成年後見人は何をする人?できること・できないことを解説
「成年後見人がついたら、本人のことを何でも代わりに決めるの?」
「施設への入所や預金の管理はしてもらえる?」
「病院の手術にも後見人が同意するの?」
成年後見制度について、このような疑問を持たれる方も多いと思います。
成年後見人は、認知症などによって判断能力が十分でない方のために、財産を管理したり、生活や療養に必要な契約を行ったりする人です。
一方で、成年後見人だからといって、本人に代わって何でもできるわけではありません。
今回は、2026年9月現在の制度を前提に、成年後見人の主な仕事と、できないことについて説明します。
成年後見人の仕事は大きく2つあります
成年後見人の仕事は、大きく分けると、
「財産管理」と「身上保護」
の2つです。
これに加えて、成年後見人は、本人の財産や生活の状況について家庭裁判所へ定期的に報告します。
神戸家庭裁判所の後見人向けハンドブックでも、後見人等の主な仕事として「財産管理」「身上保護」「裁判所への報告」が挙げられています。
1.本人の財産を管理する
成年後見人の大きな仕事の一つが、本人の財産管理です。
例えば、
預貯金、不動産、年金などの収入を把握し、施設費、医療費、生活費など本人のために必要な支出を管理します。
通帳や証券、不動産などを確認し、本人の財産がどのくらいあるのかを把握することも必要です。
成年後見人に選任された後には、財産目録などを作成し、家庭裁判所へ提出します。
本人のお金は、あくまで「本人のお金」です
家族が成年後見人になった場合でも、本人の財産と家族の財産は明確に分けなければなりません。
例えば、
「いずれ相続するから」
「家族みんなのためだから」
という理由で、本人の預金を家族のために自由に使うことはできません。
成年後見人は、本人の利益のために財産を管理する立場です。
家庭裁判所も、本人以外のために財産を流用した場合には、解任や損害賠償、場合によっては刑事責任の問題となることがあると注意を促しています。
2.本人の生活を支える「身上保護」
もう一つの重要な仕事が身上保護です。
「身上保護」というと、成年後見人自身が食事を作ったり、入浴を手伝ったりするような介護を想像されるかもしれません。
しかし、そうではありません。
成年後見人は、本人が安心して生活できるように、
介護サービスの契約、施設への入退所の契約、住居の確保、入院などに必要な契約や手続き
を行います。
つまり、本人を直接介護するのではなく、本人に必要なサービスを利用できるよう法律上の手続きを行うのが主な役割です。
成年後見人が介護をするわけではありません
例えば、本人が施設ではなく自宅で生活している場合、
成年後見人が毎日訪問して食事を作ったり、掃除をしたり、入浴を介助したりすることが当然の職務になるわけではありません。
必要であれば介護サービス事業者と契約し、本人が適切なサービスを受けられるようにします。
裁判所も、食事や入浴などの世話といった実際の介護行為は、成年後見人の職務には含まれないと説明しています。
本人の希望を無視して決める制度ではありません
成年後見人には、本人の意思を尊重することが求められています。
例えば、
「どこで暮らしたいのか」
「どのような生活をしたいのか」
といった本人の意向をできるだけ確認し、その心身の状態や生活状況に配慮しながら支援します。
成年後見人が、
「自分ならこうする」
という考えだけで本人の生活を決める制度ではありません。
不動産を売却することもあります
本人の生活費や施設費を確保するため、本人名義の不動産を売却する場合もあります。
成年後見人には本人の財産について一定の代理権がありますが、昨日の記事でも説明したように、本人の居住用不動産を処分する場合には家庭裁判所の許可が必要です。
「成年後見人になれば、本人の自宅を自由に売れる」
というわけではありません。
成年後見人が「できないこと」もあります
成年後見人は広い権限を持っていますが、本人に代わって何でもできるわけではありません。
特に、本人自身の意思が重要となる行為については、成年後見人が代理することはできません。
例えば、婚姻、養子縁組、遺言などは、本人自身の意思によって行うべき行為です。
成年後見人が本人の代わりに、
「この人と結婚します」
「この人を養子にします」
「この内容の遺言を作ります」
と決めることはできません。
手術などの「医療同意」は?
