亡くなった親のスマホが解約できない。毎月の料金はどうなる?
「母が亡くなったのに、携帯電話の料金が毎月引き落とされている」
「スマホのパスワードが分からない。解約するにはスマホを開かないといけないの?」
「携帯電話を解約したのに、まだ請求書が届く。どうして?」
親が亡くなった後、銀行口座や不動産の相続手続きを進める一方で、意外と忘れやすいのが携帯電話やスマートフォンの解約です。
最近では、高齢の方でもスマートフォンを利用することが珍しくありません。
家族との連絡だけでなく、病院の予約、買い物、銀行口座の管理など、さまざまな目的で使用されています。
しかし、契約者が亡くなったからといって、携帯電話の契約が自動的に解約されるとは限りません。
そのため、亡くなった後も毎月の基本料金が発生する場合があります。
また、スマートフォン本体を分割払いで購入していた場合には、回線を解約しても端末代金の支払いが残ることがあります。
さらに、スマートフォンで契約していた動画配信サービスや有料アプリなどについては、携帯電話を解約しただけでは利用契約が終了しない場合があります。
今回は、亡くなった親のスマートフォンについて、解約方法が分からない場合の対応、死亡後の利用料金、端末代金の分割払い、有料サービスの解約、相続放棄との関係などを、具体的な事例をもとに説明します。
① 82歳の母が亡くなり、スマホの請求が届き続けた
例えば、次のような家庭を考えてみましょう。
母:82歳。芦屋市内で一人暮らし
長男:55歳。西宮市在住
長女:51歳。神戸市在住
父:すでに死亡
母は数年前からスマートフォンを使用していました。
以前は折りたたみ式の携帯電話を使っていましたが、長男に勧められてスマートフォンに変更しました。
家族との連絡や写真のやり取りに利用していたほか、動画を見ることもありました。
母が亡くなった後、長男と長女は自宅の片付けを始めました。
そのとき、母が使用していたスマートフォンが見つかりました。
ところが、画面にはロックがかかっており、暗証番号が分かりません。
長男は、携帯電話の解約を後回しにしていました。
すると、母が亡くなった翌月、携帯電話会社から料金の請求がありました。
明細には、次のような料金が記載されていました。
携帯電話の基本料金:約4,500円
スマートフォン本体の分割代金:約2,300円
有料サービスの利用料金:約980円
長男は驚きました。
「母はもうスマホを使っていないのに、まだ料金がかかるの?」
長女も心配になりました。
「解約したいけど、スマホの暗証番号が分からない。どうすればいいんだろう?」
このような場合、まず何から手続きを始めればよいのでしょうか。
② 契約者が亡くなっても、携帯電話は自動的に解約されない?
まず確認したいのは、携帯電話の通信契約についてです。
携帯電話は、通常、契約者と携帯電話会社との間で契約を締結し、通信サービスの提供を受けています。
契約者が亡くなった場合には、携帯電話会社に対して、死亡による解約や契約の承継などの手続きを行う必要があります。
例えば、母が亡くなった後、誰も携帯電話会社に連絡しなかった場合です。
母が亡くなったという事実を、携帯電話会社が当然に把握できるわけではありません。
そのため、契約が継続し、基本料金などの請求が続くことがあります。
ソフトバンクも公式サイトで、契約者が亡くなった場合には承継または解約の手続きが必要であり、手続きをしなければ毎月の基本料金の請求が続くことを案内しています。
また、NTTドコモも、契約者が亡くなった場合の解約手続きについて案内しています。
つまり、携帯電話を使用していないことと、通信契約が終了していることは別の問題です。
そのため、親が亡くなった場合には、できるだけ早く携帯電話会社へ連絡し、死亡による解約手続きを確認することが大切です。
③ 最初に、どこの携帯電話会社と契約していたのか確認する
今回の長男は、母がスマートフォンを使用していたことは知っていました。
しかし、どこの携帯電話会社と契約していたのかまでは把握していませんでした。
以前はドコモを利用していたようですが、その後、料金の安い会社に変更していた可能性もあります。
このような場合には、まず契約先を確認する必要があります。
例えば、次のような資料が手掛かりになります。
携帯電話会社から届いた請求書
銀行口座の引落明細
クレジットカードの利用明細
携帯電話の契約書
スマートフォン購入時の書類
契約先から届いていた郵便物
母が保管していたメモやエンディングノート
また、携帯電話会社と端末のメーカーは異なります。
例えば、母がiPhoneを使っていたからといって、必ずAppleと通信契約を結んでいるわけではありません。
iPhoneであっても、ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルなど、さまざまな通信会社と契約している可能性があります。
さらに、携帯電話会社と実際に料金を請求している事業者が異なる場合もあります。
そのため、まずは請求書や口座の明細などから、契約先を特定することが重要です。
スマートフォンの解約では、最初に通信契約の相手方を確認することが大切です。
④ スマホの暗証番号が分からなくても解約できる?
