2026年9月14日月曜日

相続した不動産の固定資産税は誰が払う?遺産分割前の取扱い

 


相続した不動産の固定資産税は誰が払う?遺産分割前の取扱い

「父が亡くなった後も、父名義で固定資産税の納税通知書が届いた」

「まだ遺産分割協議が終わっていないけれど、誰が固定資産税を払うの?」

「長男が実家に住んでいるのだから、長男が全部払うべきでは?」

不動産を所有している方が亡くなった場合、相続登記や遺産分割協議だけでなく、固定資産税の支払いについても考える必要があります。

特に、相続人が複数いて、誰が不動産を取得するか決まっていない場合には、固定資産税を誰が負担するのかという問題が生じることがあります。

また、相続人の代表者に納税通知書が届いた場合、その代表者だけに納税義務があると誤解されることもあります。

今回は、不動産の所有者が亡くなった場合の固定資産税と、遺産分割前の負担方法について説明します。


① 固定資産税は誰が払う税金?

固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している方に課される税金です。

原則として、毎年1月1日現在の所有者が、その年度の固定資産税の納税義務者になります。

例えば、父が自宅の土地と建物を所有していた場合です。

1月1日時点で父が所有者であれば、その年度の固定資産税は、原則として父に課税されます。

その後、年の途中で不動産を売却したとしても、市区町村に対するその年度の納税義務者が自動的に買主へ変わるわけではありません。

不動産を相続した場合にも、この1月1日を基準とする仕組みが重要になります。

なお、都市計画税が課税されている不動産については、固定資産税とあわせて考える必要があります。

② 年の途中で所有者が亡くなったら?

例えば、父が令和8年6月15日に亡くなったとします。

父は自宅の土地と建物を所有していました。

この場合、令和8年度の固定資産税はどうなるのでしょうか。

令和8年1月1日時点では父が生存しており、不動産の所有者でした。

したがって、令和8年度の固定資産税は、原則として父に課税されるものです。

しかし、父が亡くなったからといって、まだ納付していない固定資産税が消滅するわけではありません。

亡くなった方の納税義務は、原則として相続人に承継されます。

そのため、例えば第1期分だけを父が納付し、第2期以降が未納になっていた場合には、相続人が残りの税額について対応する必要があります。

相続が発生したからといって、その年度の固定資産税を死亡日までの日数で計算し直すわけではありません。

③ 遺産分割が終わっていない場合、翌年の固定資産税は?

では、父が亡くなった後、翌年の1月1日になっても遺産分割協議が終わっていなかった場合はどうなるのでしょうか。

例えば、父の相続人が次の3人だったとします。

  • 母

  • 長男

  • 長女

父名義の自宅について、まだ誰が取得するか決まっていません。

この場合、原則として相続人全員が不動産を共同相続している状態になります。

固定資産税についても、1月1日時点で不動産を現に所有している相続人が納税義務者となります。

そして、相続人が複数いる場合には、相続人全員が連帯して納税義務を負うことになります。

つまり、遺産分割協議が終わっていないからといって、固定資産税を払わなくてよいわけではありません。

④ 相続人全員が連帯して納税するとは?

ここは特に注意したいところです。

例えば、父の相続人が母・長男・長女の3人で、固定資産税が年間12万円だったとします。

法定相続分は次のとおりです。

  • 母:2分の1

  • 長男:4分の1

  • 長女:4分の1

この割合で計算すると、母が6万円、長男と長女がそれぞれ3万円です。

しかし、市区町村が最初から3人に対して、それぞれ6万円・3万円・3万円の納税通知書を発行するとは限りません。

共有している不動産の固定資産税については、地方税法第10条の2により、共有者が連帯して納付する義務を負います。

これは、各相続人が自分の法定相続分に相当する税額だけを市区町村へ納めれば、必ず納税義務を果たせるという意味ではありません。

市区町村は、連帯納税義務に基づいて納付を求めることができます。

一方、相続人同士で最終的にどの割合で負担するのかについては、別に整理する必要があります。

税金を徴収する市区町村との関係と、相続人間の負担割合は区別して考えることが大切です。

⑤ 相続人代表者とは?