ここもよく質問されるところです。
成年後見人だからといって、本人に代わって手術などの医療行為への同意をする権限が当然に与えられているわけではありません。
裁判所も、手術などの医療行為についての同意・不同意の決定は、原則として成年後見人の職務には含まれないと説明しています。
成年後見人は、病院との契約や入院費の支払いなどについて対応することはありますが、
「この手術を受けさせるかどうかを本人に代わって決める」
という医療同意の問題とは別です。
成年後見人は家庭裁判所へ報告します
成年後見人は、一度選任されたら自由に財産を管理してよいというものではありません。
本人の財産や生活状況について、家庭裁判所の監督を受けます。
預貯金、不動産、収入、支出などを整理し、後見事務報告書や財産目録などを家庭裁判所へ提出します。
そのため、家族が成年後見人になった場合でも、
「身内の財産だから自分たちで管理すればいい」
という感覚ではなく、本人の財産を預かって管理しているという意識が必要になります。
一度選ばれたら、用事が終われば終了する?
現在の成年後見制度では、原則としてそうではありません。
例えば、
「本人の預金を解約したい」
「遺産分割をしたい」
「自宅を売却したい」
という目的があって成年後見を申し立てたとしても、その手続きが終わっただけで成年後見が当然に終了するわけではありません。
裁判所も、申立てのきっかけとなった手続きが終わった後も、後見人等は本人を法的に保護する役割を続けると案内しています。
この点は、成年後見制度を利用するかどうか考えるうえで非常に重要です。
成年後見人には誰がなる?
家族が成年後見人になることもあります。
一方で、本人の財産内容や家族関係、必要になる手続きなどによっては、司法書士、弁護士などの専門職が選任されることもあります。
誰を成年後見人にするかを最終的に決めるのは家庭裁判所です。
家族を候補者として申立書に記載しても、その家族が必ず選任されるとは限りません。
成年後見・保佐・補助は何が違う?
2026年9月現在の法定後見制度には、
成年後見・保佐・補助
の3種類があります。
それぞれ、本人の判断能力の程度や、支援する範囲が異なります。
「少し判断能力が低下してきたから、すぐ成年後見人をつける」
という単純な制度ではありません。
この後見・保佐・補助の違いについては、次回の記事で詳しく説明したいと思います。
2026年に成年後見制度の改正法が成立しています
成年後見制度については、2026年6月17日に改正法が成立し、同月24日に公布されています。
今回の改正では、現在の後見・保佐制度を廃止して補助制度へ一元化するなど、本人に必要な範囲で制度を利用しやすくする大きな見直しが予定されています。
ただし、成年後見制度の見直しは、2026年6月24日の公布から2年6か月以内の政令で定める日に施行されます。
したがって、2026年9月現在はまだ現在の後見・保佐・補助制度が適用されています。
成年後見制度は「本人のため」の制度です
成年後見制度を考えるとき、
「家族がお金を動かせなくなったから」
「不動産を売りたいから」
というところから相談が始まることがあります。
もちろん、そのような手続きを行うために制度利用が必要になる場合もあります。
ただ、制度の中心にいるのは家族ではなく本人です。
本人の財産を守り、本人の意思をできるだけ尊重しながら、安心して生活できるよう支援することが成年後見制度の目的です。
芦屋市で成年後見についてお悩みの方へ
松岡司法書士事務所では、芦屋市を中心に、西宮市・神戸市東灘区などで成年後見に関するご相談を承っています。
「親の預金管理が難しくなってきた」
「施設への入所手続きをどうすればいいか分からない」
「成年後見人には何を頼めるのか知りたい」
「成年後見制度を利用する必要があるのか分からない」
という段階からでもご相談いただけます。
成年後見制度を利用することが適切なのか、ほかの方法を検討できるのかも含めて、本人の状態や財産、今後必要になる手続きを確認しながら整理していきます。
初回相談は無料です。
ご自宅・病院・施設などへの出張相談にも対応しています。
電話でいきなり相談するのが苦手という方は、メールからでもお気軽にお問い合わせください。
詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。
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成年後見・任意後見・相続・遺言・死後事務などのご相談を承っています。