今回の母のスマートフォンには、画面ロックがかかっています。
長男も長女も暗証番号を知りません。
では、スマートフォンのロックを解除できなければ、通信契約の解約はできないのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
携帯電話会社では、契約者が亡くなった場合に、遺族などが死亡の事実を証明する書類を提出して解約する手続きを用意しています。
例えば、NTTドコモでは、死亡の事実が確認できる書類や来店者の本人確認書類などを準備して、死亡による解約手続きを行うことができます。
そのため、スマートフォンの画面ロックを解除できなくても、必要な書類などがそろっていれば解約できる場合があります。
ただし、携帯電話会社によって手続き方法は異なります。
また、SIMカードの提出などを求められる場合もあります。
スマートフォンが見つからない場合や、SIMカードが取り出せない場合には、その事情を携帯電話会社へ説明して確認しましょう。
なお、スマートフォンの画面ロックを解除することと、通信契約を解約することは、まったく別の手続きです。
スマートフォンを開けられないという理由だけで、解約を諦める必要はありません。
⑤ 解約には、どのような書類が必要?
携帯電話会社によって異なりますが、契約者が亡くなった場合には、一般に次のような書類を求められることがあります。
契約者が亡くなったことを確認できる書類
解約手続きを行う方の本人確認書類
契約者と手続者の関係を確認できる書類
携帯電話会社所定の申請書
SIMカードなど
例えば、死亡の事実を確認できる書類として、戸籍謄本、除籍謄本、住民票の除票、死亡診断書などが認められる場合があります。
ただし、どの書類が必要になるかは携帯電話会社によって異なります。
また、解約手続きをする方が子どもなのか、配偶者なのか、それ以外の代理人なのかによっても必要書類が異なることがあります。
例えば、長男と母の姓が異なる場合には、親子関係を確認できる戸籍謄本などが必要になる場合があります。
さらに、携帯電話会社によっては、所定の書類を郵送して解約する方法を採用しています。
そのため、店舗へ行く前に、携帯電話会社の公式サイトや問い合わせ窓口で必要書類を確認するとよいでしょう。
死亡による解約手続きでは、通常の契約者本人による解約とは異なる書類や手続きが用意されています。
⑥ 携帯電話会社によって、解約方法は違う?