不動産の所有者が亡くなった場合、市区町村から「相続人代表者」の届出を求められることがあります。

例えば、父が亡くなり、長男を相続人代表者に指定した場合です。

その後、固定資産税の納税通知書などが長男に送付されることがあります。

ここで注意したいのは、相続人代表者に指定されたからといって、その人だけが不動産を相続したことにはならないという点です。

また、代表者に指定された人だけが、法律上の納税義務を負うことになるわけでもありません。

相続人代表者は、主に納税通知書などを受け取る窓口となる人です。

例えば、長男が代表者として12万円の納税通知書を受け取った場合でも、相続人全員の連帯納税義務や内部的な費用負担の問題は別に残ります。

相続人代表者の届出は、遺産分割協議や相続登記に代わる手続きではありません。

⑥ 相続人代表者が立て替えた場合はどうする?

相続人代表者が固定資産税をいったん支払うケースもあります。

例えば、長男が代表者となり、年間12万円の固定資産税を自分の預貯金から支払った場合です。

このとき、長男が支払った12万円を、最終的に長男だけで負担しなければならないのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

相続人間で話し合い、誰がどの割合で負担するかを決めることが考えられます。

例えば、

  • 法定相続分を目安として分担する

  • 不動産を取得する相続人が負担する

  • 相続財産の預貯金から支払う

  • 遺産分割協議が成立するまでの費用を別途精算する

といった方法です。

ただし、実際の負担関係については、税金が発生した時期や不動産の所有関係、相続人間の合意内容などによって異なります。

代表者が立て替えたからといって、常に希望どおりの金額を他の相続人へ請求できるとは限りません。

立替払いをする場合には、領収書や納付記録を保管し、後でどのように精算するかを相続人間で確認しておくことが大切です。

⑦ 亡くなった方の預貯金から固定資産税を払ってもいい?

父が亡くなり、相続財産として銀行預金が残っている場合を考えてみましょう。

相続人全員が、父の不動産に関する固定資産税を、その預貯金から支払うことに合意する場合があります。

このような方法で費用を精算することも考えられます。

例えば、遺産分割協議が終わるまでに必要となった固定資産税を、相続財産から支出することを相続人間で合意しておく方法です。

ただし、相続人の一人が勝手に亡くなった方の口座から預金を引き出してよいという意味ではありません。

金融機関の相続手続きや、ほかの相続人の権利にも注意する必要があります。

また、相続放棄を検討している場合には、相続財産の処分による法定単純承認が問題になることもあります。

そのため、誰がどの財産から支払い、最終的にどのように精算するのかを確認することが重要です。

⑧ 実家に住んでいる相続人が全部払うべき?

例えば、父が亡くなった後も、長男が実家に住み続けている場合です。

長女は別の場所に住んでおり、実家を利用していません。

この場合、長女が、

「実際に住んでいるのは長男なのだから、固定資産税は長男が全部負担すべきでは?」

と考えることもあるでしょう。

一方、長男は、

「まだ遺産分割協議が終わっておらず、実家は相続人全員の財産なのだから、みんなで負担すべきでは?」

と考えるかもしれません。

しかし、実際に住んでいる人が必ず固定資産税の全額を負担する、という一律の決まりがあるわけではありません。

不動産の所有関係や利用状況、相続人間の合意などを踏まえて考える必要があります。

また、実家に住んでいる相続人がいる場合には、固定資産税だけでなく、建物の維持費や修繕費、使用関係なども問題になることがあります。

そのため、固定資産税だけを切り離して考えるのではなく、不動産を誰がどのように利用し、最終的に誰が取得するのかも含めて整理することが望ましいでしょう。

⑨ 遺産分割で不動産の取得者が決まったら?

例えば、父の自宅について、遺産分割協議により長男が単独で取得することになった場合です。

このとき、固定資産税の納税義務者や通知先は、どのようになるのでしょうか。

固定資産税は、原則として毎年1月1日を基準に課税されます。

そのため、年内に長男への相続登記を完了すれば、通常、翌年度からは長男に納税通知書が送付されることになります。

一方、相続登記が翌年になった場合には、1月1日時点の登記状況や実際の所有関係などを踏まえた確認が必要になることがあります。

また、遺産分割協議によって不動産を取得する方が決まっていても、その内容が市区町村に伝わっていない場合があります。

そのため、協議が成立した後も相続登記を先延ばしにせず、必要な手続きを進めることが大切です。

なお、遺産分割によって不動産の取得者が決まった場合でも、それ以前に発生した固定資産税の負担が当然にすべてその取得者へ移るわけではありません。

過去の税金の精算については、相続人間で別途確認しておく必要があります。

⑩ 相続人代表者の届出と相続登記は別の手続き

不動産の所有者が亡くなった場合には、固定資産税に関する届出と、法務局で行う相続登記を区別する必要があります。

例えば、芦屋市では、固定資産税に関する納税通知書等を受け取る方を指定する「相続人代表者指定届出書」が案内されています。

また、西宮市では「相続人代表者指定届兼現所有者申告書」が案内されています。

神戸市でも、所有者が亡くなった場合の「現所有者の申告制度」が設けられています。

こうした届出は、固定資産税の課税や通知に関する手続きです。

届出を提出しただけで、不動産の名義が相続人へ変更されるわけではありません。

相続登記は、別途法務局で行う必要があります。

また、現所有者の申告期限などは自治体によって異なります。

例えば、神戸市では、原則として現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日までの申告が案内されています。

不動産が所在する自治体の取扱いを確認しておきましょう。

⑪ 納税通知書が届いたら、どこを確認する?

