親が亡くなったら銀行口座はどうなる?凍結と相続手続きの流れ
「父が亡くなったけれど、銀行口座はどうなるの?」
「口座が凍結されたら、お金は引き出せなくなる?」
「母が生活費として使っていた口座だけど、そのまま使えるの?」
ご家族が亡くなった後、預貯金の手続きについて、このような疑問を持つ方も多いと思います。
亡くなった方の銀行口座は、そのまま自由に使い続けられるわけではありません。
金融機関が口座名義人の死亡を把握すると、原則として預貯金の入出金などが制限されます。
その後、預貯金を相続するためには、金融機関で所定の相続手続きを行う必要があります。
今回は、銀行口座が凍結される仕組みと、預貯金の相続手続きを進める基本的な流れについて整理します。
① 親が亡くなると、銀行口座はすぐに凍結される?
銀行口座の名義人が亡くなると、口座が凍結されるという話を聞いたことがあるかもしれません。
では、亡くなった瞬間に自動的に凍結されるのでしょうか。
実は、必ずしもそうではありません。
通常、金融機関が口座名義人の死亡を把握した段階で、預貯金の入出金などが制限されます。
例えば、相続人が銀行へ電話をして、口座名義人が亡くなったことを伝えた場合です。
金融機関は死亡の事実を確認し、相続手続きが完了するまで口座の取引を制限します。
また、市区町村役場に死亡届を提出しただけで、すべての金融機関の口座が自動的に凍結されるわけではありません。
基本的には、取引のある金融機関ごとに手続きが必要です。
② 口座が凍結されると、どうなる?
例えば、亡くなった父の銀行口座に300万円の預金が残っていたとします。
金融機関が死亡を把握し、口座が凍結された場合、通常は次のような取引ができなくなります。
ATMでの現金引出し
キャッシュカードを使った取引
窓口での通常の払戻し
口座振替による公共料金などの支払い
入金についても制限される場合があります。
ただし、具体的にどの取引が停止されるのかは、金融機関や取引の種類によって異なることがあります。
ここで知っておきたいのは、口座が凍結されても、預金そのものがなくなるわけではないということです。
残っている預貯金は相続財産として扱われ、必要な相続手続きを行うことで、権利を有する方が払戻しなどを受けることになります。
③ 公共料金の引落口座だった場合は?
亡くなった方の銀行口座が、公共料金などの引落口座になっている場合には注意が必要です。
例えば、父名義の銀行口座から、
電気料金
ガス料金
水道料金
携帯電話料金
クレジットカードの利用代金
家賃や管理費
などが毎月引き落とされていた場合です。
口座が凍結されると、こうした引落しができなくなることがあります。
そのため、必要に応じて各契約先へ連絡し、契約者の変更、引落口座の変更、解約などを進める必要があります。
なお、亡くなった方の契約については、単に支払口座を変更すればよいとは限りません。
契約そのものを終了させる必要がある場合もあります。
預貯金の相続手続きとあわせて、口座から定期的に支払われていた費用も確認しておきたいところです。
④ 口座が凍結される前なら、お金を引き出してもいい?
「銀行へ死亡の連絡をする前なら、キャッシュカードでお金を引き出せるのでは?」
と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、注意が必要です。
亡くなった方の預貯金は、相続財産に含まれます。
そのため、特定の相続人がほかの相続人に知らせずに預金を引き出すと、後からトラブルになることがあります。
例えば、父の口座から長男が100万円を引き出した場合です。
そのお金を何に使ったのか、誰が管理しているのかによって、ほかの相続人との間で問題になる可能性があります。
また、相続放棄を検討している場合には、亡くなった方の預貯金を引き出して使用する行為が、相続の承認に関係する場合もあります。
実際の法律上の取扱いは、引出しの経緯や使途などによって異なりますが、安易な引出しは避けたいところです。
葬儀費用などの支払いが必要な場合でも、まず相続人間で状況を確認し、必要に応じて金融機関の制度を利用することを考えましょう。
⑤ 預貯金の相続手続きは、どう進める?
