺言者本人だけです。

司法書士や家族が本人の代理人として法務局へ遺言書を持っていき、保管申請をすることはできません。

郵送による保管申請もできないため、遺言者本人が遺言書保管所へ出向く必要があります。

司法書士などに遺言書の作成相談や申請書作成のサポートを依頼することはできますが、最後の保管申請は本人が行います。


どこの法務局でも預けられる?

どこの法務局でも自由に選べるわけではありません。

保管申請ができるのは、

・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有している不動産の所在地

のいずれかを担当する遺言書保管所です。

また、一度遺言書を保管した後に2通目以降の遺言書を追加して保管する場合には、最初に保管した遺言書保管所に申請する必要があります。


法務局に預ける遺言書には決められた様式があります

自筆証書遺言であれば、どんな紙でもそのまま預かってもらえるわけではありません。

保管制度では、

・A4サイズ
・余白の取り方
・片面記載
・ページ番号の記載

など、保管に適した一定の様式が定められています。

そのため、先に遺言書を書いてから、

「これを法務局に預けたい」

と思った場合、保管制度の様式に合っているか確認する必要があります。

遺言書をこれから作るのであれば、最初から法務省の様式上の注意事項を確認して作成した方がスムーズです。


亡くなった後、遺言書があることを家族に知らせてもらえる?

この制度には通知制度があります。

これは自宅保管にはない大きな特徴です。

現在、主に2種類の通知があります。


1.指定した人への通知

遺言者本人が希望すれば、あらかじめ指定した方に、

「遺言書が法務局に保管されています」

という通知をしてもらうことができます。

現在は3名まで通知対象者を指定できます。

遺言書の存在を確実に知ってもらいたい人を指定しておくと、

「せっかく遺言書を作ったのに誰にも気付かれなかった」

という事態を防ぎやすくなります。

ただし、通知そのものに遺言の内容が書かれているわけではありません。


2.関係する相続人などへの通知

遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者などの一人が遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書を取得した場合には、その他の関係する相続人等にも、

遺言書が法務局に保管されていること

が通知されます。

このため、一部の相続人だけが遺言書の存在を知り、他の関係者には全く分からないままという状態を防ぎやすくなっています。

相続人は遺言書の原本を受け取る?

遺言者が亡くなった後、相続人が原本そのものを持ち出して相続手続きをするわけではありません。

相続人、受遺者、遺言執行者などは、法務局へ遺言書情報証明書の交付を請求することができます。

この証明書には遺言書の画像情報などが記載されており、従来なら遺言書原本を使っていた相続手続きで使用することが想定されています。

現在の手数料は、

遺言書情報証明書 1通1,400円です。

「法務局に遺言書があるかどうか」だけ調べることもできます

亡くなった方から、

「遺言書を作った」

と聞いていたものの、自宅を探しても見つからない場合もあります。

相続開始後、相続人等は遺言書保管事実証明書を請求することで、自分に関係する遺言書が遺言書保管所に保管されているかどうかを確認できます。

現在の手数料は、

1通800円です。

保管されていることが分かった場合には、遺言書情報証明書を取得して内容を確認するという流れになります。

自宅保管と法務局保管を比べると

簡単に整理すると、

自宅で保管法務局で保管
保管費用原則なし3,900円
紛失の心配あり原則なし
改ざん等の心配あり防止できる
法務局による方式確認なしあり
死亡後の検認原則必要不要
死亡後の通知制度なしあり

自筆証書遺言を利用するのであれば、法務局保管制度は検討する価値のある方法だと思います。


公正証書遺言との違いは?

では、

「法務局保管の自筆証書遺言なら、公正証書遺言と同じなの?」

というと、そうではありません。

法務局保管制度では、遺言内容を自分で考えて、自分で自筆証書遺言を作成することが基本です。

法務局は形式面を確認しますが、遺言内容を公証人のように整理して作成してくれるわけではありません。

一方、公正証書遺言では公証人が遺言作成に関与します。

そのため、

「保管を安全にしたい」

ということと、

「遺言内容そのものを法律的に確実なものにしたい」

ということは分けて考えた方がよいでしょう。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについては、前回の記事で詳しく説明しています。

自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶ?違い・費用・メリットを解説


自筆証書遺言書保管制度が向いているのは?

例えば、

・自分で遺言書を作成したい
・公正証書遺言より費用を抑えたい
・自宅に置いておくのは不安
・家族に勝手に見られたくない
・遺言書を紛失したくない
・死亡後の検認を家族にさせたくない

という場合には、利用を検討しやすい制度です。

一方、

・相続関係が複雑
・不動産が複数ある
・相続人以外へ財産を遺したい
・遺留分の問題が予想される
・遺言内容をめぐって争いが起こりそう

という場合には、単に保管制度を利用するだけではなく、遺言内容そのものを専門家に確認してもらうことも検討した方がよいでしょう。

2026年現在、手続きの利便性も少しずつ改善されています

法務省では、遺言書保管制度についてオンライン化の取組も進めています。

2026年2月2日からは、保管申請時の提出書類について、電子メールによる事前チェックを行う取組の対象となる遺言書保管所が大幅に拡大されています。

ただし、これはあくまで事前チェックなどの取組です。

遺言書そのものの保管申請は、現在も遺言者本人が遺言書保管所へ出向いて行う必要があります。


芦屋市で自筆証書遺言をお考えの方へ

松岡司法書士事務所では、芦屋市を中心に、西宮市・神戸市東灘区などで遺言書作成のご相談を承っています。

「自筆証書遺言を作りたい」

「法務局に預けたいけれど、書き方がこれでいいのか不安」

「公正証書遺言とどちらがいいのか分からない」

「自分が亡くなった後、家族の手続きを少なくしたい」

という段階からでもご相談いただけます。

大切なのは、単に遺言書を保管することだけではなく、亡くなった後にその内容をきちんと実現できる遺言書にしておくことです。

ご家族の構成や財産内容、ご希望を確認しながら、遺言内容や作成方法を整理していきます。

初回相談は無料です。

ご自宅などへの出張相談にも対応しています。

電話でいきなり相談するのが苦手という方は、メールからでもお気軽にお問い合わせください。


詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。

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