相続登記で亡くなった人の住所がつながらない!住民票の除票が取れない場合は?
「父が亡くなったので相続登記をしようとしたら、登記簿の住所が昔の住所だった」
「住民票の除票を取得したけれど、登記簿に書かれている住所が載っていない」
「古い住民票は保存期間が過ぎていて、発行できないと言われた」
相続登記を進める際、このような問題が生じることがあります。
特に、何十年も前に購入した不動産や、長期間相続登記が行われていなかった不動産では、登記記録上の住所と亡くなった方の最後の住所が異なることがあります。
この場合、登記記録上の所有者と亡くなった方が同一人物であることを確認する必要があります。
しかし、古い住民票などが廃棄されている場合には、通常の方法で確認できないこともあります。
今回は、相続登記で亡くなった方の住所がつながらない場合の対処方法について説明します。
① どうして亡くなった方の住所を確認する必要がある?
例えば、父が亡くなり、父名義の自宅を長男が相続することになったとします。
登記事項証明書を取得すると、所有者について次のように記載されていました。
登記記録上の所有者
住所:神戸市〇〇区〇〇町1丁目2番3号
氏名:山田太郎
しかし、父が亡くなったときの住所は次の場所でした。
死亡時の住所
住所:西宮市〇〇町4番5号
氏名:山田太郎
氏名は同じですが、住所が異なっています。
この場合、登記記録上の山田太郎さんと、亡くなった山田太郎さんが同一人物であることを確認しなければなりません。
同姓同名の別人である可能性も考えられるためです。
そこで、住民票の除票や戸籍の附票などを利用して、住所の履歴を調べることになります。
② 住民票の除票とは?
住民票の除票とは、転出や死亡などによって住民票から除かれた方の記録です。
例えば、父が西宮市で亡くなった場合、西宮市に住民票の除票が残っていることがあります。
住民票の除票には、一般的に次のような情報が記載されています。
氏名
生年月日
最後の住所
前住所
死亡や転出などの事由
住民票が消除された年月日
必要に応じて、本籍などを記載したものを請求することもできます。
相続登記では、単に亡くなった方の住所が分かればよいというわけではありません。
登記記録上の所有者との同一性を確認する必要があるため、本籍の記載なども重要になります。
③ 戸籍の附票とは?
住民票の除票で住所のつながりを確認できない場合には、戸籍の附票を調べる方法があります。
戸籍の附票とは、本籍地の市区町村で管理されている住所の記録です。
戸籍に記載されている方について、その戸籍が作られてからの住所の履歴などを確認できます。
例えば、父が結婚して新しい戸籍を作り、その後、神戸市から西宮市へ引っ越した場合です。
戸籍の附票に、神戸市と西宮市の住所が記録されていれば、登記記録上の所有者と亡くなった父が同一人物であることを確認する資料になります。
ただし、戸籍の附票には、その戸籍が作られる前の住所まで必ず記録されているわけではありません。
婚姻や転籍、戸籍の改製などによって、住所の履歴が別の附票に分かれていることもあります。
そのため、必要に応じて古い戸籍の附票や改製された附票などを確認することになります。
④ 住民票の除票や戸籍の附票が取れないこともある?
あります。
住民票の除票や戸籍の附票の除票については、以前は原則として5年間の保存期間が定められていました。
しかし、2019年6月20日の法改正により、保存期間が150年間に延長されました。
これによって、現在は以前より長い期間、記録が保存される仕組みになっています。
ただし、保存期間が延長される前に、すでに廃棄された記録が復活するわけではありません。
例えば、父が2005年に転出した住所について、当時の住民票の除票がすでに廃棄されていた場合です。
現在の保存期間が150年間になっていても、その古い記録を取得できないことがあります。
戸籍の附票についても同様です。
また、保存されている附票を取得できた場合でも、必要な古い住所が記載されていないことがあります。
そのため、保存期間が延長された現在でも、住所のつながりを確認できないケースは残っています。
⑤ 住所がつながらないと相続登記はできない?
結論からいうと、住民票の除票や戸籍の附票だけで住所を確認できなくても、相続登記ができる場合があります。
登記で必要なのは、亡くなった方と登記記録上の所有者が同一人物であることを確認することです。
住所の履歴を示す資料は、そのための重要な手段ですが、唯一の方法というわけではありません。
例えば、次のような資料が役立つ場合があります。
亡くなった方の戸籍謄本等
亡くなった方の登記済証(権利証)
固定資産税に関する証明書
不在住証明書・不在籍証明書
相続人による上申書
ただし、これらの書類を一つ提出すれば必ずよいというわけではありません。
どの資料で同一性を確認できるかは、登記記録や戸籍などの内容によって異なります。
⑥ 登記記録上の住所と本籍が同じ場合は?