金融機関での相続手続きは、一般的に次のような流れになります。
1.取引のあった金融機関を確認する
まず、亡くなった方がどこの銀行や信用金庫などに口座を持っていたのか確認します。
通帳やキャッシュカード、銀行から届いていた郵便物などが手掛かりになります。
2.金融機関へ相続発生を連絡する
取引のあった金融機関へ、口座名義人が亡くなったことを伝えます。
電話、窓口、インターネットなど、受付方法は金融機関によって異なります。
3.必要書類を確認する
金融機関から、相続手続きに必要な書類の案内を受けます。
相続人の構成や遺言書の有無などによって、必要な書類が異なります。
4.書類を準備して提出する
戸籍謄本や印鑑証明書などを準備し、金融機関所定の相続手続き書類とともに提出します。
5.預貯金の解約・払戻しなどを受ける
金融機関による書類の確認が終わると、遺言書や遺産分割協議の内容などに応じて、預貯金の払戻しや名義変更などが行われます。
手続き完了までにかかる期間は、金融機関や相続の内容によって異なります。
⑥ 相続手続きに必要な書類は?
一般的な預貯金の相続手続きでは、次のような書類が必要になります。
| 書類 | 主な目的 |
|---|---|
| 亡くなった方の戸籍謄本等 | 死亡や相続関係の確認 |
| 相続人の戸籍謄本 | 相続人の確認 |
| 相続人等の印鑑証明書 | 手続きに必要な意思確認など |
| 遺産分割協議書 | 預貯金の取得者や分け方の確認 |
| 遺言書 | 遺言による取得内容の確認 |
| 金融機関所定の相続届等 | 解約・払戻しなどの請求 |
| 通帳・証書・キャッシュカード等 | 対象口座の確認など |
ただし、これらの書類がすべてのケースで必要になるわけではありません。
例えば、遺言書がある場合と、遺言書がなく相続人全員で手続きする場合とでは、必要な書類が変わります。
また、遺産分割協議書が作成されていない場合でも、金融機関所定の書類に相続人全員が必要な署名・押印などを行うことで手続きできる場合があります。
最初からすべての書類を集めるのではなく、相続関係を確認したうえで、必要な書類を整理することが大切です。
⑦ 金融機関によって必要書類や手続方法が異なる
ここは、預貯金の相続手続きで特に注意したいところです。
相続手続きに必要な書類や手続方法は、金融機関ごとに異なる場合があります。
例えば、次のような点です。
戸籍謄本をどの範囲まで提出するか
印鑑証明書の発行日についての取扱い
相続人のうち誰の署名・押印が必要か
金融機関所定の相続届や請求書の様式
遺産分割協議書の提出が必要か
法定相続情報一覧図を利用できるか
戸籍などの原本の返却方法
窓口、郵送、インターネットで手続きできるか
解約や払戻しの方法
例えば、ゆうちょ銀行では、相続確認表などによって相続関係を確認したうえで、必要書類の案内を受ける方法があります。
一方、ほかの銀行では、専用の相続受付窓口やインターネットからの申込みを利用できる場合もあります。
また、同じ金融機関であっても、遺言書の有無、相続人の人数、預貯金以外の取引があるかどうかなどによって、必要書類が変わることがあります。
ある銀行で手続きできた書類が、そのまま別の銀行でも利用できるとは限りません。
複数の金融機関で相続手続きを行う場合には、それぞれの金融機関へ必要書類や提出方法を確認してから準備することが大切です。
⑧ 銀行が何行もある場合は?
