兄弟姉妹や甥・姪に財産を残したくない場合、どうすればいい?
「兄弟姉妹とは長年ほとんど交流がない」
「甥や姪にまで財産がいくのは、正直ちょっと違和感がある」
「お世話になった人や、別の人に財産を残したい」
独身の方や、子どもがいないご夫婦のご相談では、このようなお話が少なくありません。
相続では、配偶者や子どもがいない場合、父母や祖父母などの直系尊属、それらの方もいなければ兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることがあります。
しかし、法律上相続人になる人と、自分が財産を残したい相手が一致するとは限りません。
今回は、兄弟姉妹や甥・姪に財産を残したくない場合に、どのような準備をしておくべきかを整理します。
① 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるのはどんなとき?
まず前提として、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるのは、主に次のような場合です。
配偶者はいない、または配偶者はいるが子どもがいない
子どもなどの直系卑属がいない
父母・祖父母などの直系尊属も相続人とならない
このような場合、兄弟姉妹が相続人になります。
さらに、兄弟姉妹が本人より先に亡くなっているときは、その子どもである甥・姪が代襲相続人になることがあります。
例えば、独身で子どもがいない方が亡くなり、父母もすでに亡くなっていて、兄も亡くなっている場合です。
このとき、兄の子どもである甥や姪が相続人になることがあります。
「兄弟姉妹はまだ分かるけれど、甥や姪まで相続人になるとは思っていなかった」
という方も少なくありません。
② 交流がなくても、相続権はなくならない
兄弟姉妹や甥・姪に長年会っていない場合でも、それだけで相続権がなくなるわけではありません。
例えば、
何十年も連絡を取っていない兄
一度も会ったことのない甥
親族関係はあるが、疎遠になっている姪
といった場合でも、法律上の相続人に当たれば、相続権が生じることがあります。
「もう付き合いがないから、相続には関係しないはず」
と考えて何も準備しないままにしておくと、自分の希望とは違う形で相続が進む可能性があります。
③ 財産を残したくないなら、まず考えたいのは遺言書
兄弟姉妹や甥・姪に財産を残したくない場合、最も基本になるのが遺言書の作成です。
例えば、
お世話になった友人に預貯金を残したい
面倒を見てくれた姪ではない別の親族に残したい
内縁の配偶者に自宅を残したい
福祉団体や公益法人に寄付したい
といった希望がある場合には、遺言書によってその意思を明確にしておくことが大切です。
遺言書がなければ、原則として法定相続人が相続します。
一方、遺言書があれば、法定相続人以外の人や法人に財産を遺贈することもできます。
④ 兄弟姉妹には遺留分がない
ここは、とても大きなポイントです。
相続人の中には、遺言書があっても最低限の取り分を主張できる人がいます。これが遺留分です。
しかし、兄弟姉妹には遺留分がありません。
また、兄弟姉妹の代襲相続人である甥・姪にも、遺留分はありません。
そのため、例えば、
「全財産を友人Aに遺贈する」
「自宅は内縁の妻Bに遺贈する」
「預貯金を福祉団体Cに遺贈する」
といった遺言書を有効に作成していれば、兄弟姉妹や甥・姪が「遺留分を侵害された」として金銭請求することは原則できません。
この点は、父母などの直系尊属が相続人になる場合とは大きく異なります。兄弟姉妹が相続人となるケースでは、遺言によって希望を実現しやすいといえるでしょう。
⑤ 「相続させない」と書くだけで十分?
ここは注意が必要です。
例えば、
「兄には相続させない」
「甥や姪には財産を渡したくない」
とだけ書いても、それだけでは十分でないことがあります。
なぜなら、財産を取得する人が明確に定まっていないと、その部分について別の解釈や手続きが必要になることがあるからです。
遺言書では、単に「渡したくない人」を書くだけでなく、
誰に
どの財産を
どのように取得させるのか
を具体的に定めることが大切です。
例えば、
「〇〇銀行の預金は友人Aに遺贈する」
「自宅土地建物は内縁の妻Bに遺贈する」
「残りの財産は公益財団法人Cに遺贈する」
というように、取得者と対象財産を明確にしておく方が安心です。
⑥ 兄弟姉妹に事前に「相続しない」と約束してもらえばいい?