まず確認したいのが、亡くなった方の本籍です。
例えば、登記記録上の所有者が次のようになっていたとします。
住所:神戸市〇〇区〇〇町1丁目2番3号
氏名:山田太郎
一方、亡くなった父の戸籍にも、本籍として同じ場所が記載されていた場合です。
このように、登記記録上の住所と戸籍の本籍が一致している場合には、その戸籍によって同一性を確認できることがあります。
そのため、住民票の除票や戸籍の附票が取得できない場合でも、まずは戸籍に記載されている本籍を確認してみることが大切です。
ただし、本籍と住所は別のものです。
必ず一致しているわけではありません。
また、氏名の変更など別の事情がある場合には、追加の確認が必要になることがあります。
⑦ 昔の権利証が役立つ場合もある
以前の記事では、相続登記では原則として亡くなった方の権利証は必要ないことを説明しました。
しかし、住所がつながらない場合には、権利証が重要な資料になることがあります。
例えば、父が40年前に土地を購入した際の登記済証が残っていた場合です。
その登記済証が、今回相続登記をする土地について、亡くなった父名義で交付されたものであれば、同一性を確認する資料として利用できる場合があります。
2017年3月23日の法務省通知でも、所有権に関する被相続人名義の登記済証などによって、同一性を確認できる取扱いが示されています。
したがって、古い住所の住民票などが取れない場合には、権利証が残っていないか確認してみる価値があります。
ただし、別の不動産の権利証や、亡くなった方の所有権に関係しない書類では、同じ取扱いになるとは限りません。
⑧ 権利証もない場合はどうする?
では、住民票の除票や戸籍の附票で住所が確認できず、権利証も見つからない場合はどうでしょうか。
このような場合でも、複数の資料を組み合わせることで、同一性を確認できることがあります。
ここで重要になるのが、2023年12月18日の法務省通知です。
この通知では、一定の条件を満たす場合に、相続人全員による上申書を提出しなくても、相続登記を行うことができる取扱いが示されています。
例えば、次のような資料を利用する方法です。
亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
固定資産税の納税証明書または評価証明書
不在籍証明書
不在住証明書
亡くなった方の戸籍謄本等
これらを組み合わせ、登記記録上の所有者と亡くなった方の同一性を確認します。
ただし、単に書類をそろえるだけでよいわけではありません。
不動産の表示や氏名、住所、本籍などについて、各書類の記載内容が一定の条件に従って一致している必要があります。
例えば、固定資産税関係の証明書に記載された納税義務者の氏名・住所と、住民票の除票などに記載された亡くなった方の氏名・住所が一致しているかといった点です。
必要な資料と、その組合せによる同一性の確認が重要になります。
⑨ 不在住証明書・不在籍証明書とは?
不在住証明書とは、特定の住所について、指定された氏名の方が住民票に記録されていないことなどを証明する書類です。
一方、不在籍証明書は、特定の本籍について、指定された氏名の方が戸籍に記載されていないことなどを証明する書類です。
例えば、登記記録上の住所が神戸市の古い住所だった場合、その住所について不在住証明書などを取得することがあります。
これらの証明書は、亡くなった方と登記名義人が同一人物であることを直接証明するものではありません。
しかし、別人が存在する可能性などを確認するための補助資料として利用されます。
また、すべての自治体で同じ名称・同じ形式の証明書が発行されるとは限りません。
請求できる証明書の種類や必要書類については、自治体へ確認する必要があります。
⑩ 上申書が必要になるのはどんな場合?
住民票の除票や戸籍の附票、権利証などを確認しても、同一性の証明が難しい場合があります。
このようなときには、相続人による上申書を利用することがあります。
上申書とは、例えば、
「登記記録上の所有者と亡くなった被相続人は、同一人物であることに相違ありません」
という内容を記載した書面です。
事案によっては、相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付する取扱いになります。
ただし、住所がつながらない場合には必ず相続人全員の上申書が必要、というわけではありません。
前述の2023年12月18日の通知によって、一定の条件を満たす書類があれば、上申書を省略できる場合があります。
また、上申書だけを提出すれば、ほかの同一性確認資料が一切不要になるわけでもありません。
どのような資料が必要になるかは、個々の事案によって判断する必要があります。
⑪ 亡くなった方の住所変更登記も必要?