死亡による解約手続きは、携帯電話会社によって異なります。
例えば、主な携帯電話会社では、次のような取扱いが案内されています。
NTTドコモの場合
ドコモショップなどで死亡による解約手続きを行うことができます。
死亡の事実を確認できる書類や来店者の本人確認書類などが必要になります。
また、契約を家族が引き継ぐ「承継」という手続きもあります。
ahamoの場合
ahamoでは、死亡による解約手続きについて、郵送による方法が案内されています。
ドコモと同じグループのサービスですが、手続き方法が異なる点に注意が必要です。
au・UQ mobileの場合
auやUQ mobileでは、契約者が亡くなった場合の解約手続きを店舗で受け付けています。
死亡の事実を確認できる書類や来店者の本人確認書類などが必要になります。
ソフトバンクの場合
ソフトバンクショップで死亡による解約手続きを行うことができます。
法定相続人が手続きする場合のほか、一定の要件を満たす代理人などによる手続きについても案内されています。
楽天モバイルの場合
楽天モバイルでは、契約者が亡くなった場合の解約手続きについて、原則として二親等以内の親族からの申出を受け付ける取扱いが案内されています。
所定の申請書類を郵送する方法が用意されています。
なお、これらは各社の公式案内に基づく一般的な説明です。
実際の手続き方法や必要書類は、契約しているサービスやプランなどによって異なる場合があります。
携帯電話会社が同じグループであっても、サービスによって解約方法が異なることがあります。
⑦ 死亡した日から、携帯電話料金はかからなくなる?
ここは特に注意したいところです。
例えば、母が9月10日に亡くなり、長男が10月20日に解約手続きを行った場合です。
長男は、母が亡くなった9月10日から料金がかからなくなると思っていました。
しかし、必ずしもそうなるわけではありません。
携帯電話会社では、通常、解約日までに発生した利用料金などについて請求する取扱いがあります。
例えば、NTTドコモでは、死亡による解約について、解約日までに利用した料金が請求されると案内しています。
また、料金プランによっては、解約月の基本料金が日割り計算されない場合もあります。
つまり、月の途中で解約したからといって、その月の基本料金が必ず日割りになるわけではありません。
さらに、解約手続きが完了していても、利用料金の締め日や請求時期の関係で、翌月以降に請求が届く場合があります。
このような場合には、請求書に記載されている利用期間を確認する必要があります。
亡くなった日、解約手続きをした日、料金の最終請求日が一致するとは限らないことに注意が必要です。
⑧ 携帯電話を解約したのに、請求が続くのはなぜ?
今回の長男は、母の携帯電話を解約しました。
しかし、翌月も請求が届きました。
「もう解約したはずなのに、どうして料金がかかるんだろう?」
このような場合には、請求の内訳を確認する必要があります。
例えば、次のような可能性があります。
解約前に利用した通信料金の請求
解約月の基本料金
通話料金などの後日請求
スマートフォン本体の分割代金
解約後も継続する有料オプション
携帯電話料金とは別に契約しているサービスの利用料金
携帯電話の通信契約を解約したとしても、これらの料金がすべて同時になくなるとは限りません。
例えば、auでは、携帯電話を解約した後も、端末代金の分割払いが残っている場合や、一部のオプション契約が継続している場合には、請求が続くことがあると案内しています。
そのため、解約後に請求書が届いた場合には、単に「まだ請求されている」と考えるのではなく、何についての請求なのかを確認することが大切です。
通信契約の解約後に請求があっても、必ずしも解約手続きが失敗しているとは限りません。
⑨ スマートフォン本体の分割払いはどうなる?
今回の母は、スマートフォンを分割払いで購入していました。
毎月の端末代金は約2,300円です。
まだ分割払いが終了しておらず、残額があります。
この場合、母が亡くなり、携帯電話の通信契約を解約したとしても、スマートフォン本体の分割代金が当然になくなるわけではありません。
例えば、NTTドコモでは、死亡による解約手続きについて、端末の分割支払金が残っている場合には、原則として引き続き支払いが必要になることを案内しています。
また、ソフトバンクでも、契約者の死亡に伴う解約について、端末代金の分割残債は継続して支払う必要があるとされています。
ただし、実際の支払方法については、契約内容によって異なります。
携帯電話会社との分割払い契約なのか、クレジットカード会社との分割払いなのかによっても、確認先が異なることがあります。
また、契約内容によっては、分割払いを継続する方法や、残額をまとめて支払う方法が問題になることがあります。
携帯電話の通信契約と、スマートフォン本体の購入代金の支払契約は、分けて考える必要があります。
⑩ 端末代金の残額は、相続人が支払うことになる?