亡くなった方の固定資産税の納税通知書が届いた場合には、次のような点を確認しておきたいところです。

1.何年度の固定資産税なのか

亡くなった年の税金なのか、翌年度以降の税金なのかを確認します。

2.どの不動産について課税されているか

土地・建物の所在地や地番、家屋番号などを確認します。

3.未納になっている税金はないか

納期限が過ぎているものや、今後納付が必要なものを確認します。

4.相続人代表者は誰になっているか

通知書の送付先となっている人を確認します。

5.相続登記が完了しているか

遺産分割協議が成立していても、登記名義が亡くなった方のままになっている場合があります。

6.相続人間でどのように負担するか

立替払いをする場合には、後の精算方法も確認します。

特に、納税通知書が届いたのに、遺産分割が終わっていないという理由で放置しないことが大切です。

納期限までに納付しなければ、延滞金などが発生する場合があります。

⑫ 相続放棄をした場合はどうなる?

亡くなった方に借金などがあり、相続放棄を検討している場合には注意が必要です。

家庭裁判所で適法に相続放棄をした方は、初めから相続人ではなかったものとみなされます。

そのため、通常、その方は相続人として亡くなった方の固定資産税の納税義務を承継する立場にはなりません。

ただし、単に、

「不動産はいらない」

「兄に全部任せる」

と家族に伝えただけでは、法律上の相続放棄をしたことにはなりません。

また、相続放棄を考えている場合には、相続財産の取扱いにも注意が必要です。

固定資産税の納付方法や相続財産の使用などによって問題が生じる可能性もあるため、相続放棄を検討している段階では慎重に対応しましょう。

⑬ 固定資産税の問題を長期間放置しない

相続登記が行われないまま、何年も固定資産税だけを相続人の一人が支払っているケースもあります。

例えば、父が亡くなってから10年間、長男が固定資産税を支払い続けていた場合です。

しかし、長男が固定資産税を支払っていたからといって、それだけで自宅の所有権を単独で取得するわけではありません。

相続登記がされないまま年月が経過すると、相続人の一人が亡くなり、さらに相続人が増えることもあります。

このような状態になると、遺産分割協議や相続登記が複雑になることがあります。

また、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。

相続による不動産の取得を知った日から、原則として3年以内に相続登記を申請する必要があります。

義務化前の相続についても対象となるため、以前から不動産の取得を知っていた場合には、原則として2027年3月31日までに申請が必要です。

固定資産税を支払っているから相続登記をしなくてもよい、というわけではありません。


まとめ

不動産の所有者が亡くなった場合でも、固定資産税の納税義務がなくなるわけではありません。

亡くなった年の固定資産税については、原則として相続人が納税義務を承継します。

また、翌年の1月1日時点で遺産分割が終わっていなければ、相続人全員が連帯して納税義務を負うことになります。

今回のポイントを整理すると、

  • 固定資産税は、原則として毎年1月1日現在の所有者に課税される

  • 年の途中で所有者が亡くなった場合、未納の固定資産税は原則として相続人へ承継される

  • 遺産分割前の不動産については、相続人全員が連帯して納税義務を負う

  • 相続人代表者は、主に納税通知書などを受け取る人

  • 代表者に指定されても、その人だけが不動産を取得したことにはならない

  • 市区町村に対する納税義務と、相続人間の最終的な負担は別の問題

  • 立替払いをする場合には、納付記録を残しておく

  • 相続人代表者の届出と相続登記は別の手続き

  • 固定資産税を支払っているだけでは相続登記をしたことにはならない

ということになります。

相続した不動産の固定資産税は、相続人の誰か一人に納税通知書が届いていても、その人だけが当然に負担するものとは限りません。

また、遺産分割が終わっていない場合には、相続人全員の納税義務が問題になることがあります。

固定資産税の納税義務と、相続人間での費用負担を区別し、必要な届出と相続登記を進めることが大切です。