相続手続きに役立つ制度② 相続登記が間に合わない?「相続人申告登記」という方法があります
2024年4月から、相続登記が義務化されました。
不動産を相続したことを知ったら、原則として3年以内に相続登記をしなければなりません。
でも、実際の相続では、こんなこともあります。
「相続人同士で話し合いがまとまらない」
「相続人が多くて、なかなか連絡が取れない」
「誰が不動産を相続するのか決まっていない」
その間にも、登記の期限は近づいてきます。
そんなときに知っておきたいのが、「相続人申告登記」です。
相続人申告登記って何?
相続人申告登記とは、相続登記の申請義務を簡単な手続きで履行できるようにした制度です。
通常の相続登記では、相続人の確認や必要書類の収集など、さまざまな準備が必要になります。
ところが、相続人申告登記は、
登記簿上の所有者が亡くなったこと
自分がその所有者の相続人であること
を法務局に申し出る仕組みです。
期限内に申し出れば、申出をした人については、相続登記の基本的な申請義務を履行したものとみなされます。
相続人の一人だけでもできる?
できます。
例えば、お父さんが亡くなり、相続人が長男・長女・次男の3人だったとします。
長男は実家を相続したいけれど、長女と次男はまだ話し合いに応じていない。
そんな場合でも、長男は単独で相続人申告登記を申し出ることができます。
ただし、ここは注意が必要です。
長男が申し出ただけでは、長女と次男まで申請義務を履行したことにはなりません。
それぞれの相続人が義務を履行したものとみなされるためには、その人についても申出が必要です。
なお、委任を受けて複数の相続人の分をまとめて申し出ることもできます。
登記をすれば名義変更は終わるの?
実は、ここが一番大切なところです。
相続人申告登記をしても、不動産の所有者名義が相続人に変わるわけではありません。
登記簿には、申出をした相続人の氏名や住所などが付記されますが、所有権が誰に移ったのかを公示するものではないんです。
つまり、
相続人申告登記は、相続登記の義務に対応するための制度。
通常の相続登記は、不動産の名義を変更する手続き。
この2つは違います。
そのため、相続人申告登記をしただけでは、不動産を売却したり、抵当権を設定したりすることはできません。
あとから遺産分割がまとまったら?
例えば、相続人申告登記を済ませてから1年後に、遺産分割協議がまとまったとします。
「実家は長男が相続する」ということになれば、その内容に基づく通常の相続登記が必要です。
遺産分割が成立した場合には、原則として成立した日から3年以内に、その内容を反映した相続登記を申請しなければなりません。
相続人申告登記をしたからといって、その後の登記がすべて不要になるわけではないんですね。
昔の相続にも使えるの?
使えます。
2024年4月より前に発生した相続も、相続登記義務化の対象です。
例えば、10年前にお父さんが亡くなり、実家が今もお父さん名義のままになっている場合。
以前から相続による取得を知っていた不動産については、原則として2027年3月31日が申請期限になります。
もっとも、取得したことを知った時期によって期限が異なる場合もあります。
期限までに通常の相続登記が難しい場合には、相続人申告登記を利用することも考えられます。
費用や必要書類は?
相続人申告登記には、登録免許税がかかりません。
申出に必要となる基本的な書類は、
相続人申告登記の申出書
亡くなった方の相続人であることを確認できる戸籍など
申出人の住所を確認できる書類
などです。
具体的な相続関係によって必要書類は変わりますが、通常の法定相続分による相続登記と比べ、書類収集の負担が軽くなる場合があります。
自分で申出を行うこともでき、オンラインでの申出にも対応しています。
詳しい手続きについては、次のページでも確認できます。
まとめ
相続人申告登記は、相続登記の期限が迫っているのに、遺産分割協議がまとまらない場合などに役立つ制度です。
ただし、あくまでも相続登記の基本的な申請義務を履行するための方法であり、不動産の名義変更が完了するわけではありません。
遺産分割がまとまっている場合には、通常の相続登記を進めるのが基本です。
「相続人申告登記をすれば、もう相続登記をしなくていい」
と勘違いしないようにしたいですね。
