2026年10月26日月曜日

会社の登記こんなときどうする?④ 代表取締役の住所が変わったら?住所非表示措置も解説

 


代表取締役の住所が変わったら?住所非表示措置も解説

会社の本店は変わっていない。

でも、代表取締役が引っ越した。

こういう場合、

「会社の住所はそのままだから、登記は必要ないのでは?」

と思ってしまうことがあります。

ところが、株式会社では、代表取締役個人の住所も登記事項です。

そのため、代表取締役が引っ越した場合には、会社の本店が変わっていなくても、住所変更登記が必要になります。

また、2024年10月からは、一定の要件を満たすことで代表取締役の住所の一部を登記事項証明書などに表示しない「代表取締役等住所非表示措置」も始まりました。

今回は、代表取締役の住所変更登記と住所非表示措置について、必要書類も含めて整理します。


① 会社の本店が変わらなくても、代表取締役の住所変更登記は必要?

株式会社では、会社の本店所在地とは別に、代表取締役個人の住所も登記されています。

例えば、

  • 会社の本店は兵庫県芦屋市のまま

  • 代表取締役だけが西宮市へ引っ越した

という場合です。

この場合、会社の本店移転登記は必要ありませんが、代表取締役の住所変更登記は必要になります。

会社の住所と代表取締役個人の住所は、それぞれ別の登記事項だからです。


② 登記はいつまでにする?

代表取締役の住所変更登記は、原則として住所移転の日から2週間以内に申請する必要があります。

登記申請先は、会社の本店所在地を管轄する法務局です。

住所変更の登記を忘れていた場合でも、期限を過ぎたことだけで登記申請ができなくなるわけではありません。

ただし、登記を怠った場合には、代表者が過料の対象となる可能性があります。

引っ越し後は、住民票の異動や運転免許証の住所変更などに気を取られがちですが、会社の登記も忘れないようにしたいですね。


③ 通常の住所変更登記に必要な書類は?

代表取締役の住所変更登記は、商業登記の中では比較的シンプルな手続きです。

通常の引っ越しによる住所変更であれば、基本的には次の書類で申請できます。

必要な書類

  • 株式会社変更登記申請書

  • 登録免許税の納付に必要な収入印紙など(書面申請の場合)

  • 委任状(司法書士などの代理人に依頼する場合)

一方、通常の住所変更登記では、原則として次の書類を添付する必要はありません。

  • 住民票

  • 戸籍謄本

  • 印鑑証明書

  • 株主総会議事録

  • 取締役会議事録

代表取締役の住所変更は、株主総会などで決議する事項ではないためです。

ただし、後ほど説明する住所非表示措置を同時に申し出る場合には、別途書類が必要になります。


④ 登録免許税はいくら?

代表取締役の住所変更登記にかかる登録免許税は、原則として次のとおりです。

株式会社の資本金登録免許税
1億円以下1万円
1億円超3万円

司法書士などに登記申請を依頼する場合には、別途報酬が必要です。

なお、市町村の行政区画変更などによって住所の表示が変更された場合には、一定の要件のもとで登録免許税が非課税となることがあります。


⑤ 代表取締役等住所非表示措置とは?

2024年10月1日から「代表取締役等住所非表示措置」という制度が始まりました。

これは、一定の要件を満たした場合に、代表取締役等の住所の一部を登記事項証明書などに表示しないことができる制度です。

例えば、代表取締役の住所が次のような場合です。

従来の表示

兵庫県芦屋市○○町1丁目2番3号

住所非表示措置を受けた後の表示

兵庫県芦屋市

このように、市区町村までの表示となり、それより後の住所は表示されなくなります。

代表取締役の自宅住所が広く公開されることに抵抗がある方にとって、プライバシー保護につながる制度です。

ただし、登記簿から住所の情報そのものがなくなるわけではありません。


⑥ 住所非表示措置は誰でも利用できる?

住所非表示措置の対象となるのは、原則として株式会社の代表取締役、代表執行役、代表清算人です。

合同会社の代表社員や特例有限会社の代表取締役などは、対象になりません。

また、希望すればいつでも単独で申し出られるわけではありません。

原則として、次のような登記申請と同時に申し出る必要があります。

  • 株式会社の設立登記

  • 代表取締役の就任登記

  • 代表取締役の住所変更登記

  • 代表取締役の重任登記

そのほか、一定の場合の本店移転登記などと同時に申し出ることもできます。

今回のテーマである代表取締役の住所変更登記も、住所非表示措置を申し出る機会の一つです。


⑦ 住所非表示措置を申し出るときの必要書類は?