それでは、母が亡くなった時点で、スマートフォン本体の代金が5万円残っていた場合を考えてみましょう。
母の相続人は、長男と長女の二人です。
この場合、母が負っていた端末代金の支払債務について、相続が問題になります。
民法第896条では、相続人は、亡くなった方の財産に属した権利義務を原則として承継すると定めています。
そのため、母が生前に負っていた端末代金の支払債務についても、原則として相続の対象になります。
例えば、相続人が長男と長女の二人で、法定相続分がそれぞれ2分の1の場合です。
一般的な金銭債務は、原則として法定相続分に応じて分割承継されます。
ただし、実際の契約内容や支払方法、相続放棄の有無などによって、取扱いが異なる場合があります。
また、相続人が複数いる場合には、携帯電話会社などに対し、どのように相続関係を届け出る必要があるのか確認することも大切です。
なお、子どもが相続人であるという理由だけで、子ども自身が新たな分割払い契約を締結したことになるわけではありません。
あくまで、亡くなった方の債務を相続によって承継するかどうかという問題です。
スマートフォン本体の分割代金が残っている場合には、通信契約の解約とは別に、残債と相続関係を確認する必要があります。
⑪ 動画配信サービスや有料アプリは、携帯電話を解約すれば止まる?
今回の母は、スマートフォンで動画を視聴することがありました。
長男が請求明細を確認すると、毎月約980円の料金が発生しています。
どうやら、有料の動画配信サービスを利用していたようです。
長男は、携帯電話を解約したので、このサービスも自動的に終了したと思っていました。
しかし、実際には契約が継続している場合があります。
例えば、次のようなサービスです。
動画配信サービス
音楽配信サービス
電子書籍の読み放題サービス
有料のニュースサービス
クラウドストレージ
セキュリティサービス
写真の保存サービス
アプリ内の定期購入
これらは、携帯電話会社との通信契約とは別に、サービス提供事業者と契約している場合があります。
例えば、スマートフォンの料金を支払っていたクレジットカードとは別に、動画配信サービスの利用料金が請求されている場合です。
この場合、携帯電話を解約しても、動画配信サービスの契約がそのまま残ることがあります。
国民生活センターも、亡くなった方が契約していたサブスクリプションサービスについて、解約手続きが行われないまま請求が続く事例を紹介しています。
携帯電話の解約と、スマートフォンで利用していた有料サービスの解約は、別の手続きになる場合があります。
⑫ サブスクのIDやパスワードが分からない場合は?
例えば、母が利用していた動画配信サービスの請求が毎月続いている場合です。
長男はサービスを解約しようとしましたが、母のログインIDもパスワードも分かりません。
このような場合には、まずサービス提供事業者へ問い合わせることが考えられます。
例えば、次のような事項を確認します。
契約者が亡くなった場合の解約方法
遺族などが解約を申し出ることができるか
死亡を確認できる書類が必要か
契約を特定するために必要な情報
解約が成立する日
解約後の請求の有無
ただし、事業者によっては、通常の解約手続きでログインIDやパスワードが必要とされる場合があります。
遺族が解約を申し出ても、契約内容の確認や必要書類の審査に時間がかかることがあります。
また、クレジットカードの利用明細に表示されている請求名と、実際のサービス名が異なる場合もあります。
このような場合には、クレジットカード会社へ請求元について確認することも考えられます。
ただし、クレジットカード会社で支払いを止めることと、サービス提供事業者との契約を解約することは同じではありません。
IDやパスワードが分からない場合には、勝手に契約が終了すると考えず、サービス提供事業者へ死亡による解約方法を確認することが大切です。
⑬ AppleやGoogleのアカウントはどうなる?