ここで、もう一つ疑問になるのが住所変更登記です。
例えば、父が生前に何度も転居していたのに、不動産の登記上の住所は昔のままになっていた場合です。
このとき、
「まず亡くなった父の住所変更登記をしてから、相続登記をしなければならないのでは?」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、通常の相続登記では、亡くなった方の住所変更登記を先に行う必要はありません。
相続登記では、登記名義人と亡くなった方が同一人物であることを証明する資料を提出して手続きを進めます。
そのため、登記記録上の住所と死亡時の住所が異なっていても、必要な同一性確認ができれば、相続による所有権移転登記を申請できます。
ここでも重要なのは、住所変更登記をすることではなく、亡くなった方と登記名義人の同一性を証明することです。
⑫ 住所がつながらない場合の確認手順
実際に住所がつながらないことが分かった場合には、次のような順番で確認すると整理しやすくなります。
1.登記事項証明書を確認する
登記記録上の所有者の住所・氏名を確認します。
2.亡くなった方の住民票の除票を取得する
本籍や前住所の記載などを確認します。
3.戸籍の附票を調べる
過去の住所が記載されていないか確認します。必要に応じて古い附票についても調査します。
4.戸籍の本籍を確認する
登記記録上の住所と一致する本籍がないか確認します。
5.権利証を探す
亡くなった方名義の登記済証や登記識別情報通知書などが残っていないか確認します。
6.固定資産税関係の資料を確認する
納税証明書や評価証明書などを取得し、不動産の表示や所有者・納税義務者の情報を確認します。
7.必要に応じて追加資料を準備する
不在住証明書・不在籍証明書、上申書などの要否を検討します。
このように、利用できる資料を順番に確認することで、不要な書類の取得を避けられる場合もあります。
⑬ 必要書類は法務局に確認した方がいい?
住所のつながりが確認できない場合には、不動産を管轄する法務局で必要な資料を確認することが重要です。
特に、次のようなケースです。
住民票の除票がすでに廃棄されている
戸籍の附票にも登記上の住所が記載されていない
登記済証も残っていない
氏名の変更もあって、同一性の確認が複雑
数十年前の相続登記が放置されている
このような場合、提出する資料の内容によって、登記官が同一性を認められるかどうかが変わることがあります。
例えば、固定資産評価証明書だけで十分なのか、ほかの証明書と組み合わせる必要があるのかといった点です。
住所がつながらないというだけで、最初から上申書を作成するのではなく、利用できる資料を確認してから手続きを進めることが大切です。
⑭ 相続登記の義務化にも注意
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
相続によって不動産を取得したことを知った場合には、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、2024年4月1日より前に発生した相続についても、義務化の対象になります。
以前から相続による不動産の取得を知っていた場合には、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります。
古い住所の記録が取得できない場合には、資料の調査に時間がかかることがあります。
そのため、期限が近づいてから準備を始めるのではなく、余裕を持って調査を進めることが大切です。
まとめ
相続登記では、登記記録上の所有者と亡くなった方が同一人物であることを確認する必要があります。
しかし、亡くなった方の住所が何度も変わっていたり、古い住民票が廃棄されていたりすると、住所のつながりを確認できないことがあります。
今回のポイントを整理すると、
登記記録上の住所と死亡時の住所が異なることはある
同一人物であることを確認するため、住民票の除票や戸籍の附票などを利用する
住民票の除票などの保存期間は2019年に150年間へ延長された
保存期間の延長前に廃棄された記録は、取得できないことがある
住所がつながらなくても、別の資料によって相続登記ができる場合がある
登記記録上の住所と本籍が一致している場合には、戸籍が役立つことがある
亡くなった方名義の権利証が同一性の確認資料になる場合がある
固定資産税関係の証明書や不在住・不在籍証明書などを利用する方法がある
2023年の法務省通知により、一定の条件を満たせば相続人全員の上申書が不要となる場合がある
通常の相続登記では、亡くなった方の住所変更登記を先に行う必要はない
ということになります。
相続登記で住所がつながらない場合でも、すぐに登記ができないと判断する必要はありません。
まずは、住民票の除票や戸籍の附票、戸籍の本籍、権利証などを順番に確認します。
そして、必要に応じて固定資産税関係の証明書などを組み合わせ、登記記録上の所有者と亡くなった方の同一性を確認します。
住所の履歴を完全に確認できない場合でも、別の資料によって同一性を証明できることがあります。
ただし、必要な資料は個々の事情によって異なるため、登記手続きに利用できる書類を確認しながら進めることが大切です。