「兄弟姉妹に、今のうちから相続放棄してもらえばいいのでは?」
と思われることもあります。
しかし、相続放棄は、本人が亡くなった後に、家庭裁判所で行う手続きです。
生前に「将来の相続は放棄します」という約束をしても、相続放棄としての法的な効力はありません。
また、相続放棄をするかどうかは、相続開始後にそれぞれの相続人が判断することになります。
そのため、
「兄弟姉妹に相続しないと約束してもらう」
という方法だけに頼るのではなく、やはり遺言書によって自分の意思を明確にしておくことが重要です。相続放棄は、相続人が相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述して行う手続です。
⑦ 財産を残したい相手が先に亡くなることもある
せっかく遺言書を作っても、財産を残したい相手が自分より先に亡くなってしまうことがあります。
例えば、
全財産を友人Aに遺贈する
しかし、Aが本人より先に死亡した
という場合です。
このようなとき、その遺言の内容どおりに実現できないことがあります。
その結果、結局は法定相続人である兄弟姉妹や甥・姪が相続することになる可能性もあります。
そこで検討したいのが、予備的遺言です。
例えば、
「Aが私より先に亡くなっているときは、全財産を公益法人Bに遺贈する」
といった形で、第2順位の受取人を定めておく方法です。
兄弟姉妹や甥・姪に財産がいくのを避けたいのであれば、ここまで考えておくとより安心です。
⑧ 遺言執行者も決めておきたい
遺言書を作っても、その内容を実際に実現する人が必要です。
特に、兄弟姉妹や甥・姪以外の人に財産を残す場合には、
預貯金の払戻し
不動産の名義変更
財産の引渡し
遺贈先への連絡や手続き
などを誰が進めるのかが問題になります。
そのため、遺言書を作るときは、遺言執行者を指定することも検討したいところです。
例えば、受遺者である友人自身が高齢であったり、法律手続きに慣れていなかったりする場合には、第三者を遺言執行者にしておく方が進めやすいことがあります。
⑨ 財産の内容によっては別の準備も考える
財産を誰に残したいかによっては、遺言書以外の準備も役立つことがあります。
例えば、
預貯金が中心なのか
不動産が中心なのか
生命保険があるのか
死後に部屋の片付けや各種解約が必要なのか
といった事情です。
生命保険については、受取人を指定することで、一定の金銭を特定の人に渡しやすくなる場合があります。
また、一人暮らしの方などでは、遺言書だけでなく、死後事務委任契約などもあわせて考えた方がよいことがあります。
まとめ
兄弟姉妹や甥・姪に財産を残したくない場合には、何もしないままにしておくのではなく、生前の準備が大切です。
今回のポイントを整理すると、
配偶者や子ども、直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることがある
交流がなくても、法律上の相続権はなくならない
希望する相手に財産を残すには、遺言書の作成が基本になる
兄弟姉妹や甥・姪には遺留分がない
「相続させない」と書くだけでなく、誰に何を渡すかを具体的に決めることが大切
相続放棄は生前にはできない
受遺者が先に亡くなる場合に備えて、予備的遺言も検討したい
遺言執行者の指定や、ほかの契約もあわせて考えると安心
ということになります。
「誰に財産がいくのか」は、何も準備しなければ法律のルールに従って決まります。
しかし、自分の気持ちや人間関係は、必ずしも法律の順番どおりとは限りません。
兄弟姉妹や甥・姪に財産を残したくないと考える場合には、希望する相手にきちんと財産が届くよう、早めに遺言書の準備をしておきたいですね。
子どもがいない方の遺言については、こちらのページでも紹介しています。