スマートフォンには、携帯電話会社との通信契約以外にも、重要なアカウントが登録されています。
例えば、iPhoneを使用していた方であれば、Apple Accountです。
Androidスマートフォンを使用していた方であれば、Googleアカウントを利用している場合があります。
これらのアカウントには、次のような情報が保存されていることがあります。
写真や動画
電子メール
連絡先
メモ
クラウド上のファイル
アプリの利用情報
有料サービスの契約情報
しかし、契約者が亡くなったからといって、家族が当然にそのアカウントへアクセスできるわけではありません。
例えば、Appleでは、故人のApple Accountへのアクセスや削除について、一定の申請手続きを用意しています。
生前に「故人アカウント管理連絡先」が設定されている場合には、所定の手続きを通じて、一定のデータにアクセスできる場合があります。
一方、Googleでも、亡くなった方のアカウントの閉鎖や、一定の場合のデータ取得について申請できる仕組みがあります。
ただし、Googleは故人のパスワードやログイン情報を遺族へ提供しないと案内しています。
また、Appleも、故人のアカウントに関する申請について、死亡を証明する書類などを求めることがあります。
スマートフォン本体を持っていることと、故人のApple AccountやGoogleアカウントを自由に利用できることは別の問題です。
⑭ 銀行口座やクレジットカードを止めれば、料金も止まる?
今回の長男は、母の銀行口座について、相続手続きを進めていました。
そのため、母の口座から携帯電話料金が引き落とされなくなりました。
長男は、これで携帯電話の料金も止まったと思いました。
しかし、銀行口座から引き落としができなくなったことと、携帯電話の契約が終了したことは異なります。
例えば、通信契約が継続している場合です。
引き落としができなくなっても、契約が継続している間は、料金が発生する場合があります。
また、料金が支払われないまま一定期間が経過すると、契約が利用停止や強制解約になる場合があります。
しかし、強制解約になったとしても、それまでに発生した未払料金が当然になくなるわけではありません。
同じことは、クレジットカード払いの有料サービスにも当てはまります。
カードが利用できなくなった場合でも、サービス提供事業者との契約が自動的に終了するとは限りません。
そのため、銀行口座やクレジットカードの手続きとは別に、通信契約や有料サービスの解約手続きを進める必要があります。
口座振替やカード決済が止まったことを、契約が解約されたことと混同しないよう注意が必要です。
⑮ 電話番号を残したい場合には、解約前に確認する
例えば、母が長年使用していた携帯電話番号です。
親族や知人がその番号を連絡先として登録しているほか、さまざまなサービスの連絡先にも使用していた可能性があります。
長男は、母の電話番号をしばらく残しておきたいと考えました。
このような場合には、解約する前に、携帯電話会社へ契約の承継ができるか確認することが考えられます。
例えば、NTTドコモでは、契約者が亡くなった場合に、家族が契約を引き継ぐ「承継」という手続きがあります。
ただし、承継する場合には、今後の通信料金の支払いなどについて新しい契約者側で対応する必要があります。
また、承継できるサービスやポイントなどの取扱いは、携帯電話会社によって異なります。
一方、契約を解約した場合には、従来の電話番号をそのまま使用し続けることは通常できません。
さらに、電話番号を解約した後に、その番号を利用した認証などが必要になると、手続きが難しくなる場合があります。
例えば、母がネット銀行やインターネット上のサービスに携帯電話番号を登録していた場合です。
ただし、このような場合でも、長男が母のアカウントに本人としてログインして相続手続きを進めてよいとは限りません。
ネット銀行などの相続手続きは、各金融機関の定める方法に従って行う必要があります。
電話番号を残す必要があるか、契約を承継する必要があるかについても、解約前に確認するとよいでしょう。
⑯ 相続放棄を考えている場合、携帯電話料金はどうなる?
