相続放棄を司法書士に依頼すると費用はいくら?必要書類と手続きの流れ
相続放棄をしようと思っても、
「自分で家庭裁判所に手続きできるの?」
「司法書士にお願いしたら、費用はいくらかかる?」
「そもそも何の書類を集めればいいの?」
と、わからないことも多いのではないでしょうか。
相続放棄は、ご自身で手続きすることもできますが、司法書士に書類の作成を依頼することもできます。
今回は、相続放棄に必要な費用や書類、司法書士に依頼した場合の手続きの流れについてご紹介します。
相続放棄にはどんな費用がかかる?
相続放棄に必要な費用は、大きく分けて次の3つです。
家庭裁判所へ納める費用
戸籍などの取得費用や郵送料
司法書士などの専門家に依頼する場合の報酬
自分で手続きする場合には司法書士報酬は必要ありませんが、裁判所に納める費用や書類の取得費用は原則として必要です。
それぞれ見ていきましょう。
家庭裁判所に納める費用はいくら?
相続放棄の申述をする際には、申述人1人につき800円分の収入印紙が必要です。
例えば、兄弟3人が相続放棄をする場合には、
800円 × 3人 = 2,400円
となります。
このほか、家庭裁判所からの連絡などに使う郵便切手等の費用が必要です。
郵便料は裁判所によって異なるため、申述先の家庭裁判所で確認します。
さらに、戸籍謄本などを取得する費用や、書類を郵送する場合の郵送料もかかります。
つまり、裁判所への申述手数料自体はそれほど高額ではありません。
ただし、必要な戸籍が多い場合には、その取得費用や手間も考える必要があります。
相続放棄にはどんな書類が必要?
相続放棄の申述には、主に次のような書類が必要です。
相続放棄申述書
亡くなった方の住民票除票または戸籍の附票
亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本など
相続放棄をする方の戸籍謄本
ただし、これは基本的な例です。
亡くなった方との続柄によって、必要な戸籍の範囲が変わります。
例えば、亡くなった方の子どもが相続放棄する場合と、兄弟姉妹が相続放棄する場合とでは、集める戸籍の範囲が異なります。
兄弟姉妹が相続人になる場合には、先順位の相続人がいないことなども確認する必要があるため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍や、父母の死亡を確認できる戸籍などが必要になることがあります。
戸籍が何通も必要になると、集めるだけでもなかなか大変なんですよね。
なお、同じ亡くなった方について複数の相続人が申述する場合には、共通する戸籍を重複して提出する必要がない場合もあります。
相続放棄申述書には何を書くの?
相続放棄申述書には、亡くなった方や相続放棄をする方の情報などを記載します。
主な内容は、
相続放棄をする方の氏名・住所など
亡くなった方の氏名・最後の住所など
亡くなった日
相続の開始を知った日
相続放棄をする理由
相続財産の概況
などです。
裁判所のホームページには申述書の書式や記載例も公開されています。
そのため、必要書類がそろい、内容を確認できれば、ご自身で作成することも可能です。
ただし、特に注意したいのが**「相続の開始を知った日」**です。
相続放棄には原則3か月という期限があるため、この日付は重要になります。
亡くなった日と相続の開始を知った日が異なる場合などには、その事情を正確に確認する必要があります。
相続放棄の手続きはどこでする?
相続放棄の申述先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
例えば、亡くなった方の最後の住所地が神戸市内であれば、その住所を管轄する家庭裁判所に申述します。
相続放棄をする方が大阪や東京に住んでいても、申述先は原則として亡くなった方の最後の住所地を基準に決まります。
住んでいる場所が離れている場合には、郵送で申述書類を提出することもできます。
ただし、期限がある手続きですので、郵送の場合には到着日にも注意が必要ですね。
相続放棄の手続きはどのように進む?
一般的には、次のような流れで進みます。
① 相続人と相続財産の確認
まず、亡くなった方との関係や、借金などの状況を確認します。
相続放棄の期限がいつまでなのかも重要です。
② 必要な戸籍などの収集
亡くなった方との続柄に応じて、必要書類をそろえます。
③ 相続放棄申述書の作成
申述書に必要事項を記載します。
④ 家庭裁判所への提出
必要な書類と収入印紙などを準備し、管轄する家庭裁判所へ提出します。
⑤ 家庭裁判所での審査
家庭裁判所から照会書などが届く場合があります。
照会があった場合には、相続放棄をする方が内容を確認して回答します。
⑥ 相続放棄の申述の受理
家庭裁判所で申述が受理されると、通常、相続放棄申述受理通知書が送付されます。
これで家庭裁判所における申述の手続きは一区切りとなります。
なお、裁判所に申述が受理されたからといって、その相続放棄の効力が後から争われる可能性までなくなるわけではありません。
司法書士に依頼すると何をしてもらえる?
