相続人の一人と連絡が取れなかったら?不動産の名義変更はどうする?
父親が亡くなり、実家の相続登記をすることになった。
相続人は、母親と子ども3人。
家族で話し合って、実家は母親の名義にしようということになった。
ところが……。
「そういえば、弟とはもう20年以上連絡を取っていないんだけど……」
電話番号も分からないし、今どこに住んでいるのかも知らない。
「ほかの家族は全員賛成しているんだから、弟抜きで手続きできないかな?」
こんな場合、不動産の名義変更はできるのでしょうか?
実は、相続人の一人と連絡が取れないというケースは、相続手続きで問題になることがあります。
ただし、連絡が取れない相続人がいるからといって、必ずしも手続きができなくなるわけではありません。
今回は、相続人と連絡が取れない場合の対処方法について、分かりやすくご紹介します。
相続人の一人を除いて遺産分割協議はできる?
まず、ここが大切なポイントです。
遺産分割協議とは、亡くなった方の財産を誰がどのように相続するのか、相続人同士で話し合って決めることです。
遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意が必要です。
例えば、相続人が母親と子ども3人の合計4人だった場合。
母親と子ども2人が賛成していても、残りの子ども1人を除いて遺産分割協議を成立させることはできません。
「長年付き合いがないから」
「どこに住んでいるのか分からないから」
という理由だけで、その人を相続人から外すことはできないのです。
ただし、有効な遺言書がある場合などには、相続人全員による遺産分割協議をせずに登記できることもあります。
まずは、遺言書の有無も確認しておきましょう。
住所が分からない場合はどうする?
「名前は分かるけれど、今どこに住んでいるのか分からない」
そんな場合は、まず住所を調べることから始めます。
相続人の調査では、戸籍謄本などを利用して相続関係を確認します。
そして、現在の住所を調べる際に役立つのが、「戸籍の附票(ふひょう)」です。
戸籍の附票は、本籍地の市区町村で管理されている書類で、住所の履歴などが記載されています。
相続手続きなどの正当な理由があり、必要な条件を満たせば、ほかの相続人の戸籍の附票を取得できる場合があります。
これによって、長年連絡を取っていなかった相続人の住所が分かることもあります。
ただし、住所が分かったからといって、必ず本人と連絡が取れるとは限りません。
また、戸籍の附票などでも現在の居場所が分からない場合もあります。
住所は分かったけれど、返事がない場合は?
住所が判明したので手紙を送ってみた。
ところが、何週間待っても返事がない。
「手紙は届いているはずなのに……」
そんな場合もあるでしょう。
まずは、相手に相続が発生したことや、必要な手続きについて、できるだけ分かりやすく伝えることが大切です。
長年交流がなかった相続人の場合、突然、遺産分割協議書への署名や押印を求められても、戸惑ってしまうかもしれません。
最初から署名や押印を求めるのではなく、相続の経緯や不動産の状況を説明することも考えられます。
ただし、相手から返事がないからといって、遺産分割協議に同意したものと扱うことはできません。
また、無理に回答を迫ることも避けたいところです。
どうしても話し合いが進まない場合は?
相続人の住所は分かっているものの、連絡しても応じてもらえない。
あるいは、遺産分割の内容について意見が一致しない。
そのような場合には、家庭裁判所の「遺産分割調停」を検討することになります。
遺産分割調停は、家庭裁判所で相続人同士が話し合い、遺産の分け方について合意を目指す手続きです。
裁判所の調停委員などが間に入り、それぞれの事情や希望を確認しながら進められます。
調停でも合意ができない場合には、原則として審判手続きに移り、裁判官が分割方法を判断することになります。
ただし、調停を申し立てれば必ずすぐに解決するというわけではありません。
相続人間で意見の対立がある場合には、弁護士への相談が必要になることもあります。
相続人が本当に行方不明だったら?
では、戸籍などを調べても居場所が分からず、長年にわたって消息が不明になっている場合はどうでしょうか?