ここは、通常の住所変更登記との大きな違いです。

通常の代表取締役の住所変更登記では、住民票などを添付する必要はありません。

しかし、住所非表示措置を同時に申し出る場合には、追加の書類が必要になります。

上場会社以外の株式会社が初めて住所非表示措置を申し出る場合、原則として次の3種類の書類が必要です。

1. 会社の本店が実在することを証明する書類

例えば、次のような書類です。

  • 会社を受取人として本店所在地に送付された配達証明郵便に関する書類

  • 登記申請を受任した資格者代理人が、会社の本店所在地における実在性を確認した書面

配達証明郵便を利用する場合には、所定の配達証明書と郵便物受領証が必要です。

2. 代表取締役の住所を証明する書類

例えば、次のような書類です。

  • 住民票の写し

  • 戸籍の附票の写し

  • 印鑑証明書

通常の住所変更登記では住民票の添付は原則不要ですが、住所非表示措置を申し出る場合には、こうした住所を証明する書類が必要になります。

3. 会社の実質的支配者を確認できる書類

実質的支配者とは、会社を実質的に支配している個人などをいいます。

例えば、次のような書類が該当します。

  • 司法書士が実質的支配者の本人特定事項を確認した記録の写し

  • 公証人の認証を受けた所定の書面

  • 設立時の定款認証に伴う実質的支配者の申告受理及び認証証明書(利用できる期間に制限があります)

なお、一定の期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合などには、添付を省略できることがあります。

また、すでに住所非表示措置を受けている株式会社が改めて申し出る場合には、原則として代表取締役等の住所を証明する書類のみで足りることとされています。

上場会社の場合にも、別の添付書類の取扱いが定められています。

このように、住所非表示措置では通常の住所変更登記よりも準備する書類が多くなるため、事前の確認が必要です。


⑧ 住所非表示措置には注意点もある

住所非表示措置はプライバシー保護につながりますが、注意すべき点もあります。

例えば、登記事項証明書だけでは代表取締役の詳しい住所を確認できなくなります。

そのため、次のような場面で追加の確認書類を求められることがあります。

  • 金融機関から融資を受けるとき

  • 会社が不動産取引を行うとき

  • 代表者の住所確認が必要となる契約手続き

また、住所非表示措置を受けても、住所変更登記の義務がなくなるわけではありません。

代表取締役が再び引っ越した場合には、原則として住所変更登記が必要です。

新しい住所についても非表示にしたい場合には、その住所変更登記と同時に、改めて住所非表示措置を申し出る必要があります。

なお、住所に変更がない重任登記などでは、既存の非表示措置が引き続き適用される場合があります。

住所非表示措置は、過去に登記された住所をすべて消去する制度でもありません。


⑨ 住所非表示措置は利用した方がいい?

これは、会社の状況によって判断が分かれるところです。

例えば、

  • 代表取締役の自宅住所を広く公開したくない

  • 個人のプライバシー保護を重視したい

  • 会社を設立する際に自宅住所の公開が気になっている

といった場合には、検討する価値があります。

一方で、融資や不動産取引などで代表取締役の住所を証明する機会が多い会社では、かえって手続きが増える可能性もあります。

非表示にできるから必ず利用した方がよい、というものではありません。

制度のメリットだけでなく、利用後の影響も確認して判断したいですね。


⑩ 代表取締役の住所変更と本店移転は別の手続き

最後に、混同しやすい点を整理しておきます。

会社の本店が移転した場合

→ 本店移転登記

代表取締役個人の住所が変わった場合

→ 代表取締役の住所変更登記

両方が同時に変更されることもありますが、その場合には、それぞれについて登記が必要かどうかを確認します。

なお、前回の記事では会社の本店移転登記について取り上げています。

会社の本店と代表取締役個人の住所は、別々に管理する必要があることを押さえておきましょう。


まとめ

代表取締役が引っ越した場合、会社の本店が変わっていなくても、原則として住所変更登記が必要です。

今回のポイントは次のとおりです。

  • 代表取締役の住所は株式会社の登記事項

  • 住所変更登記は原則2週間以内

  • 通常の住所変更登記では、住民票などの添付は原則不要

  • 登録免許税は、資本金1億円以下なら1万円、1億円超なら3万円

  • 住所非表示措置を利用すると、市区町村より後の住所を登記事項証明書などに表示しないことができる

  • 住所非表示措置には追加書類と所定の申出が必要

  • 非表示措置を受けても、住所変更登記の義務はなくならない

代表取締役の住所変更は、会社の本店移転と違って見落としやすい手続きです。

また、住所非表示措置という新しい制度ができたことで、住所をどこまで公開するかについても選択肢が増えました。

登記の手続きだけでなく、会社の取引や運営への影響も考えて判断したいですね。

参考資料

法務省|代表取締役等住所非表示措置について

法務省|商業・法人登記Q&A

法務局|商業・法人登記の申請書様式