司法書士は、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書などの書類を作成することができます。
また、その書類作成に必要な範囲で、戸籍の収集や相続関係の確認、必要書類の整理などを行います。
例えば、
「どの戸籍が必要なのかわからない」
「亡くなった方の兄弟姉妹なので、戸籍がたくさん必要になる」
「相続放棄申述書の書き方がわからない」
という場合です。
こうした書類の収集や作成を依頼できるのが、司法書士に依頼するメリットの一つです。
ただし、ここで一つ注意があります。
司法書士は、家庭裁判所における相続放棄の手続きについて、弁護士のように申述人の代理人になることはできません。
司法書士の業務は、基本的に家庭裁判所に提出する書類の作成と、それに関する相談などです。
また、債権者との間で紛争が生じている場合には、別途、弁護士への相談が必要になることもあります。
司法書士の報酬はいくら?
司法書士に相続放棄の書類作成を依頼する場合には、司法書士報酬が発生します。
ただし、司法書士の報酬は全国一律ではありません。
各事務所が報酬を定めており、依頼する内容によっても変わります。
例えば、
相続放棄をする方の人数
戸籍収集の範囲
亡くなってからの経過期間
相続関係の複雑さ
特別な事情説明や追加資料が必要かどうか
などによって、必要となる作業が異なります。
相続放棄の申述書を作成するだけの場合と、戸籍収集から依頼する場合とでは、報酬が異なることもあるでしょう。
また、司法書士報酬とは別に、裁判所へ納める収入印紙や郵便料、戸籍取得費用などの実費が必要になることが一般的です。
依頼する際には、報酬額だけでなく、どこまでの手続きが含まれているのかを確認することが大切です。
亡くなってから3か月以上経っている場合は?
これまでのシリーズでも触れてきましたが、相続放棄には原則として3か月という期限があります。
ただし、必ずしも亡くなった日から3か月というわけではありません。
例えば、長年疎遠だった親族が亡くなったことを後から知った場合や、先順位の相続人が相続放棄したことで初めて相続人になった場合などです。
そのような場合には、いつ自分のために相続が開始したことを知ったのかが重要になります。
また、亡くなってから3か月以上経過した後に借金の存在を知った場合でも、一定の事情があれば相続放棄が認められる可能性があります。
ただし、借金を知らなかったという理由だけで、必ず期限が延びるわけではありません。
こうした場合には、債権者からの通知書など、事情を説明する資料が必要になることもあります。
そのため、通常の申述よりも慎重な確認が必要になります。
自分で手続きするか、司法書士に依頼するか
相続放棄は、必ず専門家に依頼しなければならない手続きではありません。
相続関係が単純で、必要な戸籍も少なく、期限まで余裕がある場合には、ご自身で手続きを進めることも十分考えられます。
一方で、
「戸籍の収集が複雑」
「仕事が忙しくて書類を集める時間がない」
「相続人が兄弟姉妹や甥・姪で、確認することが多い」
「相続放棄の期限が迫っている」
といった場合には、司法書士に書類作成を依頼することも選択肢になります。
ただし、専門家に依頼したからといって、家庭裁判所が必ず相続放棄の申述を受理するわけではありません。
大切なのは、相続関係やこれまでの経緯を正確に確認し、必要な書類を整えることです。
相続放棄の申述が受理された後は?
家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届いたら、その書類は大切に保管しておきましょう。
後日、債権者などから連絡が来た場合に、相続放棄の申述が受理されたことを説明する資料になるからです。
また、必要に応じて、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」の交付を受けることもできます。
証明書の交付には、1通につき150円の手数料が必要です。
ただし、すべての場合に証明書を取得しなければならないわけではありません。
提出先から求められた場合など、必要に応じて取得すればよいでしょう。
なお、相続放棄をした後でも、相続財産を現に占有している場合には、一定の保存義務が生じることがあります。
相続放棄をしたら、その後の財産の扱いについて何も考えなくてよいとは限らない点にも注意が必要です。
まとめ
相続放棄の申述には、申述人1人につき800円分の収入印紙のほか、郵便料や戸籍取得費用などが必要です。
司法書士に書類作成を依頼する場合には、別途報酬が発生します。
ただし、報酬は全国一律ではなく、相続人の人数や必要書類、個別の事情によって変わります。
相続放棄はご自身でも手続きできますが、戸籍の収集や申述書の作成が難しい場合には、専門家に依頼するという方法もあります。
そして、何より大切なのは期限です。
原則3か月という期限を意識しながら、財産や借金の状況を確認し、必要な手続きを進めることが重要です。
今回で相続放棄シリーズ全5回が終了です。
相続放棄は、亡くなった方の借金を引き継がないための制度ですが、手続きの期限や財産の扱い、ほかの相続人への影響など、注意したいことがいくつもあります。
このシリーズが、相続放棄について考える際の参考になれば幸いです。
