祖父の相続登記をしないうちに父も亡くなったら?数次相続とは
「祖父が亡くなったとき、不動産の名義変更をしなかった」
「その後、父も亡くなってしまった」
「土地が何十年も前に亡くなった人の名義になっている」
相続登記では、このようなケースが珍しくありません。
最初の相続手続きが終わらないうちに、相続人の一人が亡くなり、さらに相続が発生してしまうことがあります。
これを「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。
今回は、数次相続とはどのようなものなのか、具体例を使って整理します。
① 数次相続とは?
数次相続とは、最初の相続が発生した後、その相続に関する遺産分割などが終わらないうちに相続人が亡くなり、次の相続が発生することです。
例えば、祖父名義の土地があったとします。
【具体例】
2018年:祖父が死亡
祖父の土地について遺産分割や相続登記をしなかった
2024年:祖父の相続人である父も死亡
現在:土地は祖父名義のまま
この場合、祖父の死亡による相続と、父の死亡による相続が重なっています。
祖父の相続が終わっていないからといって、父の相続が発生しないわけではありません。
父が祖父の相続によって取得した権利も、父の死亡によって次の相続人へ承継されることになります。
そのため、祖父の土地を相続登記するには、祖父だけでなく父の相続関係についても確認する必要があります。
② 数次相続では誰が相続人になる?
例えば、祖父が亡くなったときの相続人が、祖母と父、叔父だったとします。
その後、祖父の遺産分割が終わらないうちに父が亡くなりました。
父には妻と子ども2人がいます。
この場合、祖父の相続について父が持っていた権利は、父の相続人に承継されます。
そのため、祖父の土地について遺産分割を行う場合、原則として次の方々が関係することになります。
祖母
叔父
父の妻
父の子ども2人
祖父が亡くなったときには相続人ではなかった父の妻も、父の相続を通じて、祖父の遺産分割に関係することがあるのです。
なお、実際に誰が協議に参加するかは、遺言書の有無や過去の遺産分割、相続放棄などの事情によって異なります。
③ 代襲相続とは何が違う?
数次相続と混同しやすいものに「代襲相続」があります。
どちらも、祖父と父が亡くなっているような場面で登場しますが、大きな違いがあります。
それは、亡くなった順番です。
代襲相続の場合
父が死亡
その後、祖父が死亡
父が祖父より先に亡くなっている場合、一定の要件を満たせば、父の子どもが父に代わって祖父の相続人になります。
これが代襲相続です。
数次相続の場合
祖父が死亡
その後、父が死亡
祖父が亡くなった時点では、父が祖父の相続人になっています。
その後、父が亡くなることで、父が承継した権利がさらに父の相続人へ引き継がれます。
これが数次相続です。
両者を比較すると、次のようになります。
| 比較項目 | 代襲相続 | 数次相続 |
|---|---|---|
| 死亡の順番 | 父 → 祖父 | 祖父 → 父 |
| 父は祖父の相続人になったか | 原則として ならない | なっている |
| 父の妻は祖父の相続に関係するか | 原則として 関係しない | 関係する場合がある |
この違いによって、相続関係や遺産分割協議に参加する人が変わることがあります。
④ 相続登記をしないまま何十年も経っていたら?
例えば、土地の登記名義人である祖父が30年前に亡くなっている場合です。
その後、父も亡くなり、さらに別の相続人も亡くなっているかもしれません。
こうした場合でも、相続から長期間経過しているという理由だけで相続登記ができなくなるわけではありません。
ただし、年月が経過するほど手続きが複雑になることがあります。
例えば、
相続人が増えている
遺産分割協議に参加する人が分からない
遠方に住んでいる相続人がいる
昔の戸籍を取得する必要がある
過去の遺産分割協議書が見つからない
といった問題です。
特に、数次相続が何回も発生している場合には、現在の相続関係を整理するだけでも多くの戸籍が必要になることがあります。
⑤ 数次相続の登記はどうやって進める?
数次相続だからといって、特別な種類の登記があるわけではありません。
基本的には、これまでに発生した相続を順番に確認し、必要な相続登記を行います。
一般的な流れは次のとおりです。
1.不動産の登記名義人を確認する
まず、登記事項証明書を取得し、現在誰の名義になっているのかを確認します。
2.最初に亡くなった方の相続人を調べる
祖父名義の不動産であれば、祖父が亡くなった時点の相続人を戸籍から確認します。
3.その後に亡くなった相続人を調べる
父など、最初の相続人のうち後から亡くなった方について、さらに相続関係を調査します。
4.遺産分割の有無を確認する
過去に遺産分割協議が成立していたのか、それとも未了のままなのかを確認します。
5.必要な相続登記を申請する
相続の経過や遺産分割の内容に応じて、登記申請を行います。
なお、数次相続では一定の条件を満たす場合に、複数回の相続を1件の登記申請で処理できることもあります。
しかし、すべての数次相続で中間の登記を省略できるわけではありません。
⑥ 相続登記の義務化にも注意
2024年4月1日から、相続登記が義務化されています。
不動産を相続によって取得したことを知った場合には、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
この義務化は、2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。
例えば、何十年も前に亡くなった祖父の土地について、以前から相続による取得を知っていた場合には、原則として2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります。
ただし、相続による取得を知った時期や、遺産分割の成立時期などによって期限が異なる場合があります。
数次相続では、相続関係を整理するまでに時間がかかることもあるため、早めに確認しておきたいですね。
⑦ 数次相続を放置するとどうなる?
数次相続になっている不動産を、そのまま放置していると、さらに相続が発生する可能性があります。
例えば、祖父の相続人が3人だったとしても、その3人のうち2人が亡くなり、それぞれに配偶者や子どもがいる場合には、手続きに関係する人が増えていきます。
さらに、その子どもたちにも相続が発生すると、相続関係は一層複雑になります。
そうなると、
遺産分割協議に時間がかかる
相続人全員の住所を調べる必要がある
不動産の売却が難しくなる
相続登記に必要な書類が増える
といった問題につながります。
相続人の人数が多くなれば、全員で話し合うこと自体が難しくなる場合もあります。
数次相続では、時間が経つほど解決が難しくなることがあるのです。
まとめ
数次相続とは、最初の相続手続きが終わらないうちに相続人が亡くなり、さらに相続が発生することです。
今回のポイントを整理すると、
数次相続では複数回の相続が重なっている
最初の相続人が亡くなると、その方の相続人にも権利が承継される
代襲相続とは亡くなった順番が異なる
相続から長期間経っていても、相続登記は可能
相続人が増えると、戸籍収集や遺産分割が複雑になる
2024年4月からの相続登記義務化にも注意が必要
ということになります。
「祖父名義の土地だから、もうどうにもならない」
ということではありません。
まずは登記名義人を確認し、最初の相続から現在までの関係を整理することが大切です。
数次相続や古い名義の不動産については、次のページでも手続きの流れや注意点を紹介しています。
▶ 数次相続・古い相続登記について詳しく見る(松岡司法書士事務所)
参考資料