ここで、別の状況を考えてみましょう。
今回の母には、預貯金がほとんどありませんでした。
一方、借金が残っていることが分かり、長男と長女は相続放棄を検討することになりました。
このような場合、母の携帯電話料金や端末代金の残額については、どのように考えればよいのでしょうか。
亡くなった方が生前に負っていた未払料金や端末代金の債務は、原則として相続の対象になります。
そのため、相続放棄が有効に成立すれば、原則として、亡くなった方の債務を相続によって承継することはありません。
ただし、相続放棄をすれば、携帯電話会社との契約が当然に解約されるというわけではありません。
また、相続放棄を検討している段階で、携帯電話を勝手に売却したり、本人の財産を自由に処分したりすると、相続の単純承認との関係で問題になる可能性があります。
一方、今後の料金発生を防ぐために通信契約の終了を申し出ることと、相続財産を処分することは、区別して検討する必要があります。
死亡による解約の申出が認められるか、どのような書類が必要かについては、携帯電話会社の取扱いも確認する必要があります。
特に、相続放棄後の申出を受け付けないなど、一定の制限を設けている携帯電話会社もあります。
そのため、相続放棄を検討している場合には、携帯電話の取扱いについても慎重に対応することが大切です。
相続放棄をすれば未払料金などの相続債務を承継しないことになりますが、通信契約の終了手続きについては別途確認が必要です。
⑰ 家族が手続きできない場合、第三者に依頼できる?
例えば、亡くなった方に身近な親族がいない場合です。
あるいは、子どもが遠方に住んでおり、携帯電話会社の店舗へ行くことが難しい場合もあります。
このような場合、第三者へ解約手続きを依頼できるのでしょうか。
携帯電話会社によっては、家族以外の方による死亡解約の手続きを認めている場合があります。
例えば、NTTドコモでは、家族や法定代理人以外の方、高齢者等終身サポート事業者などからの申出についても、所定の書類を用意することで手続きできる旨が案内されています。
また、ソフトバンクでは、法定相続人から遺産整理の委任を受けた方や、死後事務の委任を受けた方などについて、必要書類を定めています。
ただし、ソフトバンクでは、これらの委任を証明する契約書について、公正証書化されたものを求める取扱いが案内されています。
一方、すべての携帯電話会社が同じ範囲の第三者による解約を受け付けているわけではありません。
そのため、第三者が手続きを行う場合には、契約先の携帯電話会社へ、申出人の資格や必要書類について確認する必要があります。
また、遺産整理業務や死後事務委任契約に基づいて手続きを行う場合には、委任契約の内容や権限の範囲も確認する必要があります。
親族以外の方でも解約手続きを行える場合がありますが、委任状が一通あれば必ず手続きできるというわけではありません。
⑱ 今回のケースでは、どのように進めればよい?
それでは、最初の事例に戻ってみましょう。
82歳の母が亡くなり、長男と長女が相続手続きを進めています。
母が使用していたスマートフォンには画面ロックがかかっており、暗証番号は分かりません。
その一方で、携帯電話の基本料金、スマートフォン本体の分割代金、有料サービスの料金が請求されています。
このような場合には、次のような順番で進めることが考えられます。
1.携帯電話会社を確認する
まず、母がどこの携帯電話会社と契約していたのか確認します。
請求書や銀行口座の明細などを手掛かりにします。
2.死亡による解約手続きを確認する
携帯電話会社へ連絡し、契約者が亡くなった場合の解約方法や必要書類を確認します。
スマートフォンの暗証番号が分からないことも伝えます。
3.電話番号を残す必要があるか確認する
母の携帯電話番号を引き継ぐ必要があるかを検討します。
必要があれば、契約の承継が可能か確認します。
4.必要な書類を準備する
死亡を確認できる戸籍謄本などや、手続者の本人確認書類を準備します。
5.携帯電話の通信契約を解約する
携帯電話会社の案内に従って解約手続きを行います。
手続きが完了した日や受付内容などについても確認しておきます。
6.最後の請求内容を確認する
解約後に請求が届いた場合には、何についての請求なのかを確認します。
