遺言と死後事務委任契約の違い|どちらを準備すればいい?
「遺言書を作っておけば、亡くなった後のことは全部お願いできるのでは?」
死後事務委任契約について説明すると、このように思われる方もいるかもしれません。
しかし、遺言と死後事務委任契約は、それぞれ役割が違います。
簡単にいうと、
遺言
→ 自分の財産を誰に引き継ぐかなどを決める
死後事務委任契約
→ 葬儀や納骨、病院・施設の精算、住居の整理など、亡くなった後の実際の手続きをお願いする
という違いがあります。
どちらか一方だけで十分とは限らず、希望する内容によっては遺言と死後事務委任契約を組み合わせることが大切です。
遺言で決めること
遺言は、法律で定められた方式によって、自分が亡くなった後の財産の承継などについて意思を残す制度です。
例えば、
・自宅を長男に相続させる
・預貯金を特定の人に遺贈する
・遺言執行者を指定する
・祭祀を承継する人を指定する
などがあります。
遺言によって法的な効力を持たせることができる事項は、法律上一定の範囲に限られています。
つまり、
「誰に財産を残したいのか」
を決めるのであれば、基本的には遺言の役割です。
死後事務委任契約で決めること
一方、死後事務委任契約は、
本人が亡くなった後に必要になる具体的な事務
を第三者へ依頼しておく契約です。
例えば、
などです。
遺言だけでは、こうした葬儀や納骨、関係者への連絡、医療費や施設利用料の支払いなどを十分に対応できない場合があります。
そこで、実際の死亡後の手続きをお願いするために死後事務委任契約を利用します。
「葬儀は家族だけで簡単に」と遺言に書けばいい?
遺言書に、
「葬儀は家族だけで行ってほしい」
「海へ散骨してほしい」
といった希望を書くこと自体はできます。
しかし、こうした内容は通常、付言事項として本人の希望を伝えるものとなり、必ずしも法的な拘束力が生じるわけではありません。
そのため、
「この葬儀会社へ連絡してほしい」
「葬儀費用は○万円以内にしてほしい」
「この寺院へ連絡して、この墓地へ納骨してほしい」
というように、実際に誰かに行ってもらいたいのであれば、死後事務委任契約として具体的に定めておく方が適しています。
財産を渡すことを死後事務委任契約で決めてもいい?
ここは注意が必要です。
例えば、
「私が亡くなったら、友人に500万円渡してください」
という内容です。
これは単純な死後事務ではなく、財産を死亡後に誰へ帰属させるかという問題です。
本来遺言によって定めるべき事項を、死後事務委任契約によって処理しようとすると、遺言制度との関係が問題になる場合があります。
そのため、
財産を誰に残すか → 遺言
死亡後の実務を誰にしてもらうか → 死後事務委任契約
と分けて考えることが重要です。
遺言執行者がいれば死後事務もしてくれる?
これも混同されやすいところです。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な行為を行います。
しかし、
遺言執行者=葬儀や納骨などをすべて行う人
というわけではありません。
遺言執行者の仕事と、死後事務受任者の仕事は別です。
もっとも、実務上は同じ専門職が、
遺言執行者と死後事務受任者を兼ねる
形にすることもあります。
そうしておくと、遺言の執行と死亡後の事務を連携して進めやすくなります。
遺言と死後事務委任契約を一緒に作るメリット
例えば、身寄りのない方が、
「亡くなった後、葬儀と納骨をしてもらい、残った財産は甥に渡したい」
と考えているとします。
この場合、
葬儀・納骨など
→ 死後事務委任契約
残った財産を甥に渡す
→ 遺言
という役割分担になります。
さらに、
生前の見守り
→ 見守り契約
元気なうちの財産管理
→ 財産管理契約
判断能力が低下した後
→ 任意後見契約
財産の承継
→ 遺言
死亡後の手続き
→ 死後事務委任契約
という形で、生前から死亡後まで一続きで準備することもできます。
遺言と死後事務委任契約、どちらが必要?
これは、その方が何を心配しているかによって変わります。
例えば、
「財産を誰に残すか決めたい」
→ 遺言
「葬儀や納骨を誰かにお願いしたい」
→ 死後事務委任契約
「両方とも心配」
→ 遺言+死後事務委任契約
となります。
特に、身寄りがない方や親族に負担をかけたくない方の場合には、どちらか一方だけではなく、両方を一緒に検討した方がよい場合があります。
死後事務委任契約は公正証書で作成するのがおすすめです
死後事務委任契約は、法律上、公正証書でなければ成立しない契約ではありません。
しかし、実際に契約を実行する時には本人はすでに亡くなっています。
そのため、
本人が本当にこの契約をしたのか
どのような内容を依頼したのか
を、死亡後に明確に示せるようにしておくことが重要です。
詳しくは、松岡司法書士事務所のホームページをご覧ください。