亡くなった方が複数の金融機関に口座を持っていた場合、それぞれの金融機関で相続手続きが必要になります。
例えば、
三井住友銀行
三菱UFJ銀行
ゆうちょ銀行
地元の信用金庫
などに預貯金があった場合です。
原則として、それぞれの金融機関へ連絡し、必要書類を提出することになります。
このような場合に利用を検討できるのが、法定相続情報証明制度です。
法務局で法定相続情報一覧図の保管と交付を受けることで、認証された一覧図の写しを相続手続きに利用できます。
金融機関によっては、この一覧図の写しを提出することで、戸籍謄本一式の提出を省略できる場合があります。
ただし、一覧図を提出すれば、それだけですべての相続手続きが完了するわけではありません。
各金融機関所定の書類や、遺言書・遺産分割協議書などが別途必要になる場合もあります。
金融機関が複数あるときには、書類を効率よく利用する方法も考えておきたいところです。
⑨ 遺産分割協議が終わっていなくても引き出せる?
預貯金の相続手続きでは、相続人全員による遺産分割協議が終わっていない場合もあります。
例えば、
「父の預貯金があるけれど、相続人同士で財産の分け方がまだ決まっていない」
「葬儀費用や当面の生活費が必要なのに、銀行口座が凍結されている」
という場合です。
このようなときには、遺産分割前の預貯金の払戻し制度を利用できることがあります。
これは、一定の範囲内で、相続人が単独で預貯金の払戻しを受けられる制度です。
家庭裁判所を利用せずに金融機関で直接払戻しを受ける方法では、原則として次の計算式による上限があります。
相続開始時の預貯金残高 × 3分の1 × その相続人の法定相続分
さらに、一つの金融機関につき150万円という上限があります。
ただし、必要書類や実際の払戻可能額については、金融機関へ確認する必要があります。
また、仮払いを受けた金額は、その後の遺産分割にも関係するため、使途や金額を記録しておくことが大切です。
⑩ 預貯金の相続手続きはいつまでに行う?
預貯金の解約・払戻しについて、すべての金融機関に共通する「死亡後何日以内」という一律の手続期限があるわけではありません。
しかし、だからといって長期間放置してよいとは限りません。
例えば、
相続放棄の検討
相続税の申告
遺産分割協議
相続財産の調査
など、相続には期限が関係する手続きもあります。
相続放棄は、原則として自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内です。
また、相続税の申告が必要な場合には、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内が申告・納付期限となります。
預貯金の相続手続きが遅れることで、財産全体の把握や、ほかの相続手続きにも影響が出る場合があります。
そのため、相続が発生したら、早めに金融機関の取引状況を確認しておきたいところです。
まとめ
親が亡くなった場合、銀行口座は金融機関が死亡を把握した段階で、原則として入出金などが制限されます。
その後、預貯金を相続するためには、金融機関で所定の手続きを行う必要があります。
今回のポイントを整理すると、
死亡した瞬間に、すべての銀行口座が自動的に凍結されるわけではない
金融機関が死亡を把握すると、原則として入出金などが制限される
口座が凍結されても、預貯金そのものがなくなるわけではない
公共料金などの引落口座になっている場合は注意する
亡くなった後の無断引出しは相続トラブルにつながる可能性がある
預貯金の解約・払戻しには、戸籍や印鑑証明書などが必要になる
金融機関ごとに必要書類や手続方法が異なるため、事前確認が重要
複数の金融機関で手続きする場合には、法定相続情報一覧図が役立つことがある
遺産分割協議前でも、一定の範囲で預貯金の払戻しを受けられる制度がある
ということになります。
預貯金の相続手続きは、単に通帳と印鑑を銀行へ持っていけば終わるものではありません。
亡くなった方の相続関係を確認し、遺言書や遺産分割協議の内容に応じて、必要な手続きを進めることになります。
また、金融機関によって必要書類や受付方法などが異なるため、複数の銀行に口座がある場合には、それぞれ確認しながら進めることが大切です。
預貯金の相続手続きを含む遺産承継については、こちらのページでも紹介しています。
▶ 遺産承継業務・預貯金の相続手続きについて(松岡司法書士事務所)
参考資料