解約前の利用料金なのか、端末代金の分割払いなのかなどを区別します。
7.スマートフォン本体の残債を確認する
端末代金の分割払いが残っている場合には、支払残額や今後の支払方法を確認します。
8.有料サービスを確認する
銀行口座やクレジットカードの明細などを確認し、動画配信サービスや有料アプリなどの契約がないか調べます。
契約が残っている場合には、それぞれのサービス提供事業者へ解約方法を確認します。
9.スマートフォン本体の取扱いを決める
母が所有していたスマートフォン本体について、相続財産としての取扱いを確認します。
必要なデータが保存されている可能性があるため、初期化や処分は慎重に行います。
10.相続放棄を検討している場合には注意する
借金などの問題があり、相続放棄を検討している場合には、端末の処分や未払料金への対応について慎重に判断します。
今回のケースでは、母が亡くなった後も通信契約が継続していたため、料金が発生していました。
しかし、スマートフォンの暗証番号が分からないという理由だけで、解約できないわけではありません。
死亡を確認できる書類などを準備すれば、契約先の携帯電話会社で解約手続きを行える場合があります。
また、通信契約の解約後も、端末代金の分割払いと有料サービスの契約は別に確認する必要があります。
まずは携帯電話会社へ連絡し、通信契約を整理したうえで、残された支払義務や有料サービスについて確認していくことが大切です。
まとめ
親が亡くなった後、スマートフォンが残されていた場合には、通信契約や端末代金、有料サービスなど、複数の問題が生じることがあります。
特に、本人以外が契約内容を把握していない場合には、解約手続きが難しくなることがあります。
今回のポイントを整理すると、
契約者が亡くなっただけで、携帯電話の通信契約が自動的に解約されるとは限らない
通信契約が継続している間は、基本料金などが発生する場合がある
まず、どこの携帯電話会社と契約していたのか確認する
スマートフォンの暗証番号が分からなくても、死亡による解約手続きができる場合がある
死亡解約では、戸籍謄本など死亡を確認できる書類が必要になることがある
ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルなどで手続き方法が異なる
死亡日から当然に料金がかからなくなるわけではない
解約月の基本料金が日割り計算されない場合がある
解約後も、最終利用料金の請求が届く場合がある
スマートフォン本体の分割代金は、通信契約の解約によって当然に消滅するわけではない
端末代金の残債は、原則として相続の対象になる
動画配信サービスなどの契約は、携帯電話を解約しても継続する場合がある
有料サービスのIDやパスワードが分からない場合には、サービス提供事業者へ確認する
Apple AccountやGoogleアカウントは、通信契約とは別の手続きが必要になる場合がある
銀行口座やクレジットカードの支払いが止まっても、契約が当然に終了するわけではない
電話番号を引き継ぎたい場合には、解約前に承継の方法を確認する
相続放棄を検討している場合には、端末の処分や債務への対応に注意する
家族以外の方による解約が認められる場合もあるが、携帯電話会社によって条件が異なる
ということになります。
親が亡くなった後、スマートフォンが残されていると、まず電話を解約すればよいと考えるかもしれません。
しかし、最近のスマートフォンには、通信契約だけでなく、さまざまなサービスの契約や重要な情報が含まれています。
そのため、携帯電話の回線を解約しただけで、すべての契約や支払いが終了するとは限りません。
また、亡くなった方がスマートフォンの暗証番号やサービスの契約情報を家族に伝えていなかった場合には、解約や相続手続きに時間がかかることがあります。
こうした問題を防ぐためには、生前から契約しているサービスや支払方法を整理しておくことも重要です。
国民生活センターも、スマートフォンやインターネット上の契約について、デジタル終活の必要性を呼びかけています。
亡くなった親のスマートフォンを整理する際には、通信契約、端末代金、有料サービス、保存されているデータをそれぞれ分けて考え、一つずつ手続きを進めることが大切です。