そのような場合に利用を検討できる制度の一つが、「不在者財産管理人」です。
これは、行方不明になっている人の財産を管理する人を、家庭裁判所が選任する制度です。
例えば、相続人の一人が長年行方不明で、現在の居場所が分からない場合です。
家庭裁判所が不在者財産管理人を選任し、さらに必要な許可を得ることで、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加できる場合があります。
ただし、注意したいことがあります。
単に手紙の返事がないというだけで、不在者財産管理人を選任できるわけではありません。
実際に所在が分からないことなど、制度の要件を満たす必要があります。
また、不在者財産管理人が遺産分割協議を行うには、原則として家庭裁判所の「権限外行為許可」が必要です。
手続きには時間や費用がかかることもあります。
相続人全員の同意がなくても登記できる場合はある?
ここで、もう一つ知っておきたいことがあります。
実は、すべての相続登記に相続人全員の遺産分割協議が必要なわけではありません。
例えば、法律で定められた相続割合である「法定相続分」に従って、相続人全員の共有名義にする場合です。
この場合、相続人の一人から、相続人全員についての相続登記を申請することができます。
つまり、遺産分割協議が成立していなくても、法定相続分による相続登記を行える場合があるのです。
ただし、これは希望する一人の名義にする手続きとは異なります。
例えば、母親一人の名義にしたい場合に、法定相続分による共有名義の登記だけでは、その目的を達成できません。
登記ができることと、希望どおりに不動産を分けられることは別の問題なのです。
相続登記の期限が迫っていたら?
もう一つ注意したいのが、相続登記の義務化です。
2024年4月1日から、相続登記は義務になっています。
相続によって不動産を取得したことを知った場合、原則として、そのことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた不動産については、原則として2027年3月31日までが期限です。
「相続人の一人と連絡が取れないから、何もできない」
と放置するのは避けたいところです。
相続人申告登記という制度もあります
遺産分割協議がまとまらず、期限までに相続登記が難しい場合には、「相続人申告登記」という制度を利用できることがあります。
これは、登記簿上の所有者が亡くなったことと、自分がその相続人であることなどを法務局に申し出る制度です。
相続人の一人からでも申し出ることができ、期限内に申出をすることで、申出をした人について相続登記の基本的な申請義務を果たすことができます。
ただし、相続人申告登記は、遺産分割協議や通常の相続登記の代わりになるものではありません。
また、後に遺産分割が成立した場合には、その内容に応じた相続登記が別途必要になります。
相続人申告登記については、こちらでも詳しくご案内しています。
まずは何を確認すればいい?
相続人の一人と連絡が取れない場合には、次の点を確認してみましょう。
亡くなった方の相続人は誰なのか
有効な遺言書が残されていないか
連絡の取れない相続人の住所は分かっているか
住所は分かるが返事がないのか、所在そのものが不明なのか
遺産分割協議が必要なケースなのか
相続登記の申請期限はいつなのか
状況によって、必要となる手続きは変わってきます。
まずは相続関係と現在の状況を整理することが大切です。
まとめ 相続人と連絡が取れなくても、解決方法を検討できます!
相続人の一人と長年連絡を取っていない。
住所が分からない。
手紙を送っても返事がない。
そんな場合でも、状況に応じて手続きを進める方法があります。
戸籍の附票による住所調査、家庭裁判所の遺産分割調停、不在者財産管理人の制度など、利用を検討できる方法は一つではありません。
また、法定相続分による相続登記や相続人申告登記という方法があることも知っておきたいところです。
ただし、それぞれ目的や要件が異なるため、すべてのケースで利用できるわけではありません。
「長年付き合いのない兄弟がいる」
「相続人の住所が分からない」
「手紙を送っても返事がなく、相続登記が進まない」
そんな場合は、まず相続人の調査や登記に必要な手続きを確認するところから始めましょう。
松岡司法書士事務所では、芦屋市・西宮市・神戸市東灘区を中心に、戸籍収集による相続人調査、遺産分割協議書の作成、相続登記などについてご相談を承っています。
なお、相続人間で争いが生じている場合など、司法書士が対応できない業務については、弁護士への相談が必要になることがあります。
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