2026年10月27日火曜日

相続手続きに役立つ制度⑦ どれを使えばいい?6つの制度をケース別に整理

 


どれを使えばいい?6つの制度をケース別に整理

これまで6回にわたって、相続手続きに役立つ制度をご紹介してきました。

法定相続情報証明制度、相続人申告登記、所有不動産記録証明制度……。

名前だけ聞くと、何だか似たような制度ばかりですよね。

「結局、どれを使えばいいの?」

そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。

実は、これらの制度はそれぞれ目的が違います。

今回はシリーズの最終回として、具体的な場面ごとに使い分けを整理してみたいと思います。


① 銀行や法務局に何度も戸籍を提出するのが大変

こんなときに役立つのが、法定相続情報証明制度です。

相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍など、多くの書類が必要になることがあります。

銀行が何行もあったり、不動産の相続登記も必要だったりすると、そのたびに戸籍を提出するのは大変ですよね。

法定相続情報証明制度を利用すれば、法務局が認証した法定相続情報一覧図の写しを、戸籍一式の代わりに使える場合があります。

複数の相続手続きを進める際に便利な制度です。


② 相続した不動産が全部でどれだけあるか分からない

そんな場合は、所有不動産記録証明制度を検討できます。

2026年2月から始まった制度で、亡くなった方が登記簿上の所有者になっている不動産を、全国を対象に検索できます。

「実家以外にも土地があるらしい」

「田舎に山林があると聞いているけれど、場所が分からない」

そんなときに役立ちます。

ただし、過去の住所で登記された不動産などは、検索条件によって見つからない可能性があります。

固定資産税の通知書や名寄帳なども併せて確認することが大切です。


③ 遺産分割協議がまとまらず、相続登記の期限が迫っている

こんな場合に検討したいのが、相続人申告登記です。

2024年4月から相続登記が義務化され、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記する必要があります。

しかし、相続人同士で話し合いがまとまらないこともありますよね。

相続人申告登記を利用すれば、相続人の一人からでも申出ができ、申出をした人について基本的な相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。

ただし、これだけでは不動産の名義変更は完了しません。

後から遺産分割がまとまった場合には、その内容に基づく相続登記が別途必要になります。


④ 昔亡くなった親の名義のまま、不動産を放置している

この場合は、相続登記の義務化に注意が必要です。

2024年4月1日より前に発生した相続も、義務化の対象になっています。

以前から不動産を相続したことを知っていた場合、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります。

「親が亡くなったのは20年前だから関係ない」

というわけではないんです。

相続人が増えたり、必要な書類が取得しにくくなったりする前に、確認しておきたいところですね。


⑤ 相続した土地が不要で、売却も難しい

そんなときの選択肢の一つが、相続土地国庫帰属制度です。

相続などで取得した土地を、一定の条件のもとで国に引き取ってもらえる制度です。

例えば、遠方の土地を相続したけれど、利用する予定がなく、管理も難しい場合などです。

ただし、建物が残っている土地や、管理に大きな費用がかかる土地などは、引き取ってもらえないことがあります。

申請時の審査手数料や、承認後の負担金も必要です。

不要な土地なら何でも無料で国が引き取ってくれる、という制度ではありません。

売却や譲渡などの方法とも比較して検討したいですね。


⑥ 相続登記が終わった後に引っ越した

この場合に知っておきたいのが、スマート変更登記です。

2026年4月から、不動産所有者の住所や氏名の変更登記も義務化されました。

原則として、変更日から2年以内に登記が必要です。

ただし、あらかじめ検索用情報を申し出ておけば、法務局が住所などの変更を確認し、本人の了解を得たうえで、職権で変更登記を行う仕組みがあります。

これがスマート変更登記です。

相続登記をする際にも、原則として検索用情報を申し出ることになっています。

なお、申出をすればすぐに登記が変更されるわけではありません。

不動産の売却などで急いで住所変更登記が必要な場合には、通常の変更登記を申請することになります。


制度を使えば相続手続きが全部終わるわけではありません

ここは最後にお伝えしておきたいところです。

今回ご紹介した制度は、相続手続きを便利にしたり、負担を軽くしたりするためのものです。

しかし、どれか一つを利用すれば、すべての相続手続きが終わるというわけではありません。

例えば、法定相続情報一覧図を取得しても、預貯金の払戻しや不動産の相続登記が自動的に完了するわけではありません。

相続人申告登記をしても、不動産の名義変更が終わるわけではありません。

また、所有不動産記録証明書を取得しても、すべての不動産が必ず見つかるとは限りません。

それぞれの制度で「何ができるのか」「何ができないのか」を理解して利用することが大切です。


まとめ

相続手続きは、戸籍の収集から財産調査、遺産分割、不動産の名義変更まで、さまざまな作業が必要になります。

以前は手間のかかった手続きも、新しい制度によって少しずつ便利になってきています。

一方で、制度が増えたことで、かえって分かりにくくなった部分もあるかもしれません。

今回のシリーズが、そんな制度を整理するための参考になればうれしいです。

これで「相続手続きに役立つ制度」全7回は終了です。

今後も、新しい制度や法律の改正など、相続手続きに関係する情報をご紹介していきたいと思います。